費用対効果が低いのに薬価は高いまま
新しい薬、古い薬をどう捉えるかも医師次第。同じことは薬だけでなく、治療方針にも言える。
「日本では診療に関するガイドラインが整備されており、標準治療というものが存在します。
このガイドラインは欧米に沿ってつくられているので、日本の標準治療は世界の標準治療から外れたものではありません。しかし、アメリカがすでに薬として認めなくなったものの利用が推奨されているケースもあります」
その結果、同じ病気であっても治療方針や薬が違い、かかる費用も違うという現状が広がっている。
「たとえば抗がん剤も、最近は分子標的薬と呼ばれる、がん細胞だけを狙い撃ちする薬が開発されていて、肺がんや乳がん、大腸がんなどで高い効果を発揮しています。こうした薬は、がん細胞も攻撃するけれど副作用も大きい従来の抗がん剤に比べ、体への負担が少ないので優先的に使われるようになっていくでしょう。
しかし、すい臓がんなどの難治がん、さらには再発がんなどについてはいまのところ有効な標的薬がないため、まだまだ従来型の抗がん剤が使われていくことになる。その場合、分子標的薬に比べて効果が出にくい費用対効果の低い薬がいつまでも高価なままでいいのでしょうか。薬として承認したままにするのだとしても、値下げをするという英断がもっとあっていいはずです」
命を蝕む病に襲われたとき、誰もが願うのは「効果的な治療、効果的な処方を行ってほしい」ということだろう。“誰のための薬”なのか、患者となる私たちもきちんと見極める必要がある。
※女性セブン2025年1月2・9日号