ボディケア

40代以降にも増加の歯列矯正|費用は安い?期間は?歯科医院選びなどを解説

見た目も健康で若々しくありたい、シニアになっても自分の歯をキープしたい──といった理由から、日本人の歯や口腔内の健康に対する意識が向上し、中高年にも歯列矯正をする人が増えている。

ケースに入った矯正用マウスピース
中高年から歯列矯正を始める人がじわじわ増加(写真/アフロ)
写真6枚

中高年の歯列矯正の最新事情

歯列矯正というと、これまでの100年間は、ワイヤー矯正が主流だったが、21世紀に入ると最新テクノロジーの粋を集めた矯正方法が登場。治療のチョイスも広がっている。

日本の成人の矯正率は全体の約30%(*1)ほどだが、年々増加傾向にあるといわれている。

【*1 厚生労働省 平成26年患者調査より。20才以上の内訳としては20~40代が80%、50~70代が20%と、幅広い年齢層が矯正治療を受けている】

矯正歯科医の吉住淳さんが語る。

「実際、私のクリニックでも、割合としては20代の女性が圧倒的に多いものの、子育てが一段落ついた40代以降のかたも増えています。60代後半から矯正を始めた女性や、老後の健康維持のために、矯正を始める50~60代の男性患者も多いですね」(吉住さん・以下同)

◆どの程度の歯並びになるのか?

では、中高年から矯正を始めて、どの程度の歯並びを手に入れることができるのか?

「子供と違い、大人の歯には治療痕があるなど、口腔内の環境もさまざま。そこで大人の場合は、完璧な歯並びを目指すのではなく、『個性正常咬合』といって、各自の歯の状態を生かしたうえで、最善の歯並びを目指していきます」

◆歯周病などの治療も必要

また、矯正をする前には、虫歯や歯周病の治療をする必要がある。

「土台となる顎骨が正常でないと矯正は難しいので、歯周病の場合は完治が必須です。虫歯の状態によっては治療と並行して矯正が行える場合もありますので、まずはカウンセリングから始めることをおすすめします」

矯正の種類としては、昔ながらの「ワイヤー矯正」がいまも主流。これは、歯にブラケットという金属をつけ、ワイヤーをかけて行うため、“いかにも”な姿に抵抗を覚える人も多いが、最近ではセラミックのブラケット(下写真参照)も登場し、目立ちにくくなっている。

矯正治療の種類と特徴

【ワイヤー矯正】

ワイヤー矯正の模型
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100年以上前から行われている矯正法。歯にブラケットという突起を接着し、正しい歯列の形をしたワイヤーを入れ、その力で少しずつ歯を動かすもの。表側と裏側に入れる方法がある。かつてのブラケットは金属製でかなり目立つものだったが、現在はセラミック製のものが登場し、目立ちにくくなっている。

【マウスピース矯正】

マウスピースを外す女性の口元
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2000年代に登場した新しい矯正方法。患者一人ひとりの歯型に合わせて数十個のマウスピースを作り、こまめに取り替えながら歯を少しずつ動かしていく。1997年に登場したインビザラインという装具が世界トップシェアを誇る。食事中に取り外せる、目立たないなどのメリットがあることから、ワイヤー矯正を凌駕する勢いだという。

目立ちにくさでいえば、2000年頃から、一人ひとりの歯型に合わせたマウスピースを定期的に付け替えながら矯正していく「マウスピース矯正」が登場。始めやすいという声も多く、シェアが拡大中。

「あごや頭の骨格に異常があるなど、外科的処置が必要な症例以外であれば、ワイヤー、マウスピースどちらでも矯正は可能です。ワイヤー矯正の場合、基本的にはどのような症例に対しても適応できますが、痛い、見た目が気になるという点も。

一方、マウスピース矯正はワイヤー矯正ほど適応範囲が広くはありませんが、目立たず着実に矯正できる利点がある。インプラントやブリッジをしているかたは、それに応じた対応が必要です」

そのほか、頻繁に通院できるのか、遠隔でもかまわないのかなどの治療スタイルや歯の状態などについてのカウンセリングを行いながら、治療方針を決めていく。

中高年の矯正治療の実例

【Before】

受け口で開咬の女性の歯並び画像
写真6枚

【After】

受け口で開咬だった歯並びを矯正した後の画像
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吉住さんのクリニックでワイヤー矯正を行った51才女性のAさん。受け口で開咬だったのが、矯正治療をしたことで食事が食べやすくなっただけでなく、見た目もとても若返った。「思いきり笑顔で話せるようにもなり、2年間治療を頑張った甲斐がありました」。

歯列矯正「ここが気になる!」Q&A

気になる費用や期間は? インターネットには「2万円から」という情報もあるが、相場だけでなくわからないことが多い歯列矯正のあれこれを吉住さんに聞いた。

Q.治療の違いは? 痛みは?

A.「マウスピース矯正の場合、来院の頻度がワイヤー矯正よりも少なく、当院のようなオンライン診療を組み合わせればさらに減り、4~6か月に1回ということも。また、ワイヤー矯正は微調整が利きやすい半面、痛みや違和感に関しては、一般的にマウスピース矯正より強くなります。痛みの基本的な特徴は同じで、いずれも装着後4時間ほどで歯が浮いた感じになり、ものを強く噛むと痛みを感じることがありますが、数日経つと和らぐことが多い。また、ワイヤーは外せませんが、マウスピースは食事や歯磨きのときに外すことができます」

Q.期間は?

A. 「かなり個人差がありますが、症例によってはマウスピース矯正の方が早く終わるケースも。どちらにしても、中高年のかたはより慎重に治療を進めていく必要があるので、『最低でも2年』程度かかるとお考えください」

各矯正治療豪の特徴一覧表
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Q.費用は?

A.「矯正治療は一部のケースを除いて保険適用外です。これも個人差がありますが、一般のクリニックで矯正を行う場合は、70万~100万円が目安です。昨今、『2万円から始められる』とうたうものもありますが、2万円で終わることはありませんし、“D2C矯正”(*2)といって、矯正専門医が関与していないケースが多いので注意が必要です」

【*2 Direct to consumer (消費者への直接販売)の略で、歯科医師が介在せずにマウスピース矯正を行うこと】

吉住さんのクリニックでは、治療計画を作成後、想定される総額を予め提示する「トータルフィー」を設定している。

「医院によっては毎回調整料に3000~5000円など、細かく請求される場合もあるので、はじめに総額を聞いてみることをおすすめします」

Q.歯科医院選びは?

A. 「矯正歯科は専門性が高く、全国でもそう多くありません。総合歯科医院に週1~2日矯正歯科医が在駐し、治療を行うケースが多いですね。特にマウスピース矯正の場合、『医師は歯型を取るだけ』のところも多い。健康増進を前提に行うべき中高年の矯正治療では、診断がとても重要。治療期間も長いですし、いつでも担当医師が相談に乗ってくれることも、医院選びの重要な条件です。

また、『日本矯正歯科学会』に所属する認定医を選ぶというのも手です。最後に、治療実績が多すぎるところも信用できません。口コミサイトも鵜呑みにしない方がいいでしょう」

教えてくれたのは:矯正歯科医・吉住淳さん

日本矯正歯科学会 認定医 スマイルアクセス矯正歯科代表。中高をアメリカで過ごし、矯正の現場を実体験。2016年吉住歯科矯正クリニック(吉祥寺)、2019年、時代の先をゆくオンライン治療をメインとしたスマイルアクセス矯正歯科を開業。著書に『素顔の自分をアップデートする、オンライン歯列矯正』(東洋館出版社)がある。

※女性セブン2020年9月3日号

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