
酷暑が続くこの時期、室内ではエアコンを適切に使うよう推奨されています。ただ、どうしてもエアコンが導入できない部屋もあるでしょう。そこでいま注目されているのが、「もう1台のクーラー」として気軽に導入しやすい、工事不要の「スポットクーラー」です。どんな仕組みで、買う前にどんな注意点が必要か、家電ライターの田中真紀子さんに聞きました。
設置工事が不要で、買ってすぐに使える
まず、スポットクーラーとはどういうものか、その仕組みから教えてもらいます。

「スポットクーラーとは、設置工事が不要で、使いたい場所に移動して使えるコンパクトタイプのエアコンです。一般的には、壁掛けエアコンと同じくコンプレッサーを搭載し、本体内部で冷やした空気を吹き出します。
壁掛けエアコンと根本的に異なるのは、室外機がないこと。エアコン冷房は、空気から熱を取り除いて冷たい空気を作り出し、取り除いた熱は室外機から捨てていますが、スポットクーラーは背面から排熱するため、前から冷たい空気、後ろから熱い空気を出すことになります」(田中さん・以下同)
買う前に確認すべきこと、買ってから後悔しがちなこと
今はインターネットで簡単に買えますが、購入ボタンを押す前に知っておきたいのが、スポットクーラーの注意点です。
注意1:本体の重さ

「コンプレッサーを搭載しているので、見た目以上に重いことが多いです。中には卓上に置けるコンパクトタイプもありますが、一般的には10~30kg前後。特に本体が大きくなると、移動も大変なので、キャスターがついているか確認しましょう」
注意2:涼しさは壁掛けに劣る
気になるのが、どれくらい涼しくなるのか。
「スポットクーラーという名前のとおり、近くにいる人のまわりを中心に涼しくできるものなので、エアコンほどの効果は期待できません。その温度も、多くの製品が現在の室温より7~8℃低い冷風を出しますが、壁掛けエアコンは10~15℃低い温度を出すとされているので、当然ながら冷却機能も劣ります。
ただし排熱ダクトを取り付け、窓にもパネルを設置して常に窓の外から排熱できるよう設置する大型タイプなら、4畳半~6畳程度の部屋でエアコンとして使用できます」
注意3:置き場所にも工夫が必要
3つ目が、置き場所の問題です。

「背面から排気を出す構造上、背面側は暑く感じますので、置き場所にも工夫が必要です。狭い空間では、冷気と暖気が同時にこもって冷房効果を感じにくくなる場合ありますので、この場合も可能であれば付属の排気ダクトを取り付け、窓やドアの外から排出するようにしましょう」
注意4:排水の手間がかかる
4つ目が、使用中に一定の手間がかかる点です。

「本体には、『ドレン水』という、エアコンが空気を冷やす際に熱交換器に付着した水滴が溜まります。そのため、適宜排水が必要になります。タンクに溜まるタイプはタンクを外して捨てるほか、付属のホースを取り付けて容器などに連続排水させる方法があります。また中にはドレン水を内部で蒸発させる『ノンドレン式』もあります。」
留守中、ペットのためにスポットクーラーをつけっぱなしにしておくという人もいるでしょう。そうなるとドレン水が溜まって自動停止してしまう場合も。心配な場合は、ドレン水を連続排水させるか、ノンドレン式を選ぶと安心です。
涼風が届かないキッチンや脱衣所などで大活躍
以上のように注意点も多いスポットクーラーですが、使い方次第では、暑い時期を乗り越えるには欠かせない家電になります。特にどんなシチュエーションで活躍するのでしょうか。


「エアコンを取り付けられないけれど、暑さが気になる部屋で使うのに重宝します。例えばリビングやダイニングのエアコンはついているけれど、その奥のキッチンまで涼しさが届かない場合、とても便利です。ほかにも、エアコンが設置されていない脱衣所、たまにしか使わない部屋でも活躍します。今までは扇風機でなんとか凌いでいたという人にとっては、だいぶ快適に感じられると思います」
また、こんな使い方も。
「個人的な体感ですが、本体が小さい卓上タイプは狭い範囲しか冷やせない分、排気もぬるめ。ですので、たとえばデスクワークやメイク中に自分だけに冷風が当たればいいという人は、卓上タイプを選ぶといいかもしれません」
最後に、田中さんがおすすめのスポットクーラーを2点、挙げてもらいました。
【1】アイリスオーヤマ『コンパクトクーラー ICA-0301G』

まずは、高い冷却機能を誇る実力派、『コンパクトクーラー ICA-0301G』から。
室温の-8℃の高い冷却能力と内部洗浄機能が特長
「本体サイズは、幅27×奥行き24.7×高さ49.8cmで、一般的な空気清浄機ほどの大きさ。冷房機能は、室温の-8℃と、多くのスポットクーラーより高い能力を備えます。ほか除湿、送風機能も搭載。本体重量は12.5kgと重いですが、キャスター付きなので、水平移動は問題なし。内部洗浄機能付きなので、カビなどの不快なニオイを抑えてくれます」
【2】シロカ『除湿機能付きポータルクーラー』

冷却・除湿能力ともに高く、それでいてコンパクトで使いやすいのがシロカの『除湿機能付きポータルクーラー』です。
コンパクトで重すぎず、持ち運びに便利

「こちらも冷風、除湿、送風の3モードを搭載し、風量も3段階から選べます。スッキリしたデザインと幅22×奥行き22×高さ41.4cmというコンパクトサイズなので狭い部屋でも使いやすく、重量も6.5kgと重すぎないので、取っ手を持って使いたい場所に持ち運べます。
コンパクトながら室温より7℃低い冷風が心地よく、棚などに置いて使うのもいいですね。除湿能力は、1日4.4Lとサイズのわりにパワフルで、部屋干し時にも活躍してくれます」
今すぐ、もう一台エアコンが欲しい! そんな時にすぐに導入できるのが、スポットクーラーの良さ。現実的にどの部屋でどう使えそうかシミュレーションしたうえで、使いやすい製品を選びたいですね。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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