ひどい腹痛を起こすなどして重症化することもある「胆石」は、40代以降の女性に多いことを知っているでしょうか? さらに、日本人の10人に1人が胆石を持っていると言われます。そこで『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「病気知らず」で生きるには?』(世界文化社)を上梓した医師の森勇磨さんに、胆石ができる原因や予防方法について、教えてもらいました。
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胆石ができる恐ろしさと病気を引き起こす原因
医師で登録者数53万人のYouTubeチャンネル「予防医学ch/医師監修」を運営する森さんは、胆石は40代以降の大人女性、特にぽっちゃりとした体形の人に多いと警鐘を鳴らしています。まずは胆石の理由について解説してもらいます。
胆石ができる仕組みとは?危険性も解説
胆石は胆汁が凝集する、というシンプルな仕組みでできるのだそうです。胆汁とは脂肪を分解するために肝臓で作られる紅茶色の液体のこと。肝臓で生成されたあと、肝臓の下にぶら下がっている胆のうという小さな袋に貯蔵されます。
胆汁は人が食事をとったときに、胆のうから胆管という管を通過し、十二指腸からの食べ物の通り道に排出され、食べ物の中の脂肪を分解する手助けをしているのだそうです。この胆汁に含まれるコレステロールが増え過ぎ、結晶化したものが胆石。
「胆汁は胆のうの中でスタンバイしていることが多いので、胆のう内で石化することが多いのです。胆石の約78%が胆のうでできるとされています。胆石は胆のう内でじっとしているぶんには害がないのですが、ふとした拍子に胆のう内から転げ落ちて、肝臓と十二指腸の間の通路である胆管に詰まった場合が問題なのです」(森さん・以下同)
胆石が通路に詰まると激痛や感染症につながることも
胆石が転げ落ちて、通路となっている胆管に詰まるとどうなるのでしょうか?
「こうなると激烈なお腹の痛みとともに、発熱をしたり、お腹の内部で重篤な感染症が引き起こされる場合があります。胆石によって通路を塞がれることで、感染症は急激に進行し、命を落とすこともある非常に恐ろしい状態なのです」
胆石が詰まった場合、仰向けになった患者の右の肋骨の下に医師がスッと手のひらを潜り込ませて深呼吸すると、激痛が走る「マーフィー徴候」が起こるのだそうです。胆石が疑わしい腹痛のときはひとつの判断材料として、試してみましょう。
また、多量の胆汁が分泌されると胆石が転がり落ちやすくなるため、揚げ物など胆汁の分泌を促す脂分の多い食事のあとに症状が出ることもあるといいます。
胆石ができない体になるための予防法
胆石のリスクファクターは“4F”と呼ばれ、「Fatty(肥満)」「Forty(40代)」「Femele(女性)」「Fertile(多産婦)」を指すそうです。この中で対策ができるのは「Fatty(肥満)」だけなので、森さんは胆石の予防として肥満改善を推奨しています。
胆汁には、コレステロールを排泄する役割があるため、胆石ができるリスクの一つとして脂肪肝が挙げられるそうです。つまり、肥満を改善することが胆石の予防につながります。
一方で、ファスティング(プチ断食)など、夜に14時間以上ごはんを食べないのは胆石のリスクになるため、やりすぎは厳禁だといいます。これは、食事の時間が空き、胆汁の分泌が止まっている間に、胆のうにとどまっている胆汁のコレステロール値が高くなるからだそうです。
また、魚油やナッツに含まれるオメガ3脂肪酸が胆石のリスクを低下させるという報告もあるそうなので、適度な間食としてナッツを取り入れるのもいいかもしれません。
◆教えてくれたのは:産業医、内科医・森勇磨さん
Preventive Room代表。神戸大学医学部医学科卒業。2020年2月より「予防医学ch/医師監修」をスタートし、登録者は53万人を超える。上場企業、株式会社リコーの専属産業医として予防医学の実践を経験後、独立。Preventive Room株式会社を立ち上げ、書籍やYouTubeでの情報発信のほかオンライン診療に完全対応した「ウチカラクリニック」を開設している。https://www.youtube.com/channel/UCN1w0Esm19bl7kMh5O23y-w