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【老後資産についての家族会議】もっとも考えるべきことが多いのは“家” 相続税対策なら“親子で同居”も視野に、“最期の住処”は「安心」と「費用」を比較して判断

相続税対策を含め、考えるべきことが多いのは家である(写真/PIXTA)
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老後を支えてくれる家族ほど、貴重な存在はいない。だからこそ、早い段階で老後資金について家族と話しあい、資産を把握しておくことで、さまざまな負担を軽減することもできる。そして、資産のうち、もっとも考えるべきことが多いのは「家」にまつわることだという。

話し合っておくべき「同居か、別居か」

夫に先立たれた場合、子供が自宅の所有権を相続しても妻はその家に住み続けられる「配偶者居住権」のほか、相続税には最大1億6000万円までの配偶者控除があり、また配偶者間なら評価額2000万円までの自宅は非課税で贈与できる通称「おしどり贈与」などもある。家族会議で考える必要があるのは、親から子への家の贈与や相続について。特に時間をかけて話し合っておく必要があるのが「同居か、別居か」。

実家で同居していると、相続の際は評価額が最大8割減になる「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税対策になるなど、メリットもある。ベリーベスト法律事務所の弁護士・田渕朋子さんが解説する。

夫に先立たれ妻は自宅に住み続ける場合「配偶者居住権」や「おしどり贈与」などもある
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「親と同居していると、そのまま介護した場合に相続人なら『寄与分』、子の配偶者など相続人でない人でも『特別寄与料』と、金銭的に補填される場合があります。

ただし特別寄与料が認められる時間的な要件は厳しく、家庭裁判所への申し立て期間も『相続の開始および相続人を知ったときから6か月以内、相続を知らなかった場合も相続開始から1年以内』と短い」

近年は、同居ではなく近居の場合にも自治体から補助金が出るケースもある。とはいえ、いくらメリットがあっても、同居はハードルが高いと感じる人も多いだろう。行政書士でファイナンシャルプランナーの松尾拓也さんが語る。

「金銭的なメリットよりも、お互いに生活を共にできるかどうかを重視して話し合ってください」(松尾さん・以下同)

共有名義はできるだけ避けるべき理由

親との同居、子供たち家族との同居だけでなく、「いつまで自宅に住むのか」も話し合っておきたい。施設は高いと考える人も多いが、自宅のバリアフリー化、訪問医療や介護にかかるお金を試算すると長い目で見れば施設と同じくらい費用がかさむこともある。

住み慣れた自宅で最期を迎えたいと考える人は多いが、晩年の生活の質を保つには、高齢者施設に入居する方がいいケースもあるのだ。

高齢者施設に入居する場合は家族と一緒に見学することがおすすめ(写真/イメージマート)
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「大切なのは、本人がどんな生活を望むかです。生活保護を受けながらでも入居できる施設はあるので、お金がかかるというイメージだけで判断しないでほしい。とはいえ、親が施設に入る際は子供から言いだす場合が多いようです。実際に住むのは親なので、元気なうちにしっかりと希望を話し合い、施設の雰囲気や食事など、自分に合う施設かどうか、家族と一緒に見学することをおすすめします」

そうして自宅が空き家になったら誰が引き継ぐのか、あるいは壊すのか、売るのか。そうした自宅のしまい方まで話し合っておいてほしい。

「きょうだいで過ごした思い出の家だからなどと、共有名義にするのはできるだけ避けるべき。売却するにも人に貸すにも名義人全員の同意が必要なので、何をするにももめやすく、トラブルのもとになります」(田渕さん・以下同)

「いずれ施設に入居したら自宅はいらなくなるから、子供に生前贈与しよう」といった安易な決断は要注意。

「処分に困りそうな財産は、もらった側も困ることが多いもの。子供や孫に丸投げするのではなく、自分がまだ元気なうちに評価額のチェックや測量などを済ませておきましょう。後々処分に困ることがわかっているなら、元気なうちに自分で売却してお金に換えてしまう方がよほどスムーズです」

老後資金の不足額チェックシート
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※女性セブン2025年2月20・27日号