健康・医療

《在宅ホスピス医が解説》長生きにつながる食生活と1日1分でできる簡単エクササイズ「あくび体操」

食事をする女性
長生きにつながる生活習慣を在宅ホスピス医が指南(Ph/photoAC)
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長生きのためには、健康にいい食事をし、こまめに運動をして、夜はしっかり眠らなければならないと思いがちだが、無理して続けようとすることはむしろストレスの一因となる。そこで、我慢をしすぎないほうが健康にいいと話す『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)を上梓した在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さんに、無理なくできる長生きするための生活習慣について教えてもらった。

食事は腹八分目まで

小笠原さんは、食事に関して、我慢をせずに好きなものを食べたほうがストレスがたまらず、健康にいいと話す。とはいえ、いくら好きなものでも食べすぎは体に悪いため、腹八分目を習慣にすることをすすめる。

「食事に感謝をして、おいしく味わうと、食べ過ぎを防ぐことができます。これは、『腹八分で医者いらず』という言葉どおり、長生きの秘訣でもあるのです」(小笠原さん・以下同)

基本は和食がおすすめ

具体的にこの食材を食べるべき、というものはないものの、「日本人には、和食が体に合っている人のほうが多いように思います」と小笠原さん。実際、日本人のがんの増加の原因として、食生活の欧米化が指摘されることもある。和食を基本としつつ、自分の体質も考慮して、好きなものを食べるようにするのがおすすめだという。

和食
長生きするなら和食をチョイス(Ph/photoAC)
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「夏にはきゅうりやとうもろこし、しそ、そして冬にはねぎやごぼう、大根というように、新鮮な旬の食材を和食では使います。季節感があり、自然の恩恵を感じられる和食を目の前にすると、感謝の気持ちも湧いてくるはずです」

食事は栄養より幸福感

世の中には、健康のためにこれを食べるべき、これは食べてはいけない、といった情報が多く出回っている。しかし、健康に細かく気を遣った食事をしていても病気になることはあり、管理をしすぎるとストレスもたまるため、小笠原さんは自分が「おいしい」と感じられる食事を優先することをすすめている。

「食べることは、人生の楽しみの1つです。そのときに食べたいものを、じっくりと味わいながら食べてほしいと思います」

少しでも口から食べる

病気のとき、食事をほとんどせず、点滴で栄養をまかなおうとすることがあるが、小笠原さんは在宅医療を行う場合、むしろ輸液のカロリーを減らすという。輸液のカロリーを減らすと、患者は自然とお腹が空き、口から食べられるようになるためだ。

口から食べると唾液が分泌され、消化を助けたり免疫力を高めてくれたりするうえ、口から胃へと食べ物が移動することで消化器全体が動き始め、老廃物の排出にもつながっていく。

「ほんのわずかな量でも口から食べることで、食欲が湧いてきます。これが生きる意欲につながります。口で食べられることの喜びについて、健康な人もぜひ見直してほしいものです」

あくび体操とは?

運動に関しても、小笠原さんは無理して行うことをすすめていない。小笠原さんがすすめているのは、両手をゆっくりと高く上げ、胸いっぱいに空気を吸い、あくびをするときのように「あ~あ」と声を出して、両手を左右に下ろす「あくび体操」というものだ。あくび体操は、血圧を安定させて心臓への負担を減らすのに非常に効果的なのだという。

「皆さんも経験があるでしょうが、『あ~あ』とあくびをすると、リラックスします。こうして血管が広がると血圧が下がり、心臓への負担が減るのです」

あくび体操のやり方

【1】両足を肩幅に開いて、背筋を伸ばして立ち、両手は力を抜いて下ろす。
【2】両手を前からゆっくりと高く上げ、大きく胸いっぱいに空気を吸う。
【3】口を大きく開けて「あ~あ」とあくびするように声を出し、胸を張って両手を左右に下ろす。
【4】【1】~【3】をもう1回繰り返す。

あくび体操
あくび体操のやり方(Ph/『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)より)
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「あくび体操は1セット2回、1日3セット行うのが目安ですが、何セット行ってもかまいません。注意が必要なのは、食事中にむせやすい人です。食後すぐにあくび体操を行うと、せき込んだり苦しくなったりする可能性もあるため、空腹時に行うようにしましょう」

あくびの代わりに「ワッハッハ」と笑うのもおすすめ

あくび体操では空気を吸ったあと、「あ~あ」と声を出すが、その代わりに「ワッハッハ」と笑いながら胸を反らせるのもおすすめだ。ほがらかな気分になれるうえ、猫背の改善も期待できるという。小笠原さんは5回程度、胸を反らせるのをすすめている。

「あくび体操とワッハッハ体操をすると、効果バツグンです。それぞれ、1日3セットすると1分です。1日1分で人生が変わります」

眠れるときに眠る

睡眠に関しても無理は禁物だ。よく眠ることで痛みの感受性が抑制され、痛みが和らぐため、在宅ケアでも睡眠は重視されるが、年を取ると徐々に眠りづらくなってくる。そこで、小笠原さんがすすめるのが「眠れるときに寝る」こと。

ソファで眠る女性
無理せず眠れるときに眠る(Ph/photoAC)
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小笠原さん自身も、必ずしもベッドの上で寝るわけではなく、食事の後にクッションのうえでうたた寝することもあるという。2~3時間程度で目が覚めるため、「あくび体操」をしたり、乳酸菌飲料を飲んだりして時間を過ごし、眠くなってきたらベッドで眠るそうだ。

「『2回眠れたら、それでよし』として、睡眠の長さや深さは気にしません」

健康を気にしていると、あれをしなければ、これをしなければと思いがちだが、大切なのは無理や我慢をしないこと。無理をしない程度に食事や運動、睡眠について気を配ることが笑顔で長生きする秘訣と言える。

袈裟を着た男性
在宅ホスピス医で僧侶の小笠原文雄さん
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◆教えてくれたのは:在宅ホスピス医、僧侶・小笠原文雄さん

おがさわら・ぶんゆう。医学博士。浄土真宗大谷派聖徳山伝法寺住職。日本在宅ホスピス協会会長。医療法人聖徳会 小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。名古屋大学医学部卒業後、同医学部附属病院第二内科を経て小笠原内科を開院。医師として約2500人、僧侶として約500人の死を見つめる。著書に『大往生のコツ ほどよくわがままに生きる』(アスコム)など。https://ogasawaraclinic.or.jp/staff

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