新NISAの開始によって一段と注目を浴びているクレカ積立は、毎月の投資信託の積立をクレジットカードで行うことで、クレジットカードの利用ポイントが貯まるお得な仕組みだ。しかし、カードの種類や利用額によって還元率が異なり、年々複雑さを増している。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、今選ぶべきクレカ積立のサービスについて教えてもらった。
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毎月最大10万円のクレカ積立が可能に
クレカ積立とは、毎月設定した金額での積立投信をクレジットカードによる支払いで行うことができるものです。証券口座への入金が不要で手軽なことに加えて、クレジットカードの利用ポイントがつくことが最大のメリットです。
これまでは、クレカ積立の積立額は最大で月5万円という証券会社が多かったのですが、2024年3月に法改正がされ、各証券会社がクレカ積立の上限額を月10万円に引き上げました。これにより、新NISAのつみたて投資枠、成長投資枠合わせて10万円の積立投資が可能になりました。
一方で、クレカ積立額の拡大に合わせてポイント還元率を見直す金融機関も相次いでいます。また、投資信託の代行手数料がカードや商品によっても還元率が異なったり、カードの使い方や生活スタイルによって、おすすめのカードも変わったりするので、新たにクレカ積立を開始する場合は、サービスごとの特徴をしっかりチェックする必要があります。
楽天経済圏なら引き続き楽天カード×楽天証券
楽天カードと楽天証券は、2024年3月の積立設定分から毎月の上限額を10万円に引き上げました(https://www.rakuten-card.co.jp/corporate/press_release/20240308/)。
楽天証券での積立投資は楽天市場のSPU(スーパーポイントアッププログラム)に恩恵があるため、楽天経済圏の人なら引き続き、楽天カードと楽天証券の組み合わせがおすすめです。
積立投資の還元率はカードの種別と投資商品によって異なる
楽天証券でのクレカ積立投資の還元率は、カードの種別と購入する投資商品によって異なります(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/rfund/guide/creditcard.html)。年会費無料の楽天カードで投資信託の代行手数料0.4%以上の商品を積み立てる場合は還元率1%、0.4%未満の商品を積み立てる場合は0.5%、年会費2200円の楽天カードゴールドではそれぞれ1%、0.75%となっています。
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」など、積立投資で人気な商品の多くは代行手数料が0.4%未満のため、楽天カードでの積立投資の還元率は0.5%、楽天カードゴールドは0.75%と覚えておくと良いでしょう。
毎月3万円以上の投資で楽天市場のSPUがプラス0.5倍に
楽天カードと楽天証券の組み合わせは高還元率とは言えませんが、毎月3万円以上、楽天ポイントも含めた積立投資を行えば、楽天市場の商品のポイントがプラス0.5倍になるため(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/campaign/spu/)、楽天経済圏の人は楽天カードと楽天証券の組み合わせがよいでしょう。
ただし、楽天カードと楽天証券はポイント還元率が変更されることが多いため、最新の状況をチェックしておくようにしましょう。
メインカードとしても使うなら三井住友カード ゴールド(NL)×SBI証券
三井住友カードとSBI証券も2024年4月の積立設定分から毎月の積立上限額を10万円に引き上げました。しかし、2024年10月以降、カードの年間利用額に応じて還元率が変動し、利用額によってはこれまでと比べてポイント付与率が大幅にダウンします(https://www.smbc-card.com/mem/cardinfo/cardinfo4010785.jsp)。
利用額が多くない人にとっては積立投資で利用するメリットの小さいカードとなりますが、メインカードとして一定程度の利用額が見込める人にはおすすめできます。
年間100万円以上の利用額が見込める人におすすめ
三井住友カード ゴールド(NL)(年会費5500円)は、通常の買い物などでのカードの年間利用額100万円以上で積立投資の還元率1%、10万円以上で0.75%、10万円未満は還元なしとなっています。年間の利用額が10万円未満の場合は積立投資だけで利用するメリットはないと言えるでしょう。
一方、通常の買い物での還元率は0.5%と低めですが、年間100万円を利用すれば継続特典として1万Ⅴポイントが付与されるため、最大1.5%の還元率になるうえ、翌年以降の年会費が永年無料になります。ただし、SBI証券の投信積立サービスを支払いできる「三井住友カード つみたて投資」は、100万円特典の対象にならない点に注意が必要です。
つまり、利用額が年間100万円以上の場合は、年会費無料に加えて、通常の買い物でも最大1.5%の高還元率が見込め、積立投資の還元率も1%となるため、使いこなすことができればお得度が高いカードと言えるでしょう。
三井住友カード プラチナプリファードでの積立は玄人向け
一方で、三井住友カード プラチナプリファードは玄人向けのカードです。年会費は3万3000円と高く、積立投資の還元率は2024年11月買付分以降、カードの年間利用額が500万円以上で3%、300万円以上で2%、300万円未満で1%となっています。
プラチナプリファードを通常の買い物で使ったときのポイント還元率は1%と、ゴールドカードの0.5%を上回るほか、前年の利用額100万円ごとに1万ポイントが最大4回もらえるなど魅力はあるものの、ゴールドカードのように年会費が無料になる条件はなく、クレカ積立分だけでは年会費を賄うことができないため、あまりおすすめはできません。
シンプルでわかりやすいau PAYカード×auカブコム証券
楽天証券やSBI証券の還元率は複雑でわかりにくい、と感じる人には、au PAYカードとauカブコム証券の組み合わせがおすすめです。こちらも毎月の積立上限額が10万円にアップ(https://kabu.com/company/lp/lp200.html)したうえ、カードの利用額や種別にかかわらず、1%の還元率となっています。
貯まるのはPontaポイントのため、Pontaポイントの加盟店をあまり利用しない人はやや使いづらい可能性もありますが、仕組みとしては最もシンプルでおすすめです。
クレカを新たに作るのが嫌な人は松井証券の積立もおすすめ
投資信託の積立のために新たにクレジットカードを作りたくない、という人には、松井証券での積立もおすすめです。松井証券には、クレカ積立によるポイント還元の仕組みがない代わりに、「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス(https://www.matsui.co.jp/fund/fund-value-point/)」という制度があります。
これは、毎月エントリーをするだけで、松井証券の口座で保有している投資信託の残高に対して最大1%の松井証券ポイントが貯まるというもの。もちろんNISA口座も対象で、貯まった松井証券ポイントは投資信託の購入に使ったり、1ポイント=1円でdポイントなどとの交換に使ったりできます。
利用額やカード種別によって条件が異なるなど、クレカ積立は複雑さを増していますが、うまく使えば非常にお得な仕組みのため、最新の情報をよく調べたうえで、自分に合ったサービスを利用しましょう。
※サービスやポイント付与率などの情報は2024年6月現在のものであり、変更される場合があります。
◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん
節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
構成/新藤まつり