海外から輸入された原材料が明記されてない返礼品
さらに闇深いのは、海外から輸入された原材料を使っているのに、それが明記されていない返礼品だ。代表的なのは「そば」で、いくつかの返礼品を確認すると「小麦(国内製造)、そば」と表示されているだけで、産地は書かれていない。中村さんが解説する。
「原産地表示のルールでは、製品への使用割合がいちばん多い原料の産地のみを表示すればいいことになっています。『小麦(国内製造)』という表示から読み取れることは、そのそばの原料は、そば粉よりも小麦粉の割合が多いということと、その小麦粉は外国産小麦を国内で製粉したものだということ。そばが国産であれば、通常はうたい文句として特記するはずなので、書いてなければそばも外国産の可能性が高い」
実際に、産地表示は「小麦(国内製造)、そば」でありながら、「地元の水を使ったA県産そば」と銘打たれている返礼品を提供する自治体にそば粉の産地について尋ねたところ、次のような回答があった。
「そば粉は中国産を含め県外産を使用しています。『A県産そば』というのは、県内製麺したそばという意味です」
しかし、中村さんの見解はこうだ。
「紹介文の『A県産そば』という表現は、あたかも県内で栽培されたそばであるかのように印象させることから、景品表示法の優良誤認に該当する可能性が高いと考えられる」
この指摘を、返礼品を提供する自治体にぶつけたところ「総務省からも指摘を受けたことがなく、現時点では問題ないと考えている」との回答があった。
いずれにせよ、外国産のそば粉を用いた、小麦粉の割合の方が高い“ご当地そば”が返礼品として出回っていることは事実であり、専門家たちは今後さらなる状況の悪化を懸念する。
「『返礼品と経費の総額は寄付額の5割以下』というルールが昨年10月から厳格化され、多くの自治体では返礼品のコストを見直さざるを得なくなった。これにより、既存の返礼品でもひそかに原材料を外国産に切り替える動きが出てくると思われます」(垣田さん)
ふるさと納税はいま一度、「寄付」と「お礼」という制度の原点に立ち返るべきではないだろうか。
近年の主な「ふるさと納税」偽装事件簿
【2024年】
・うなぎ 愛知県西尾市
人気うなぎ店「炭火職人 うなみ」の運営会社が「三河産」として外国産うなぎを使用したかば焼きを店舗に訪れた客に提供していたことが明らかになり、「状況が不透明」であるとして、返礼品提供事業者の認定を取り消された。
・漬けもの 青森県青森市
「オカムラ食品工業」が漬けもの製品『ねぶた音頭』の原材料の大根について「中国産」を「国産」と表記したとして、農林水産省から再発防止策の実施などを指示された。
・豚肉や牛肉 鹿児島県志布志市
別の産地から仕入れた黒豚や黒毛和牛が返礼品として偽装されていた。仕入先である販売会社「谷川商店」は「豚は単価が合わなかった。牛は在庫がなくなったため別のところから仕入れることにした」と話している。
【2023年】
・シャインマスカットなど 長崎県諫早市
シャインマスカットやゆめのか(いちご)、グリーンメロン、長崎和牛切り落としなど4種8品目が「市内で生産されたもの」などとする総務省の基準を満たしていなかったことが発覚。基準外品の発送は約3万件にのぼる可能性があるという。
・鶏肉 宮崎県都城市
「宮崎県産若鶏もも」がタイやブラジルからの輸入肉だったことが発覚。偽装をしていたのは熊本県錦町の「ヒムカ食品」。「鳥インフルエンザの影響で価格が高騰して仕入れられなかった」としている。
・米など 佐賀県上峰町
返礼品として人気だったブレンド米『さがみのり』が一部県外の米を使用するなど、地場産品基準のルールから逸脱する疑いがあると総務省から指摘され、町は返礼品として今後取り扱わない考えを示した。ほかにもシャインマスカットや牛肉の産地偽装も発覚している。
・まぐろ 山口県山口市
水産加工会社「富士水産」が「インドネシア産」のキハダマグロを「国産」と表示したり、メバチマグロを使用したのに「黄肌鮪」とまぐろ加工食品に表示していた。漁獲量の低下や人手不足で漁船が出航できなかったことが影響し、ほかの商品に用意した原材料で代用したという。
・うに 北海道利尻町
「カネマス上田商店」が「ロシア産」のうにを使用していたにもかかわらず、原産地名に「利尻島産」と表記していた。「苦い」など品質に関する苦情が相次ぎ、町の聞き取り調査で発覚。
【2022年】
・しいたけ 沖縄県恩納村
しいたけを生産・販売する「沖縄しいたけ田中」が宮崎県で生産したしいたけを取り寄せ、沖縄県産と偽って県内のスーパーや道の駅で販売し、返礼品としても出荷していた。多い月で偽装は9割にのぼり、社長は「生産が追いつかなかった」と謝罪。
※女性セブン2024年8月8・15日号