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《2025年は団塊の世代が後期高齢者となる「大相続時代」》知っておきたい相続制度 生前贈与の特別措置は廃止、不動産登記義務化に伴う免税措置も3月で終了

相続をめぐるトラブルが起きる前に知っておきたい相続制度(写真/PIXTA)
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2025年には団塊の世代が75才以上の後期高齢者となる。相続「する側」「される側」の両方が増えることから「大相続時代」の到来ともいわれ、相続をめぐるトラブルが増加するとみられている。

「生前贈与の特別措置」が終了

相続・終活コンサルタントの明石久美さんが言う。

「超高齢化によって、財産を残す側だけでなく、もらう側も認知症になってしまい、相続手続きがスムーズにできなくなるケースが増えることが予想されます。

また、子供がいなかったり、夫や子供とすでに死別している人も珍しくなくなる。団塊の世代にはきょうだいが多い人も少なくないため、きょうだい側との相続争いが増加するかもしれません。また、きょうだい側の相続人がいなければ『おひとりさま相続』となり、遺産に手をつけられないという状況にもなりかねません」

そんな中、相続制度にも動きがある。2025年に終了するのが、「生前贈与の特別措置」だ。2025年の税制改正にて、1人1000万円までの「結婚・子育て資金の一括贈与」の非課税枠が廃止される見込みだ。年間110万円までの「暦年贈与」は、“相続財産の先渡し”として持ち戻されて相続税の対象となる年数が、「亡くなる3年前」から、2024年1月1日以降は「7年前まで」に順次長くなるため、今後は生前贈与に一層の注意が必要になるかもしれない。明石さんがアドバイスする。

「持ち戻しを避けるには『法定相続人ではない孫』に暦年贈与すること。ただし、保険金や遺言書で遺産を受け取る場合は持ち戻しの対象になります。また、2500万円までなら非課税で贈与できる『相続時精算課税制度』を利用するのもいいでしょう」(明石さん・以下同)

財産の「一括照会」が可能に、不動産登記の「免税措置」は終了

一方で、相続手続きが楽になる制度変更もある。財産がどれだけあるかわからない場合に、自治体の窓口に「一括照会」できる制度が、預貯金では2025年3月末から、不動産では2026年2月から始まる見込みだ。これは、大相続時代において激化するとみられる「不動産相続」の問題を解決する一助になるかもしれない。

不動産登記はスピードが肝心(写真/PIXTA)
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2024年4月から不動産登記が義務化され、相続を知ってから3年以内に登記を終えないと、10万円以下の過料が科せられることになった。だが、何代にもわたって登記していなかったり、行方のわからない相続人がいるなど、登記問題は2025年以降、さらに増える恐れがある。現段階では、登記を促すための「免税措置」が設けられている。

「例えば、亡くなった祖父の不動産を息子が相続し、登記しないまま息子が亡くなって孫のものになった場合などに適用されます。

こうした『数次相続』と呼ばれるケースでは、祖父から息子に名義を変えてから、息子から孫に名義を変える必要があり、その2回の名義変更の際、2回とも登録免許税を支払わなければなりませんでした。これを、1回分は免除する特別措置が設けられたのです」

その免税措置が、2025年3月31日に終了することが決定した。

「数次相続の対象となる土地を持っている場合は、3月末までに登記を終わらせないと、登録免許税を余分に払うことになります。

特に、相続人の誰か1人が亡くなっているなどで代襲相続となっている場合や、離婚、再婚、養子縁組などをしている場合は要注意。相続登記のためには、相続人を確定させ、その全員が遺産分割協議書に署名する必要があるため、相続人が多いと、必要な戸籍を揃えるだけでも2~3か月かかることもあるので、早めの準備が必要です。

とはいえ、登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%ほど。不動産によって差はありますが、多くの場合、損するといってもせいぜい数万円でしょう」

不動産の相続登記で「不動産の共有」は避けた方がいい

不動産の相続登記の際、やってはいけないことがあると、明石さんは続ける。

「相続する際、不動産の共有は次の相続時にややこしくなるので、極力避けて。

また、家が建っているのに地目(ちもく)が『農地』などとなっている場合は、相続のついでに『宅地』に地目を変更しておくと、後で売却する際などにスムーズです」

もし手続きを怠れば、相続争いはおろか、相続した自宅や土地が「空き家」になってしまう可能性もある。来る大相続時代に備えて、手続きは先送りにせず、いまできることをしておこう。

※女性セブン2025年1月16・23日号

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