2000万円なんて目指さなくていい
「貯めること」が目的化してしまうのは、ひとえに「不安」が原因だ。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは言う。
「いわゆる2000万円問題は“貯蓄も労働収入も1円もなく、年金だけで暮らさなければならない世帯”を想定しており、貯金や資産があったり、定年後も働いていれば焦って大きな額を貯める必要はないでしょう。また、高齢になってからは住宅ローンや教育費はかからないケースが多いことや、年金額も人それぞれ異なることなどは考慮されていません。“生涯でいくら足りないか”ではなく“1年間であといくら増やせばいいのか”を考えれば、そう不安になることはないはずです」(井戸さん)
一般的に、高齢になってから必要な生活費は現役時代の7割程度だといわれている。貯蓄額や年金額など、まずは「いまあるお金」と「これから必要になるお金」を把握することだ。
『75歳からの生き方ノート』などの著書を持つ著述家の楠木さんは、ノートに手書きで財産管理表をまとめているという(図参照)。
「財産の額とその増減を半年ごとに把握することで、暮らしを続けるための本当に必要な金額がわかります。20年後、30年後の将来に漠然とした不安を抱かなくて済むはずです」(楠木さん)
人生後半を見据え、私たちが直面する課題は「どう貯めて増やすか」ではなく、「どう使い切るか」だ。それがきっと、後悔のない最期につながるだろう。
※女性セブン2024年12月19日号