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中高年も歯列矯正を!脳梗塞や糖尿病などさまざまなリスク回避に

日本人の「デンタルIQ(歯や口腔内の健康に対する意識)」が向上し、中高年にも歯列矯正をする人が増えている。「見た目も元気で若々しくありたい」「いつまでも自分の歯をキープしたい」など、年齢を重ねても美と健康を謳歌したいのが女心。もう一度、「あの頃の美しい歯」を取り戻せるとしたら、あなたはどうしますか?

白い歯を見せて笑う外国人女性
欧米では白くて整った歯並びが重要視され、子供のうちから歯列矯正をする人が多い。歯に入れるワイヤーも、海外ではきちんとケアをしている証に(写真/GettyImages)
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中高年で歯列矯正は遅いか?

「中高年からの歯列矯正」と聞いて、「この年になって?」「いまからやっても」と思うかたも多いだろう。「もはや手遅れではないですか?」と、矯正歯科医の吉住淳さんに尋ねると、

「自分の歯が、ある程度の本数あれば、矯正は何才からでも始められます。矯正は決して安いものではありませんし、治療に時間がかかるなどの検討材料はありますが、たとえば、歯を失ってしまってからインプラントを行うのも、金銭的な負担は大きい。なにより自分の歯でなければ、噛めても健康効果は高くないため、老後の健康を考えれば、中高年でも矯正を視野に入れるべきだと思います」と明確な答えが。

◆重要なのは歯の本数ではなく噛み合わせ

日本では、健康寿命の延伸のカギとして「お口の健康」に関心が高まり、1989年から「80才になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020運動(*1)」が行われている。最新(平成28年)の調査で、80才以上で自分の歯が20本以上ある人が初めて50%を超えたが、「もっとも大切なのは、噛み合わせ」と吉住さんは話す。

【*1 8020運動:厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱する取り組み。親知らずを除く28本の歯のうち、自分の歯が80才で20本以上あれば、ほとんどの食物をきちんと咀嚼でき、ひいては、全身の健康につながるというもの】

「みなさん、自分の歯が20本以上あると『私は大丈夫!』と安心されるのですが、噛み合わせが悪いと咀嚼がうまくできず、胃腸での消化吸収が悪くなり、歯周病にもかかりやすくなります」(吉住さん・以下同)

不正咬合によりどんなリスクが?

歯周病は、脳梗塞や糖尿病のリスクを高め、全身疾患につながる危険性がある。

「それ以外にも、歯磨きが行き届かず虫歯になりやすい。唾液が減って口腔内の清潔が保てず、免疫機能が低下する。脳活性が滞り、うつ病や認知症を発症するリスクが上がる。全身の骨格がゆがむ。唾液に含まれる発がん防止やアンチエイジング作用のあるたんぱく質が減るなど、不正咬合にはさまざまなリスクが潜んでいます」

東京都健康長寿医療センター研究所によると、よく噛むことで全身の代謝や骨の健康に作用するホルモンの分泌が増えるという研究結果もあり、咀嚼の重要さは実証済みだ。

◆日本人こそ歯列矯正が必要な理由

「実際、かつて8020運動の達成者300人以上に行った調査(*2)でも、ほとんどの人の噛み合わせがよかったという報告があります。噛み合わせの良し悪しが、老後の生活を左右するといえるのです」

【*2 8020推進財団による『良い咬み合わせで自立したシニアへ』の研究発表より】

だが、いまだに日本の歯列矯正の重要性は、欧米より軽んじられているのが実情。10代をアメリカで過ごした吉住さんは、帰国後、そのギャップを痛感したと話す。

「欧米人に比べ、アジア人はあごの骨の奥行きが狭く、28本の永久歯が狭いスペースを奪うように生えるため、歯並びが悪くなりやすい(下図参照)。年齢を問わず、日本人こそ歯列矯正の必要性が高いのです」

噛み合わせが悪い歯並びの種類と悪影響

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突の歯のイラスト
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上の前歯や上あごがつき出ている「出っ歯」の状態になっている。前歯で噛みきれず、奥歯に負担がかかるほか、口が閉じづらく口呼吸になりがち。

下顎前突(かがくぜんとつ)

下顎前突の歯のイラスト
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下の前歯が上の前歯より前に出た「受け口」といわれる状態。こちらも前歯がきちんと使えず、奥歯も噛み合わせがずれてしまい、あごがしゃくれていく。

叢生(そうせい)

叢生の歯のイラスト
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歯が収まりきれずに「乱杭歯」となっている状態。歯がきれいに磨けないため汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病、口臭の原因になりやすい。

開咬(かいこう)

開咬の歯のイラスト
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上下の歯にすき間があり、嚙み合わない状態。奥歯は噛んでいるのに前歯が開く(またはその逆)。噛む力の負担が局所的になり、滑舌が悪くなる。

 

健康はもちろん、見た目の美しさも向上し、精神的な満足度も高い歯列矯正。「痛い」「高い」「時間がかかる」というイメージも強いが、さて──。

教えてくれたのは:矯正歯科医・吉住淳さん

日本矯正歯科学会 認定医 スマイルアクセス矯正歯科代表・吉住淳さん/中高をアメリカで過ごし、矯正の現場を実体験。2016年吉住歯科矯正クリニック(吉祥寺)、2019年、時代の先をゆくオンライン治療をメインとしたスマイルアクセス矯正歯科を開業。著書に『素顔の自分をアップデートする、オンライン歯列矯正』(東洋館出版社)がある。

イラスト/田中斉

※女性セブン2020年9月3日号

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