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《どうしても”沼男”に沼ってしまうあなたへ》元祖カリスマホスト・城咲仁が語る対処法「暇とときめきを勘違いしてません?」

「歌舞伎町ナンバーワンホスト」として活躍後、芸能界デビューしメディアに引っ張りだことなった城咲仁さん。
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NHK大河ドラマ『べらぼう』では瀬川(小芝風花)との“禁断の恋”を熱演し、反響を呼んでいる蔦重役の横浜流星。実は彼、昨年末のABEMAオリジナルドラマ『わかっていても the shapes of love』でも“禁断の恋”を演じ、話題を集めたばかり。といっても前者は身分違いの恋を貫こうとする不器用な男で、後者は思わせぶりで一度ハマったら抜け出せない“沼男”と、性格は真逆……。そこで本記事では、よりやっかいな“沼男”について、その生態と対処法を元カリスマホストの城咲仁さんに解説してもらいました。

自己肯定感の低さは“恋愛ごっこ”では埋まらない

──一度ハマったら抜け出せない、もがくほど沈んでいくことから、ある対象に夢中になる現象を“沼る”といい、そうさせてしまう男性は“沼男”と呼ばれます。ホストはある意味その道のプロだと思うのですが、城咲さんが知る“沼男”の特徴を教えてください。

「まず、いまから20年ほど前のぼくらといまのホストたちの“沼らせ”は全然違う、というのをお伝えしたいですね。
ぼくらの時代、ホストクラブはアミューズメントパークであり、接客はエンターテイメントだと思っていたので、お客様が現実を忘れて楽しんでいただけるような接客を心がけていました。

経営者クラスの女性も納得していただけるようトークやダンスを学び、お客様の日々の会話を覚え、清潔感ある一流のスーツで身なりを整える。もしお客様が距離を詰めてきても上手にかわしながら、手に入りそうなのに入らない疑似恋愛で沼らせてきました。

一方いまのホストたちは接客の仕方がわからないので、『かわいい』とか『好きだよ』と言って自ら口説きにいく。そうして体の関係を持って、恋愛対象として沼らせることでお金を使わせようとしている。シャンパンコールをするようになったのはトークで盛り上げられないからだし、スーツを着なくなったのは店の外で会ったとき恋人っぽく見せるため。かつて“大人の社交場”だったホストクラブは“推し活の場”になっているんです」

『クラブ愛』に入店してほどなく、店の顔となった。
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──昔は“接客”で、いまは“ガチ恋愛”で沼らせようとしている、と。

「そう。だけどガチ恋愛でホストに沼っている女性たちでも、心底そのホストに惚れているかといえば、惚れていないと思うんですよ。彼氏がいない、ほかにやることがない、男友達もそんなにいない。自分磨きをすればいいのに、そこにはエネルギーが向かわず、『彼をランキング入りさせる』という行為そのものに自分の存在意義を感じているんじゃないかなと思いますね。

そのために買春もしてしまうというのは、彼女たちの自己肯定感が低いことが原因だと思います」

──そうした“ホス狂い”は社会問題化していますが、一般社会でも“沼男”は存在すると思います。彼らの特徴は?

「昔はジゴロと呼ばれるような、半分頭脳派プレイみたいな人もいたと思いますけど…どうなんでしょう、単なるダメンズがほとんどなんじゃないでしょうか(笑)。男性が女性の母性につけこんでいるだけなのに『私がいないとこの人だめなの』って、女性は美化しすぎなんじゃないかな。女性がイマジネーションを働かせて、勝手にやりとりに深さや意味を感じているパターンも多いと思います。

最近も知り合いの女性から、彼からLINEの返信がないことに『私が何かしちゃったのかも…』と悩みを相談されたんですけど、いやいや、違う。相手は何も考えてないだけ。だから『返事がないのはちょっと腹が立つってラインしてみたら?』ってアドバイスして彼女もその通りにしたら、すぐにごめんって返事が来たそうです(苦笑)。こういう事例を山ほど見てますね」

自分の存在意義は自分で決める

恋愛において、相手に真摯に向き合う姿勢は昔から変わらないという。
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──ただ、昨年末大きな話題を呼んだ横浜流星主演のドラマ『わかっていてもthe shapes of love』では「傷つくとわかっていても愛に手を伸ばしてしまう人間の衝動」がテーマだったそうです。そういう恋愛感情のやきもきが“沼る”といえませんか?

「う〜ん、ドラマはドラマでいいとして、実社会でどうかというと…それってただ未熟なだけと思うんですよね。男性は男性で何も考えていないのは幼いし、女性も女性でその人を通さないと自分の存在価値を見つけられないのは成熟していない証だと思うんです。もっと自分に自信やプライドやアイデンティティがあれば別に相手を追う必要がないし、連絡がなくても堂々としていると思う。

そういう意味では世の不倫も、配偶者や子供が相手にしてくれなくなって自分に自信がなくなり、だから不倫に沼ってしまうというパターンが多い気がしますね」

──ではそんな“沼る”への対処法はあるでしょうか。沼男へ何か目を覚まさせる一言だったり、沼ってしまう女性への心構えなどあれば。

「沼男と呼ばれるただのダメンズだったら、まず無理でしょうね。相手は誰かに何かを言われたことで変わることはないでしょう。じゃあどうするかといったら、やっぱり女性側、自分が変わるしかない。

たとえば連絡が取れなくても、ブレないことです。直前までやりとりしていたのに突然既読スルーされたら、ちゃんと怒った方がいい。なんで返事しないの? 大人として返すべきでしょって。それで離れるような奴なら人間性がよろしくないので、むしろここでふるいにかけるべきだと思います。

それと、どんなに相手を好きと思っても、自分を安売りしないこと。家に呼ばれてすぐ行く、夜中の電話にすぐ出るのは“いつでも手に入る女”認定されてしまいます。相手に主導権を渡すのではなく、自分をしっかり持った方がいい。

だって時間は有限じゃないですか。1回の人生なのだから、恋愛だけに振り切るんじゃなくて、趣味でも仕事でも自分にとって絶対に大事にしたい時間を持っている女性の方が魅力的だと思うんです」

現在はテレビ通販アドバイザーとして企画から開発まで携わり、外部からの依頼で講師を務めることも。
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ぼくの沼は…

──となると、城咲さん的にそもそも“沼る”って良いこととは思わないですか?

「というより疑問なんです。なんなんですかね、いまの『沼ろう』『推し活をしよう』みたいな風潮。ときめかないと、女性として男性として、枯れてしまいそうで怖いんでしょうか。

だって、沼るって時間も労力もかなり奪われるじゃないですか。やることが多くて忙しい人はなかなか沼る暇がないと思うんですよ。もちろん自然にときめいてしまうことは否定しません、恋愛体質のかたもいると思いますし。でもいくら出会いが多い人でも一日中考えてしまうほど好きな人にそんなに連続で出会えるのかなと。

常に誰かを追いかけて沼るという感覚が、強引に“満たされているふう”を装っている気がしてしまうんです。本当は暇だから誰かを追いかけてるのに、それをときめきと勘違いしてませんかって思ってしまう」

──ちなみに城咲さん自身は、沼った経験はあるのでしょうか?

「ありますよ(笑)。奥さん(俳優・タレントの加島ちかえさん)と出会う前、人生で2回大失恋しているんですけど、かなり引きずりましたね。もともとぼくは恋の駆け引きが得意じゃなくて、恋愛が始まる前にきちんと告白して付き合うし、交際中はずっと一筋。毎日連絡は当たり前で、飲みに行く前後で報告するタイプ。だからこそ失恋が重かったですね」

──沼ったお相手はどんなタイプだったんですか?

「ふたりとも自分の時間を大切にしていて、嘘をつかなくて、曲がったことが嫌いな人。ぼくが間違ったことをしているとちゃんと注意してくれる、ブレない人でしたね。その点、最強のブレない女性は奥さんかもしれない。一回り下の彼女ですが、説教がそりゃあもう怖い(笑)。でもぼくのためを思って言ってくれているのがわかるので、好きとか大事にしようという気持ちが蓄積されていきます。やっぱりお互い沼るのが理想だと思いますね」

 

◆城咲仁(しろさき・じん)
1977年生まれ、東京都出身。タレント。21才のとき入社2か月で歌舞伎町のホストクラブ『クラブ愛』でナンバーワンホストとなり、5年間その座を維持。2005年、タレントに転向。プライベートでは2021年に結婚。現在はメディア出演のほか、夫婦のYouTubeチャンネル『ジンチカちゃんねる』の運営、講演活動など多岐にわたり活躍。詳細はオフィシャルサイトで。

取材・文/辻本幸路

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