加藤茶さんと結婚し、高齢の夫を支えるために食生活にも気を使っている加藤綾菜さんが『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)を上梓。同書では、加藤さんが専門家たちに教えてもらった健康寿命を延ばすための食事や運動の知識がまとめられていますが、そのなかで減塩が1つのカギとなっています。そもそも、なぜ塩分の摂りすぎはいけないのでしょうか? その理由と食事のポイントについて紹介します。
* * *
日本人の死因の2位が循環器病
加藤さんが健康寿命を延ばすために大切なことについて聞いたのは、国立循環器病研究センターの脳神経内科で部長を務める猪原匡史先生。「循環器病予防には減塩食です」と話す猪原先生から、加藤さんはどんなことを学んだのでしょうか。
循環器病は血管が傷むことから始まる
日本人の死因の上位は、がんと循環器病です。循環器病とはどんな病気なのか、疑問をもつ加藤さんに猪原先生が教えてくれました。
「体をめぐる血管が、動脈硬化などにより細くなって詰まったりすることで、心臓や脳の働きが悪くなって起こる病気のことです」(猪原先生・以下同)
加藤茶さんが経験したことがあるという、狭心症や大動脈解離のほか、高血圧や心筋梗塞、脳梗塞、心筋症、心房細動、心不全、脳出血と、さまざまある循環器病ですが、始まりは血管が傷むこと。その原因の1つが塩分の摂りすぎだと猪原先生は話します。
減塩は循環器病の予防に◎
高齢になると、血管も老化して硬くなるため、動脈硬化や高血圧になりやすくなってしまうと猪原先生はいいます。
「加えて食事に塩分が多いと高血圧のリスクはより高まり、脂質が多いと血中コレステロール値が上がるので血管に負担がかかります」
つまり、塩分・脂質を減らした料理が血管にやさしい食事なのです。さらに、喫煙も血管を傷める要因に。
実は塩分が多い日本食
日本食は健康にいいイメージがありますが、干物や漬物、しょうゆでの味付けなど、実は知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎてしまっているかもしれません。
例えば、納豆についてくるだしじょうゆに含まれる塩分は1gほど。納豆のだしじょうゆには成分の表示義務がないため見落としがちですが、減塩食を心がけるうえでは、隠れ塩分にも気をつける必要がありそうです。
1日の塩分摂取量の目安は5g以下
1日あたりの塩分量目安について尋ねた加藤さんに、「WHO(世界保健機関)では1日5g未満と言っています。アメリカ心臓協会では3.8g未満としており、これはかなり厳しい基準ですね」と猪原先生。
カップラーメン1個でも基準をオーバーしてしまうことに驚く加藤さんですが、減塩食の努力で1日の塩分を6g以下にしようと頑張っているそうです。
塩分を吸収させないためには食物繊維
気をつけていても、1日の塩分を5g以下にするのはなかなか大変そう。そこで、猪原先生が教えてくれたのは、摂った塩分の吸収を抑える方法。それは「野菜をたくさん食べること」だといいます。
「野菜は食物繊維を多く含んでいますよね。腸で吸収される塩分を、野菜の食物繊維が抑えてくれるのです。緑黄色野菜、淡色野菜の両方を摂ってください」
それを聞いて、野菜を食べてもらえるようにしたいと話す加藤さんは、腎臓が悪い夫がカリウムと塩分を控えるように言われていることが気になるようです。
「加藤さんの場合はやはり腎臓のことを思って、カリウムの多いバナナやキウイ、じゃがいもやアボカドは避けたほうがいいでしょう」
しかし、利尿作用のあるカリウムは過剰なナトリウムを排出させる性質があるため、腎臓が悪くない人は進んで摂りたい栄養素。
「同じナトリウムを含むにしても、精製塩ではなく、ミネラルが多い海の塩や岩塩を使うようおすすめしています」
◆教えてくれた人:加藤綾菜さん
かとう・あやな。1988年、広島県出身。2011年にザ・ドリフターズの加藤茶と結婚。45歳年の差婚と話題になるも、「財産目当て」などとバッシングされる。しかし、一切反論することなく、高齢の夫を支えるため「生活習慣病予防アドバイザー」「介護職アドバイザー」「介護レクインストラクター」など、多くの資格を取得し、「108歳まで舞台に立ちたい」という夢をもつ夫を支えている。https://twitter.com/katoayana0412
◆国立循環器病研究センター 脳神経内科部長・猪原匡史先生
京都大学医学部を卒業。西神戸医療センター、英国ニューカッスル大学加齢医学研究所研究員、京都大学医学研究科臨床神経学助教などを経て、2013年に国立循環器病研究センター 脳神経内科医長に就任。2016年から現職。専門は脳卒中・認知症の診療、食事や薬による認知症治療の研究。