歯は健康の維持のためだけでなく、若々しさや清潔感など、自分のイメージをつくる重要な役割も持つ。その歯の効果を最大限に活用しているのが芸能人だ。一流スターたちがいつまでも若々しく見えるのは、歯のケアに対する努力と研究のおかげ。そのノウハウを噛みしめたい。
白く輝く歯にこだわる芸能人たち
「芸能人は歯が命」
1995年に放送されたCM内で、東幹久（51才）と高岡早紀（47才）が言い放つ決めぜりふが当時の流行語大賞にも選ばれた美白歯磨き剤「アパガード」は、まさに「芸能人のような歯になりたい」と憧れる人々の間で大ブームを巻き起こした。
いつの時代も、白く輝く「歯」は芸能人の印象を大きく左右する重要なパーツだ。それゆえ、“歯磨きオタク”と呼べるほどのこだわりを持つ芸能人は多く、テレビや雑誌、ブログなどで独自のケア方法を赤裸々に明かしている。
だが、その内容は三者三様。私たちでも手軽にまねできて、本当に正しいケアはどれだろうか。
デヴィ夫人は1日7回の歯磨きで入れ歯知らず
歯の数と健康には相関性があり、自分の歯が少ない人ほど認知症の発症リスクが高いことがわかっている。国と日本歯科医師会は1989年から「8020運動」を推進し、80才になっても自分の歯を20本以上保とうとする取り組みが盛んだ。
今年80才を迎えたデヴィ夫人は、28本すべてが自分の歯で、虫歯もないことを雑誌のインタビューで語っている。
その極意は「歯磨きの回数」にある。
《朝起きたとき、3度の食事の後、寝る前と、1日に最低でも5回。合間にお菓子をいただいたりするとまたみがくので、6回や7回になることも珍しくありません》（プレジデント2020年5月15日号）
◆松居一代は週末セルフケアを1時間
磨く「時間」に特徴がある芸能人もいる。松居一代（63才）は自身のブログで、「週末セルフケア」のやり方を細かく説明している。全6工程ある「週末セルフケア」は、歯磨き剤を使わない「空磨き」から始まり、歯間ブラシを行った後、「パウダー状の塩」で歯茎マッサージをして終わる。フルコースで約１時間という重労働だ。
「夜は磨かない」トシちゃんは危険
その一方で、田原俊彦（59才）は自身のブログで、《夜は磨いておりません！》と意外な回答をしている。ブラッシングによって歯に過度な負担をかけないためだという。
歯磨きの常識といえば、「1日3回3分間」だったが、最近は変化しているようだ。歯科医師の田村絵里さんが言う。
「歯磨きの適正回数は『毎食後』です。回数が多い分には問題ないので、間食の後も磨くのが理想です。特に重要なのは夜の歯磨き。就寝中は唾液が減って口内の細菌が激増するので、夕食を食べたら寝るまでに必ず磨きましょう」
磨く時間の目安、コツ把握なら「５～10分」
磨く時間は15～20分程度が目安だが、磨き方のコツをきちんと把握している人なら5～10分程度で充分効果的だ。
ただし、よかれと思って磨いていても、力加減を誤ると逆効果になる。
◆力強く磨くと歯茎の退縮につながる
「お昼休憩などに、オフィスのトイレでガシガシと力強く手短に歯磨きを済ませている女性を見かけることがあります。口の中を傷める誤った歯磨きは、歯肉炎や歯茎の退縮につながる恐れがあります」（田村さん）
時間や回数以上に、「やさしく、ていねい」なブラッシングが大切だ。
福山雅治は2万円の高級電動歯ブラシを愛用
3年ほど前、トーク番組で福山雅治（51才）が役所広司（64才）にプレゼントした電動歯ブラシが「家電マニア」の間で話題になったことがある。福山自身も愛用するフィリップスの電動歯ブラシで、約2万円の高級品だ。
福山は「信じられないくらい歯がツルツルになる。これなしでは生きていけない」と役所に感動を伝えている。
芸能人には電動歯ブラシ愛用者が多く、ふつうの歯ブラシと併用しているパターンも多い。水野真紀（50才）も、歯ブラシを使い分けていることを昨年放送のバラエティー番組で明かした。
「下がってきた歯茎に悩んでいる」という水野は、電動歯ブラシで磨いた後、さらにふつうの歯ブラシで磨き、歯の専用消しゴムとフロスを使ってケアする様子を実演。しかし、番組内で歯科医師から「歯垢が残っている」と指摘される意外な結末となった。
◆電動歯ブラシを使いこなすのは意外と難しい
田村さんは「電動歯ブラシを使いこなすのは意外と難しい」と話す。
「電動歯ブラシを使い始めてから歯肉炎になったり、虫歯になったという患者さんもなかにはいます。使いこなせないと過剰に磨きすぎて歯茎が下がるうえ、歯の表面が薄くなって知覚過敏のような症状が起こることもあります。口腔内の状態によっては電動歯ブラシを使わない方がいい人もいますし、どの商品を選ぶべきなのかは歯科医師に相談した方がいいでしょう。もちろん、正しく使えば電動歯ブラシはとても効果的です」
宝の持ち腐れにならないよう、購入前に歯医者へ行こう。
指原莉乃は歯列矯正で「高額治療」
歯の「見た目」をよくするために、高額な治療を受ける芸能人も多い。指原莉乃（27才）は2016年に歯の裏側に矯正器具をつける「舌側矯正」を開始。治療後には、ツイッターで「しゃべることも難しくて毎日泣いていた」と治療時の胸中を明かした。この「舌側矯正」は保険適用外の治療になるため、100万～150万円程度の費用がかかる。
虫歯によって上下の奥歯が５本抜け、さらに前歯を接着剤で固定してライブに出演した経験を持つお笑いコンビ・バナナマンの日村勇紀（48才）は、2012年の4月と12月に手術を受け、上あごに10本、下あごに5本のインプラント治療を施した。その費用は500万円以上ともいわれる。
◆40代まではインプラントが正解
こうした自費診療の治療は、やはり保険適用の治療よりも効果があるのだろうか。
「20～40代くらいで歯が1本抜けているような人なら、お金はかかりますが、保険適用のブリッジよりも自費診療のインプラントをおすすめします。ブリッジは抜けた歯の両側にある健康な歯を削って人工歯を取りつけるため、健康な歯も弱くなり、どんどん虫歯になる負の連鎖を招きやすい。ただし、抜けた歯の本数が多い人や高齢者は状況によります」（田村さん）
高額治療はクリニック選びを慎重に
インプラントと異なり、歯列矯正は保険が適用される場合もある。しかし、先天的な疾患があるケースなど、かなり限定的だ。見た目を美しくしたいだけでは、基本的に自費診療となる。
高額な治療こそ、クリニック選びは慎重にしたい。
「治療法や金額はクリニックによってさまざま。インターネットの口コミ評価を参考にする人が多いですが、操作されている可能性もあります。いちばんは、実際に数軒のクリニックを訪れて相談してみること。難しい場合は、医師が自ら発信しているインスタグラムなどのSNSを見て、そのコメント欄などを参考にするといいでしょう」（田村さん）
◆ホワイトニングは注意が必要
芸能人に最も欠かせないケアといえばホワイトニングだろう。最近はクリニックで受けるだけでなく、自宅でできる市販のアイテムもバリエーション豊富だ。芸能人が紹介しているグッズが気になったこともあるかもしれない。だが、こうした市販のホワイトニング商品について田村さんは注意を促す。
「本来、ホワイトニングは歯茎が健康でなければ受けられません。怪しい市販品を自己判断で使うと、歯肉炎を悪化させることがあります。また、最近は医師が施術しない『セルフホワイトニング』を売りにしている店舗も増えていますが、どんな薬液を使っているかわからずリスクが高い。危険なセルフケアを行って、歯を抜くはめになった人もいます。本当にホワイトニング効果が期待できるのは、国家資格を持つ医療従事者が扱える薬液だけです」
「歯が命」の芸能人たちが徹底しているのは「定期的に歯医者へ行く」こと。医師から最新の知識を学び、自宅でも正しいケアを行っている。
まずは3～4か月に1回の定期検診を受けることが、最も早く芸能人の歯に近づくコツだ。
※女性セブン2020年9月17日号
●歯のホワイトニングの疑問｜値段や種類は？自宅でもできる？などを歯科医が解説
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