
『人生は80歳からがおもしろい』(アスコム)を上梓した吉川幸枝さんは、88歳ながら現役社長として活躍中。長い人生の中で多くの出会いと別れを経験してきた吉川さんは、さみしさとの向き合い方や後悔しない人付き合いなど、“80歳からの人付き合い”についても同書で語っています。そこで、吉川さんが説く、オトナ女性の人間関係のあり方について学びましょう。
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さみしさは会いたい気持ちの裏返し
歳をとることで変わるのは自分だけではありません。「自分の周りの状況も変わってきていることでしょう」と吉川さんはいいます。
親しい友人が亡くなったり、夫が病気や亡くなったり、子供が独立したり、歳を重ねるとさみしさを感じる機会も増えていきます。吉川さんは、これを仕方がないこととあきらめることはないといいます。
まず、なぜさみしいと感じるのか、自分の心と向き合ってみましょう。例えば「お茶友達が入院してしまった、もう誰も私とお茶を飲んでくれない」「正月、盆くらいしか、子供が家に寄り付かなくなった」といった理由に思い当たるのなら、これはすべて「受け身の考え方ではないでしょうか」と吉川さん。
「仲良しの友達が入院したなら、会いに行けばいい。子供が家に寄り付かないなら、自分から電話すればいい。SNSでつながることだってできる」(吉川さん・以下同)

「さみしい」という気持ちは「会いたい」と思う気持ちの裏返しだといいます。体が思うように動かない、などと理由をつけずに自分からアクションを起こしてみましょう。
さみしさを軽減するには気持ちを満たす
また、年齢を重ねて、若いときよりも余裕ができた時間を使って、「気持ちが満たされるような方法を考えること」も、さみしさを軽減させる方法の1つ。
楽しいもの、打ち込めることを見つける
ひとりでいることに孤独を感じたり、家族や友達に会えないのはつまらないと思ったりするのは、常識にとらわれているからかもしれません。
「なぜ満たされないのかといったら、おそらく自分で自分を楽しませる術を持っていないからだと思うの。誰か人を頼らなければ、自分で自分の機嫌を取ることもできない。さみしいと思う自分を、どう癒したらいいかわからない。要するに、自分で自分を支えられない、『自分のために生きる術』を身につけていないということだと思うのね」
それは人に依存しているということでもあります。依存しすぎないようになるための方法として、吉川さんは「人に頼らなくても自分を楽しませられるもの、自分が喜んで打ち込めるものを何か1つ見つけること」を提案します。

長生きできることに感謝する
「ずっと家族のために生きてきた」という人は、自分が喜ぶものを見つけられないと思うかもしれません。それでも、衰えていく自分を持て余して、周囲に愚痴ばかりこぼすようになってしまっては残りの人生を楽しく過ごすことはできないでしょう。
「かつて60年くらいだった人生が、今では90歳、100歳まで生きられるんです。30年近くも余分な時間をいただいているんです。そこに感謝して、精一杯生きていくことを、一緒に考えましょうよ」
なかなか見つからないという人は「あなたが喜ぶことは何?」と自分に問いかけてみましょう。例えば、好きなドラマにワクワクしたり、お笑い番組で大笑いしたり、そんなちょっとしたことでもいいといいます。
「私もよく、ビデオに撮り溜めたドリフターズの番組なんかを見て、ひとりでゲラゲラ笑い転げてます。バカバカしいし、くだらないんですけど、見ていると『世の中にはこんなに面白いものがあるのか!』って元気が出ます。なんだか力が湧いてきます」

歳を重ねて変わる家族との向き合い方
仕事一辺倒で、家族との交流があまりなかったという吉川さん。しかも、息子を亡くしたことでお嫁さんや孫との関わり方に悩んだ時期もあるそうです。そんな経験を経た吉川さんだからこそ、70代、80代の家族との向き合い方についても率直なアドバイスをしてくれます。
「自分はこうしてほしい」と思うように相手が動いてくれないと、不満がたまり、愚痴っぽくなってしまったりもするでしょう。しかし、それではなにも解決せず、かえって心はさみしく貧しくなってしまいます。
「そんなときは、こちらから『どうしてる?』『元気でやってる?』って素直に伝えることが大事だと気づきました。不安や不満というのは、どうしても相手に向けて放ってしまいがちだから」
身内でも気遣いや感謝を
また、「マイナスの感情をプラスに置き換える」ことを意識するといいと、吉川さんはいいます。
相手への不満が生まれるのは、自分から相手への気持ちがあるということ。自分の不満よりも、自分が相手をどう思っているかのほうを大きくとらえ、その気持ちに沿って行動を起こすことが不満を解消することにつながるといえそうです。
今ではお嫁さんにも気軽に連絡をするようになったという吉川さんは、たとえ身内であっても、気遣いや感謝を持って接するのが肝要だと考えます。
「時間を作っては電話したり、ちょっとした手土産を持参して近況を聞いたり。こちらがそんな接し方をすると、相手も心を開いてくれるものです」

後悔しないために大好きな人たちに会いにいく
ポジティブに人生をとらえているように見える吉川さんですが、「もっともっと『お母さん』をするんだった」という後悔を息子が亡くなってから引きずっていることを明かします。「大事なものは、なくしてみないとわからない」というのが、遅すぎる気づきだったといいます。
同じような後悔をしてほしくないという思いで、吉川さんは「身近な人を理解する努力をしてほしい」と語ります。
「そのためには、あなたの大切な、大好きな人たちに、たくさん会ってください。そしてたくさん話をしてください。たくさん話を聞いてください。そして、そして、たくさん大好きだと伝えてください。1秒1秒を大切にして」
今、頭に浮かんでいる人に電話したり、明日会いに行ったり、幸せをさらに積み上げる行動を起こしてみてはいかがでしょうか。
◆教えてくれたのは:吉川幸枝さん
よしかわ・さちえ。愛知県出身。株式会社よし川代表取締役社長。歯に衣着せぬトーク力と数々の大きな宝石を身にまとうスタイルで『¥マネーの虎』をはじめ、多くの番組に出演。メディアで人気者になり、「歩く百億円」と呼ばれるように。現在88歳ながら、骨年齢20歳、臓器年齢20代前半、血管年齢子ども、髪ふさふさ、虫歯なしの体で現役社長として活躍している。https://yoshikawa-sachie.co.jp/