
「もういい年だから…」と、年齢を理由に自分の可能性を狭めていないだろうか。そんな世間の“年齢の壁”を軽々と乗り越え、80才を過ぎたいまも第一線で活躍している先輩がいる。世界最高齢の女子クロスカントリースキーヤー・佐伯克美さんに、いくつになっても枯れることのない「元気の秘密」を聞きました。
昨年、世界最高齢の女子クロスカントリースキーヤーとして、ギネス世界記録に認定された佐伯克美さん。
「ギネス記録はもちろんうれしかったですが、それよりも、世界大会で優勝して表彰式で『君が代』が流れたときは感動しましたね」(佐伯さん・以下同)
とにかく姿勢が美しい。背筋がピンと伸び、階段を手すりなしでスタスタ上る姿は、91才とは思えない。
「私は若い頃から山登りをしていて、ずっと体を鍛えてきました。いまはクロスカントリースキーをするために、病院が運営する近所のトレーニング施設に、ほぼ毎日通っています。週1回、パーソナルトレーニングで60分間バーベルを上げるなどしてみっちり鍛えます。そのほか、アロハダンスやボディーバランスの教室で、体を動かすこともあります。いろんな人と一緒にトレーニングができるので楽しいですよ」

「自分のベースにはいつも山がある」というほどの山好き。国内最難関といわれる冬の剱岳(富山県)には何度も挑戦してきたという。
「きっかけは富山大学に在学していたときに受けた登山とスキーの授業です。そこからどっぷりとハマりました。
大学卒業後は魚津の山岳会のメンバーとなり、夫ともそこで出会いました」
大学卒業後は中学校や小学校で教鞭を執った後、校長まで務めた。
「『定年後は好きなことをしよう!』と思って、国内外問わず夫と一緒にいろんな山に登り、前から挑戦したかったクロスカントリースキーを始めたのは60才を過ぎてから。斜面を滑り降りるスキーとは違い、スキー板で雪道を走るのは、思っていた以上に体力を消耗するので、とても大変でしたね」
山に魅せられて70年ほどになるが、山は危険と隣り合わせ。「いつ命を落とすかわからない」という思いも抱えている。
「私も夫も何回も命の危機に直面しました。いちばん怖かったのは、鉄砲水にあったこと。沢登りをしていたとき、突然鉄砲水で流されそうになったんです。危機一髪で逃れましたが、あのときはもうダメだと思いました。人間いつ死ぬかわからない。そう思えるのも山から教わったことかもしれません」
長年寄り添ってきた夫の郁夫さんは昨夏、誤嚥性肺炎でこの世を去った。90才だった。
「夫がいなくなったことはもちろん悲しいです。ただ、人間は必ず死ぬ。私だって明日どうなるかわかりません。だからこそ、今日を生きるしかないと思います」
現在は登山ショップを経営する息子夫婦と一緒に暮らしているが、食事は自ら台所に立って用意する。
「自分のペースで食事をしたいから、自分で作ります。作りすぎたときは、息子夫婦にお裾分けしています」
食卓には、自家栽培の新鮮な野菜や、コシヒカリのご飯、地元産のフルーツが欠かせないという。
「すべてはクロスカントリースキーを楽しむため。記録を残すと達成感があるんです。
この先、どうなるかはわからないけど、より長く動けるようにと思いながら日々を過ごしています」
◆クロスカントリースキーヤー・佐伯克美さん(91才)
1935年、富山県生まれ。大学卒業後、中学校教諭や小学校校長を務める。60才の定年退職後にクロスカントリースキーを始め、各大会に出場。2025年に世界最高齢女性スキーヤーとしてギネス世界記録に認定される。現在は講演会など多忙な日々を過ごしている。
撮影/二村海
※女性セブン2026年10月15日号