減塩食など、食生活を中心に専門家から学んだ内容をまとめた『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)の著者・加藤綾菜さんは、2011年に加藤茶さんと結婚し、高齢の夫のサポートをしています。食事から得られる栄養が体作りの基本ですが、高齢になっても健康的に生活を送るには筋力を保つことも必要と学んだ加藤さんが同書で紹介した、「フレイル」を予防するための方法について教えてもらいました。
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要介護を予防し健康寿命を伸ばすには運動
加藤さんは、夫が週に1回のトレーニングとヨガのためにジムに通っているものの、歩くことがあまり好きではないことが気になっていると話します。
そこで、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の身体活動研究部と栄養・代謝研究部で部長を務める小野玲先生が教えてくれたのは、1日5000歩以上歩くことと、健康寿命を伸ばすための簡単な運動です。
加齢とともに心身の機能が低下する「フレイル」
高齢になって気をつけなくてはいけないのが、日本老年医学会が提唱する「フレイル」です。フレイルとは、加齢とともに心身の機能(運動能力や認知機能など)が低下し、健康と要介護の中間にあるような状態の始まりのことを指します。
「フレイルは4つに分類されます。まず、疲れやすくなったり、体重の減少や歩行速度が低下する“身体的フレイル”。次に人付き合いが減ったり、閉じこもり気味になったりする“社会的フレイル”。そして判断力や認知機能が低下する“認知的(心理的)フレイル”、滑舌が悪くなったり、食べるときにむせやすくなったりする“オーラルフレイル”があります」(小野先生・以下同)
いずれも早期発見で改善が見込まれ、どのケースでも運動することがとても大切なのだそうです。
フレイルを予防するためのポイント4つ
さまざまなケースがあるフレイルですが、次の4つを実践することで予防につながるそうです。
◆毎日の「運動」で筋力を強化
◆「食事」で筋肉のもとになるたんぱく質を多く摂りましょう。(1日1回は、主食(ごはん、パン、麺)・主菜(肉、魚、卵、大豆製品)・副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)を組み合わせた食事を意識)
◆「健口(けんこう)」のための発声トレーニングを実践する
◆1日10分(+10分)、人との「つながり」をもちましょう(家の中なら知り合いとの電話や家族との会話・あいさつ・食事、生活圏では散歩や買い物、地域ボランティアや趣味・サークルなど、自分ができること、興味があることから始めるのが◎)
フレイル予防のためのトレーニング
毎日の運動は、激しいトレーニングをしなくてはいけないわけではありません。その一例として、同書でも紹介されている家の中でできる簡単な運動を1つピックアップ。また、「健口(けんこう)」のための発声トレーニングのやり方も紹介します。
運動をする際には下記を意識して行ってみてください。
【1】回数はつらいと感じるまでやりましょう。限界までやる必要はありません。
【2】週3回、できれば毎日続けるとより効果的です。
【3】呼吸を止めないようにしましょう。
【4】体調の悪いときは無理をしないようにしましょう。
脚筋バランスを整えて転倒を防ぐ「脚の横上げ」
【1】姿勢を正して立ち、いすなどにつかまった状態で、片脚をひざを伸ばしたまま、ゆっくりと横に上げて下ろします。このとき、真横ではなく、やや斜め後ろに上げます。
【2】体の軸がブレないように、両脚おこないます。
上体が前に倒れないように注意しましょう。1日に片脚あたり10〜30回ずつ行うのが目安です。
「パタカ発声」のやり方
「舌やその周りの筋肉がおとろえることで、食事でむせたり、そしゃくが難しくなったり、話しにくくなったりします。予防のためには『パ』『タ』『カ』の発音が重要です。『くちびるや舌をよく動かすこと』と覚えておきましょう。
できるだけ速くはっきりと声を出しながら、「パパパ……」「タタタ……」「カカカ……」とそれぞれ続けて5秒発音します。
歌ったり、詩を朗読したり、早口言葉も効果的です。また、セルフケアに加えて、定期的に歯科検診を受けましょう。
◆教えてくれた人:加藤綾菜さん
かとう・あやな。1988年、広島県出身。2011年にザ・ドリフターズの加藤茶と結婚。45歳年の差婚と話題になるも、「財産目当て」などとバッシングされる。しかし、一切反論することなく、高齢の夫を支えるため「生活習慣病予防アドバイザー」「介護職アドバイザー」「介護レクインストラクター」など、多くの資格を取得し、「108歳まで舞台に立ちたい」という夢をもつ夫を支えている。
◆国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の身体活動研究部 部長/栄養・代謝研究部 部長・小野玲先生
神戸大学を卒業後、京都大学大学院にて博士(社会健康医学)取得。神戸大学大学院保健学研究科にて連携大学院を開設し、教授を兼任している。専門は、臨床疫学、運動疫学、老年疫学、リハビリテーション科学で、日本の身体活動量を向上させる研究や社会実装を行っている。