健康・医療

《寝起きから疲れてる…》朝バテを解消するメソッド 「寝室の温度は18℃以上」「寝る3時間前には夕食を終える」「ベッドの中でスマホをいじらない」

朝バテ
《寝起きから疲れてる…》朝バテを解消するメソッドとは?(写真/PIXTA)
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夏バテならぬ「朝バテ」。どうにもテンションが上がらない響きのこの症状に悩まされている人が増えている。朝から心身の倦怠感を覚える「朝バテ」の原因は睡眠の質と量にある。よりよい睡眠で朝バテを回避し、QOL(生活の質)を上げる方法を伝授する。

あなたは大丈夫!? 朝バテチェックリスト10

「目覚めてしばらくは頭がぼーっとしてしまう」「寝つきが悪く、朝になると全身に疲れを感じる」「月曜日の朝が憂鬱に感じ、家事をする気が出ない」―寝起きのこうした疲労感について、加齢による症状とあきらめている人は多いだろう。しかし、その不調はもしかしたら「朝バテ」かもしれない。

朝バテとは、起きた直後から疲れを感じる状態を指し、根本的な原因は質の悪い睡眠とされる。

自分が朝バテかもしれない、と思った人は、まずは以下の10の項目をチェックしてほしいと言うのは、東京疲労・睡眠クリニック院長で医学博士の梶本修身さんだ。

【あなたは大丈夫!?朝バテチェックリスト10】

・朝起きたときに体に痛みを感じる。

・寝汗でパジャマが濡れている。

・二度寝してしまうことが多い。

・電車の中でうたた寝をよくする。

・起床して約4時間後に眠気を感じる。

・やる気が出ない、気分が沈みやすい。

・注意力散漫でミスが多い。

・ベッドに入ると5分以内に寝つく。

・体調を崩しやすい。

・休みの日に昼まで寝ていることが。

※取材をもとに本誌作成

【あなたは大丈夫!?朝バテチェックリスト10】
【あなたは大丈夫!?朝バテチェックリスト10】
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「ここに挙げた項目のうち、1つでも当てはまるものがあれば、朝バテに悩まされている可能性が高いと考えられます」

異常な寝汗は体からのサイン

朝起きたとき、首や肩、腰などに痛みを感じることはないだろうか。これは朝バテの典型で、体が悲鳴を上げているサインだ。睡眠の質の問題は言うまでもなく、枕やベッドなどの寝具が体に合っていないため、過度な負担がかかっている可能性もある。

「寝汗でパジャマが濡れているかたも要注意です。人は睡眠中に汗をかき、体温調節をしていますが、通常なら手のひらや足の裏から分泌されます。全身で大量の寝汗をかくのは、寝ている間に自律神経が酷使されているためで、その状態が続くと疲れがたまる一方なのです」(梶本さん)

また、二度寝してしまうことが多いのは、脳の神経細胞だけでなく体中の細胞が、もっと休息をとらせるようにとシグナルを出している可能性が高い。

ふとした瞬間にうたた寝をしてしまったり、やる気が出ずに気分が沈みやすかったり、注意力散漫になってミスが多いケースも要注意という。むさしクリニック院長で医学博士の梶村尚史さんも言い添える。

「日中にうたたね寝をすると夜に眠れなくなり、翌朝に倦怠感が残って悪循環に陥ります。睡眠不足が5日間続くと、不安や抑うつが強まるという研究もあり、朝バテを放置することは重大な病にもつながりかねません。

質の悪い睡眠は免疫力を低下させ、ウイルスなどに感染しやすくなる。また、肥満の原因にもなり、疾患リスクも高めます。朝バテを“単なる疲れ”と放置するのは危険です」

厚生労働省の調査によれば、一般成人の30〜40%、特に女性が何らかの不眠症状を有しているとされる。

梶村さんは「朝バテは、健康面は言うに及ばず、仕事や人間関係にも影響を与える厄介な問題」と続ける。

「朝がつらいと仕事や家事の最中にもだるさを感じますし、ストレスがたまります。すると、ますます寝つけなくなり、朝がつらくなる。

こうした悪循環から抜け出すためには、睡眠の改善を図り、すっきり目覚めることが大事。朝が楽になれば、ベストな状態で一日のスタートが切れます」

疲労因子を残さない

睡眠の質を低下させる原因には、睡眠時間の不足、眠りの浅さ、不規則な生活、そしてストレスの蓄積などが挙げられる。梶本さんがこう解説する。

「傷ついた細胞の修復を促進し、疲れをとる働きをもつのが疲労回復物質FRです。対して、疲れが蓄積しているときに体内にたまるのが疲労因子FFで、疲労を生み出すたんぱく質を指します。

睡眠中には疲労回復物質FRが疲労因子FFの働きを上回り、疲労が回復されていきます。ところが、質の悪い睡眠では疲労回復物質FRの働きが弱まり、修復できない細胞が残ってしまい、疲れがたまりやすいのです」

朝バテを解消することは、すなわち良質な睡眠をとることにもつながるのだ。これから紹介する朝バテ解消のメソッドを学ぶ前に、第一に実践すべき大原則があると梶村さんが言う。

「就寝と起床の時刻を一定にすることです。現代人は何かと、就寝と起床の時刻がばらばらになりがちですからね。また、人間は“寝だめ”ができません。二度寝などで無理に睡眠時間を長くすると、かえって睡眠のリズムがおかしくなってしまい、結局、朝バテを解消できません。まずは、決まった時間に寝起きすることから習慣づけるべきでしょう」

寝室の温度は18℃以上

朝バテを解消するためには、何から始めればいいのだろうか。梶村さんと梶本さんのアドバイスをもとに、24のメソッドにまとめたので参考にしてほしい。

梶村さんは、まず自宅の環境や日頃の習慣を少しずつ見直すことから始めてほしいとアドバイスする。

「睡眠時には、部屋の照明をできるだけ暗くしておき、外からの騒音などが少ない部屋を寝室にするのが効果的です。ベッドの横で、ゆったりした規則正しいテンポの曲を小音量で流すのもいいですね。おすすめはショパン、バッハ、モーツァルトの『子守歌』。ラベンダーやカモミールの香りを部屋に漂わせたり、アロマキャンドルを置くのもおすすめです」

クラシックなどのゆったりした心地よい音楽を小音量でかける
クラシックなどのゆったりした心地よい音楽を小音量でかける(イラスト/喜多啓介)
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アロマなど心地よい香りを部屋に
アロマなど心地よい香りを部屋に(イラスト/喜多啓介)
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快眠に欠かせないのは自分に合った寝具と、就寝前の部屋の温度が重要だ。

「WHOの調査によれば、寝室の温度が18℃より低くなると睡眠の質が悪くなり、血圧が高まって心筋梗塞などの生活習慣病のリスクもあるといわれます。

雪が降る北海道や東北地方は断熱住宅になっているので意外に室温が保たれていますが、西日本にはそうした仕様の家が少なく、室温が下がりやすいので要注意です。暖房などを上手に使い、18℃以上に保ってほしいですね」(梶本さん)

軽めの運動を毎日30分程度

日中の習慣にしたいのは運動だ。日中に体操、散歩、ストレッチなど、軽めの運動を毎日30分程度行う習慣をつけるといいだろう。デスクワークが多い人は、仕事帰りに一駅手前で降り、散歩気分で歩くのもおすすめだ。

一駅手前で降りて、なるべく多く歩くなど運動の習慣をつける
一駅手前で降りて、なるべく多く歩くなど運動の習慣をつける(イラスト/喜多啓介)
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忘年会などの会合が多い季節だが、夕方以降の食事のとり方にも注意したい。

「夕食の後、消化器官がしばらく働き続けるため、食事をとりすぎると興奮して眠りにくくなります。ベッドに入る3時間前には食事を終え、油の多いこってりしたものをとりすぎないようにしましょう。腹八分目に抑えることも大切で、栄養バランスのよい食事を規則正しくとるように心がけてください」(梶村さん)

就寝の3時間前までに食事を済ませる。こってりしたものは避けて
就寝の3時間前までに食事を済ませる。こってりしたものは避けて(イラスト/喜多啓介)
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嗜好品では、たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があるため、喫煙はベッドに入る2時間前までに済ませておくのがいい。アルコールには興奮作用があるため、過度な飲酒も控えるべきだ。

「また、コーヒーに含まれるカフェインは、覚醒作用が5時間ほど継続するとされているので、夕食後にコーヒーを飲むのは禁物です。ただし、朝、昼、午後の休憩時間などにコーヒーを飲むと、カフェインが抗酸化作用を発揮し、体調を整え、疲れを防ぐ働きをしてくれるのでおすすめです」(梶本さん)

スマホの光は快眠の大敵

入浴の際は、38~40℃くらいのぬるめの風呂にゆったりと入ろう。

「血行が促進され、熱が放出されて体の中心の体温が下がり、快眠できます」(梶村さん)

ぬるめの湯にゆっくりつかる。38~40℃が推奨温度(イラスト/喜多啓介)
ぬるめの湯にゆっくりつかる。38~40℃が推奨温度(イラスト/喜多啓介)
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また、深夜までテレビを見る習慣は、画面の光が神経を過剰に興奮させ、眠りを誘発するメラトニンの分泌を抑えるため控えるようにしたいものだ。

梶本さんは、ベッドや布団の中でスマホを使う習慣を改めてほしいと指摘する。

「私はスマホを必ず寝室とは別の部屋か、離れた場所に置くようにしています。スマホから得られる情報は興味関心を引き付け、寝る前に脳を活性化させてしまいます。したがって、布団の中でスマホをいじることは、不眠の大きな原因になり得るのです。ベッドは寝るための場所と心得て、寝ること以外の作業はしないようにしましょう。

心地よい眠りは、布団に入ってから10分くらいかけ、自然に眠りに入るのが理想です。30分ほど経っても眠れないときは、潔くベッドから出てください。部屋を明るくする必要はなく、間接照明で構いません。ソファに座ったり水を飲んだりして、気持ちをリセットしてみましょう」

明るい光を見ないようにする。スマホはベッドから遠い場所に
明るい光を見ないようにする。スマホはベッドから遠い場所に(イラスト/喜多啓介)
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カーテンを開けて太陽の光を浴びる

朝は毎日同じ時刻に目を覚ますように心がけ、カーテンを開けて太陽の光を浴びてほしいと、梶本さん。

「朝の太陽の光を目にした瞬間、精神を安定させる効果があるセロトニンが分泌されます。セロトニンは“幸せホルモン”と呼ばれ、感情の起伏を抑える働きもある。また、セロトニンには、“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンを生成する働きもあります。朝にセロトニンをたくさん分泌することが、質の高い睡眠を得るカギになるのです」

梶村さんは、“早起きは三文の得”ということわざは的を射ていると話す。

「マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツも早起きで有名です。早朝は脳の動きが活性化するため、細々とした事務処理や、集中力を要する仕事を片付けるにはもってこいなのです。

朝バテを予防、改善することで、仕事もプライベートも充実することは間違いありません」

体調を崩すことの多い季節の変わり目。朝バテを制することは、睡眠の質の向上、ひいては不調知らずの体を作ることにつながる。

朝バテを解消するメソッド24
朝バテを解消するメソッド24
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※女性セブン2024年12月19日号