トラブルを完全に防ぐことはできない
認知症患者数は増加を続けており、2030年には500万人を超すと試算されている。認知症が招く相続トラブルは他人事ではなく、今後の急増が懸念されている。
遺言公正証書を作成済みでも、「トラブルを完全に防ぐことはできない」と話すのは、相続相談を手掛ける司法書士法人ABC代表の椎葉基史氏だ。
「前提として、遺言書が複数存在する場合、最新の日付のものが優先されます。仮に遺言を残す人が要介護状態にあり、認知機能に不安があった場合でも、公証人と証人が“問題なし”と判断すれば遺言書を作成できます。また、費用はかかりますが、何度でも作成できます」
極端な話、相続を受けるはずの人が知らないところで、第三者が新たな遺言書を作成することも可能なのだ。そんな事態を避ける対策として椎葉さんが挙げるのが「家族信託」だ。
「財産を家族に託す『家族信託』を事前に結んでおけば、その後、“第三者に信託の対象となっている資産を遺贈する”といった内容の遺言が書かれた場合でも、原則、家族信託が優先されます。知らないところで、書き換えられる心配がなくなります」
A氏に対してBさんは、遺言書の無効などを求める民事訴訟を提起するとともに、詐欺罪などで刑事告発する準備を進めている。
「伯母が体調を崩して入院したときも、Aさんは“後見人”を自称して面会を拒みました。押し問答の末に15分だけ顔を見ることができましたが、気丈だった伯母は、会えなくなった数年の間にやせ細り、別人のようでした。会話もできる状態ではなかった。母のように接してくれた優しい伯母との時間も奪われたと感じています」(Bさん)
高齢化が進むなか、相続トラブルは新たな局面を迎えている。
※女性セブン2025年1月30日号