鼻呼吸に導くセルフケア
鼻呼吸に導く最大のセルフケアは、日頃から会話や食事などの必要時以外は口を閉じ、舌を上あごにつけて鼻呼吸を意識して行うこと(会話中は口呼吸になるため)だ。ただし、睡眠時は自力では難しい。
「確かに寝ているときは誰でも筋肉が緩みます。しかも、あごの骨は1kgくらいあるので寝ると開きやすくなり、日中は鼻呼吸ができている人でも口呼吸になる場合が多いです」
中島さんが患者に指導しているのが就寝時のマウステーピングだ。これは閉じた口の中央をテープで留める方法で、口呼吸やいびき予防としてドラッグストアでも販売されている。
「テープで口を閉じることで、鼻呼吸を促し、舌の落ち込みも抑えられます。女性の患者さんの多くは、最初『私は口呼吸ではありません』と拒否しますが、『まず2週間やってみて』とお願いすると、『寝つきがよくなった』『夜のトイレの回数が減った』など、日常の不調が改善されたことで効果を感じるようです」
マウステーピング実施例
●Before
舌の表面に溝ができる「溝状舌」の女性(40代)。マスク生活であえて口呼吸をしていたそう。食べ物がしみて舌に痛みがあり、血糖値も高かった。
●After
中島さんの指導で、起きているときの鼻呼吸と就寝時のマウステーピングを続け、半年後に舌の状態は改善。血糖値も正常になったという。
専用のマウステープは高価なので、長く続けるためには300円ほどで買える医療用のサージカルテープで充分だと中島さんは言う。
「もともと肌に貼るものなので通気性もいいんです。ただし、5才以上で、自分でテープをはがせること、認知機能が著しく落ちていないことが条件。体調がすぐれない日はやめましょう」
テープを貼る際はあくまでも軽めが鉄則だ。
“舌トレ”として広く知られる「あいうべ体操」もおすすめ
“舌トレ”として広く知られる「あいうべ体操」もおすすめだ。
「舌の位置が安定し、誤嚥も防げます。1日30回が目標。食前に10回ずつ行うのもいいでしょう」
さらに、1日2回の鼻うがいを行うと上咽頭ケアにもなり、鼻の通りもよくなって日々の鼻呼吸が楽になる。
「通常のうがいでは上咽頭まで洗えませんが、鼻うがいなら届きます。インフルエンザが大流行中のこの時期は、必須だと思います」
「ふだんの呼吸」を正しい舌の位置で行う。これが健康への第一歩のようだ。
正しい鼻呼吸のためのセルフケア
【1】就寝時にはマウステーピング
サージカルテープ(ガーゼや包帯などを留めるための医療用テープ)を4〜5㎝の長さに切り、閉じた口の真ん中に縦に貼るだけ。肌に優しいタイプもある。唇にテープが直接つくのが嫌な場合は、別途テープを2〜3㎝に切って唇に当たる部分を貼り合わせるとよい。
【2】あいうべ体操
「あー」と口を大きく開き、「いー」と口を横に開く。「うー」と口をすぼませて、「べー」と舌を思い切り下に伸ばす。可能な範囲で大きく口を動かすのがコツ。「声を出さずに行ってもOKです。免疫力アップにもつながるので、感染症対策にもおすすめです」(中島さん)。
◆歯科医・中島潤子
なかじま歯科医院院長(長野県松本市)。歯学博士、経営学修士(MBA、マサチューセッツ大学)。「あいうべ体操」の考案者、今井一彰医師との共著に『世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング』(幻冬舎)、最新刊に『更年期の壁 あなたの不調は口呼吸が原因かも!?』(三和書籍)がある。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2025年2月6日号