不調改善

抗生物質は万能ではない? 医師が指摘する「のみすぎると起こる悪影響」

マスクと薬
風邪に抗生物質は不向き?(Ph/photoAC)
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風邪のときは抗生物質を飲めば治りが早い…そう考えていると、風邪よりも恐ろしい病気にかかる可能性がある、と『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「病気知らず」で生きるには?』(世界文化社)を上冊した医師の森勇磨さんはいいます。そこで、抗生物質が風邪の治療に適さない理由や抗生物質をのみ続けることのリスクについて紹介します。

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抗生物質が新たな病気を引き起こす可能性

森さんは、風邪の診療時に抗生物質の処方を希望する患者は多いと話します。しかし、やみくもに抗生物質をのむことは危険なのだそうです。

抗生物質は風邪などのウイルスには不向き

風邪には抗生物質、という治療がスタンダードだった時代も過去にあるものの、風邪の原因の8割程度がウイルスであるとされる現代には、その処方はあまり適していないそうです。

「抗生物質は細菌を退治する薬であり、細菌とウイルスはまったく違う生きものなのです」(森さん・以下同)

薬と虫眼鏡
細菌とウイルスはまったく違うため、抗生物質はウイルスには不向き(Ph/photoAC)
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腸内細菌が乱れ、炎症が起きることもある

抗生物質は種類によってターゲットとなる細菌の幅は変化するものの、人間にとってよい菌と悪い菌を判断する能力はありません。

腸内環境のイメージ
抗生物質は人間にとってよい菌と悪い菌を判断できない(Ph/photoAC)
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人間の体には、常在菌と呼ばれる菌が住み着いているそうです。その中には胃がんと関連するピロリ菌などの悪い影響をもたらす菌もいますが、腸内細菌の代表格であるビフィズス菌や乳酸菌など、善玉菌とも呼ばれるよい菌まで、抗生物質によって死滅する可能性があるのです。

「そうして腸内細菌が乱れると、下痢の症状が引き起こされる場合があります。さらに、平和な腸内環境が抗生物質によって乱され、別の細菌が腸内で暴れることで腸に炎症が起きて、発熱したり、血便が出たりする偽膜性腸炎という炎症が起こりえるのです」

必要以上に抗生物質を使用するデメリット

本当に必要な病気のときだけに抗生物質を使用するべき理由はもう1つあります。抗生物質の脅威から生き残った細菌には、進化を重ね抗生物質への耐性をつけたものがでてくるそうです。それが地球上に広がってしまうと、新型コロナウイルスの流行と同じような事態におちいる可能性もあります。

抗生物質と“耐性菌”のイタチごっこ

世界初の抗生物質である「ペニシリン」の誕生から百余年、抗生物質と細菌は互いに進化を続けているのだと森さんは話します。

アンプルと注射器
互いに進化を続ける抗生物質と細菌(Ph/photoAC)
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「抗生物質の性質をとらえ、攻撃を回避できるように“耐性”をつけ、姿、形を変える者が出てくる。これが“耐性菌”の正体です。こういった耐性菌に対して、人類はさらに耐性菌を退治できる抗生物質を開発。一方の細菌はさらに変性をおこない、新たな抗生物質に対しての耐性を身につけていく……といったイタチごっこのような状況が続いています」

抗生物質ばかり処方する医師は避けるべき

「我々が“耐性菌パンデミック”を避けるためには、患者側が耐性菌に関する正しい理解を持ち、むやみに抗生物質を希望しないことです」と森さん。

どんな状態だったとしても、むやみに抗生物質を出す医師は時代遅れの考え方だと森さんは考えています。長年のかかりつけ医だったとしても抗生物質を処方された際には、「本当に必要なのか?」ということを確認する必要がありそうです。

◆教えてくれたのは:産業医、内科医・森勇磨さん

Preventive Room代表。神戸大学医学部医学科卒業。2020年2月より「予防医学ch/医師監修」をスタートし、登録者は53万人を超える。上場企業、株式会社リコーの専属産業医として予防医学の実践を経験後、独立。Preventive Room株式会社を立ち上げ、書籍やYouTubeでの情報発信のほかオンライン診療に完全対応した「ウチカラクリニック」を開設している。https://www.youtube.com/channel/UCN1w0Esm19bl7kMh5O23y-w

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