日本人の2人に1人が罹患するがんだが、医療の進歩により確実に生存率は上がっている。実際に自分ががんと告知されたら、家族や大切な人にどう伝えるべきか。2016年にステージⅡAの乳がんと診断、手術を受けるもその後、再発した、お笑い芸人のだいたひかる(49才)は、夫のひと言に救われたという。
最初の乳がんを伝えたのはメールだった
日々のコミュニケーションツールとして定着したスマホ。だいたが夫に乳がんを伝えたのも、メールを介してだった。
「2016年に区民検診で右胸のしこりが見つかり、“人生終わった”と思いました。後日、マンモグラフィを受けて乳がんと告知され、まだ結婚3年目だったので私のせいで人生を振り回して、夫に申し訳ないという気持ちになりました。
ただ、告知される前から、検査の段階で“右しこりって言われた”などと逐次夫にメールで報告していたため、がんのことはスムーズに理解してもらえました」(だいた・以下同)
乳がんのステージ2Aを告知された日、夫は台所で「おれと結婚してから、ひかるは1つもいいことがない」とむせび泣いた。
そして治療の選択を迫られた際、夫は「再発の可能性が最も少ない全摘にしてほしい」と冷静に話し、だいたも同意して全摘手術を受けた。
■「歯石を取るようなもの」夫の支えで前向きに
ところが3年後の定期検診で再発が見つかる。「またしこりがあった。取ってみないと良性か悪性かわからない」と再びメールで伝えると、夫からのリアクションは速かったとだいたは振り返る。
「メールの直後に、夫が職場から電話をかけてきました。2度目のがんは局所再発という極めてまれなケースらしく、せっかく全部取ったのに……と落ち込む私に夫は“歯石を取るようなものだよ”と言ってくれて、そういう考え方もいいなと前向きになれました」
その後直ちに再発したがんを切除する手術を受け、食生活を改善し、運動を習慣にして5年が経過した。再発の不安がつきまとう中、支えになるのは夫の存在だ。
「私が不安を伝えると、夫は“再発を気にして生きるのはもったいない”と言います。確かにがんになると人生に終わりがあることに気づくけど、そこで再発や転移に怯えて暮らすより、明日はどんなおいしいものを食べようかと考えながら過ごす方がいいですよね」
治療を中断し挑んだ不妊治療の末、念願の妊娠
2度のがんを乗り越えたふたりは再発手術後に大きな決断をした。治療を一時的に中断して不妊治療を始め、過去に凍結保存しておいた卵子を用いて妊娠し、2022年1月に第1子を出産したのだ。
「治療を遅らせるとがんの再発率が上がると言われて本当に怖かったけど、可能性がゼロじゃなければ挑戦したかった。いまは子供が成人するまでは生きようという気持ちでいっぱいで、寿命を延ばすためならどんな方法でも試したい。
一度目に乳がんになって抗がん剤治療を始めたのが40才で、46才で子を産めたのだから、人間って何があるかわからないですよ」
がんになると、誰しも自分は運が悪かったと思い詰める。そんなときにこそ、話し相手が助けになるとだいたは語る。
「いまはがんの治療法も多く、かかっても絶望する必要はありません。家族に伝えたら一緒にがんばってくれるから、自分で抱え込まないで相談したり、不安な気持ちを伝えたりした方がいい。
いまは自分自身や家族、知人でがんを経験した人が本当に多く、相談相手はたくさんいるはずです。もし信頼できる家族や友人がいなくても、SNSでがん患者が心情を吐露できる集まりなどもあるので活用してほしい」
◆お笑い芸人・だいたひかる
1975年埼玉県出身。2002年、「R-1ぐらんぷり」初代チャンピオンとなりブレーク。2016年、ステージ2Aの乳がんと診断され、右乳房の全摘手術を受ける。2019年に再発し、再手術。https://ameblo.jp/daitahikaru-blog/
※女性セブン2024年9月12日号