
便秘の症状を訴える人の割合は、65才を超えると、全年代に比べて約2倍に増加。大腸がんの発見率は、35〜39才と40〜44才では後者が約2倍多いという。腸の老化は糖尿病などの生活習慣病や認知症、果ては大腸がんの罹患リスクにつながる。老化した腸をリセットして若返らせることは、寿命を延ばすことに直結する。
頭痛や肩こり、むくみや便秘など、なんとなく体調が悪いが、病院に行くほどではない―これらの不調は実は腸の老化から発生しており、放置するとさまざまな病気のリスクが上がってしまう。そう指摘するのは、便秘外来で4万人以上の患者を診てきた消化器内科専門医で、松生クリニック院長の松生恒夫さんだ。
「お腹が張る、残便感があるなど、病気ではないけど腸管の運動が低下した状態を私は『停滞腸』と呼んでいます。この状態を放っておくと腸内環境が悪化して便秘や下痢、食欲不振、肌荒れ、頭痛、痔のリスクも上がる。さらには動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病、心臓病や脳卒中などの脳・心血管系疾患、大腸がんなどにもつながります」
腸の老化によって引き起こされる慢性的な便秘は、健康長寿とは程遠い寝たきりや認知症になるリスクとも関連性がある。京都府立医科大学教授の内藤裕二さんが言う。
「アメリカの研究では慢性便秘と、フレイルの関連性を調べたデータがあります。60才以上の約4000人を対象に調べた結果、便秘患者がフレイルである確率は高かったと報告されています。日本でも、筋力低下のサルコペニアとフレイルの人は便秘である確率が高いという研究がある。また便秘によりアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などのリスクが上がることもわかっています」
悪玉菌がゼロだと逆に免疫異常に
停滞した腸をリセットして健康長寿になるために、まず目指すべきである「若い腸」とはどんな状態なのかを知っておきたい。消化器病専門医で犀星の杜クリニック六本木院長の川本徹さんが、老化による腸内環境の変化について解説する。
「私たちの腸内には約1000種類、40兆〜100兆個以上の腸内細菌がいるといわれています。年を取ると善玉菌が減り、悪玉菌が増えて腸内環境のバランスが崩れていく。
理想的な『善玉菌:日和見菌:悪玉菌』の割合は2:7:1で、このバランスが崩れると、さまざまな病気のリスクが上がってしまう。逆にいえば、腸内細菌のバランスを保つことで、食べ物から栄養分を消化、吸収。老廃物を排出する機能や免疫を維持して、健康を保つことができます」(川本さん・以下同)
日和見菌は腸内フローラのバランスによって善玉菌のような働きも、悪玉菌のような働きもする。腸内フローラの多くを占めるため、腸内環境が悪化すると日和見菌は悪玉菌に加勢し、ますます悪影響を及ぼす。
かといって単に善玉菌を増やして悪玉菌を減らせばいいわけではない。バランスと多様性が大事なのだと、川本さんは強調する。
「ビフィズス菌が多すぎることが、かえって大腸がんの原因になりうるという論文があります。またマウスの実験では、腸内の悪玉菌をゼロにすると免疫異常が起きたり、疾病を招いて早死にするというデータもある。免疫細胞を刺激したり、たんぱく質や脂肪の分解をしたりと、悪玉菌にも役割がある。菌にはそれぞれの役割があり、互いに影響したり助け合っているのです」

毎日2個のキウイで快腸
腸を若返らせるために大切なルーティンのなかでも、食事の習慣はダイレクトに腸内環境に作用する。まず意識するべきは、特定のものを食べ続けるのではなく、さまざまな種類の食品を取り入れることだという。
「ヨーグルトや納豆が腸にいいからと、そればかり食べるのでは効果がありません。炭水化物にたんぱく質、脂質のどれもが体に必要です。野菜を多めにするのが理想ですが、炭水化物、肉や魚、豆類、果物など、1週間のうちに30品目以上を目標に食べてください」
次に大切なのが、食物繊維を多く摂ること。食生活の欧米化が進んだことで日本人の食物繊維の摂取量は減り続けており、慢性的な便秘には食物繊維の不足が大きく関係しているのだという。どのくらいの量を目標にすればいいのか。
「厚労省の定める目標量は、18~74才の女性の場合、1日に18gです。健康長寿といわれるかたたちは1日に30g摂っているというデータもあるので、できたらそこを目指したいところです。
比較的食べやすく、栄養素が豊富な食品でおすすめなのが、キウイフルーツとバナナ。水溶性食物繊維が豊富で、ビフィズス菌などの善玉菌がこれらをエサにして体によい物質を産生します。朝食時にヨーグルトと混ぜると整腸効果アップが期待されます」
キウイフルーツとバナナを食べるべき理由とおすすめの食べ方について、松生さんがこう続ける。
「キウイフルーツはビタミンC、ビタミンE、カリウム、葉酸など腸を整えるのに役立つ栄養素を多く含んでいます。私のかかわった調査でも、便秘傾向の女性に10日間、毎日2個食べてもらったら腸の調子がよくなったケースがありました。腸活にいいと有名なエクストラバージンオリーブオイルをかけて食べると、まろやかになっておいしいうえに、さらに効果的です。
バナナについても、マグネシウムやカリウム、ビタミンB群、ビタミンEなど健康にいい栄養素が多い。抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富な黒ごまと抹茶を混ぜてジュースにすると、さらに効率よく多くの種類の食品を腸に届けることができます」
実際に健康長寿な人たちのデータも参考にしたい。100才以上の人口割合が全国平均の3倍を超える京都府の京丹後地域の食事について、京都府立医科大学で長期の観察研究をしている内藤さんが解説する。
「海が近いので魚をよく食べるほか、野菜や果物、豆類やいも類、根菜類、全粒穀物、海藻を食べる頻度が多いことがわかっています。京丹後のかたたちは長寿なだけでなく、インフルエンザの感染率も低く、フレイルや認知症、大腸がんの罹患率も低い。食生活をまねすることでいい影響があると考えられます」
野菜や海藻など食物繊維をたっぷり摂れる食事が老いない腸をつくり、健康に導いているのだ。
(後編に続く)
※女性セブン2026年4月16・23日号