《失明に至るサインかも》頭痛、吐き気、目の奥がズキズキ…放置すると危険な症状を眼科医が解説「緑内障は初期に自覚症状が出ないため、40才超えたら定期的に検診を」

「あれ、なんだか見えにくい」――。その違和感を「老眼が進んだのかしら」「年だから」とそのままにしてはいないだろうか。目の病気は自覚症状に乏しいことも少なくなく、いざ症状が出たら時すでに遅く、最悪は失明に至るというケースもあるので侮ってはいけない。愛する家族やペット、推し、美しい景色――。一生自分の目で見ていたいと思いませんか?
自覚症状がほとんどないケースも少なくない
パソコンやスマートフォンが生活の一部となり、目が常に酷使される中で、疲れ目や眼精疲労など不調を感じる人が増えている。加えて、年を重ねれば老眼など自然と目が衰えていく。だからこそ、見えにくさや目のかすみを覚えても「疲れているのかな」「もう年だし」と放置してしまう人は少なくない。しかし、急に片目が見えなくなったり、目の奥がズキズキと痛むなどの異変を感じたら要注意。白内障や緑内障など、深刻な病気の兆候であることもあり、最悪の場合は失明につながりかねない。恐ろしいのは自覚症状がほとんどないケースも少なくないことだ。
神奈川県に住むAさん(58才)が自身の経験を語る。
「時々見えにくくなることがあったので、ものもらいで眼科を受診した際に医師に相談しました。眼底検査をすると、なんと緑内障。このままだと完全に失明していたと言われ、ゾッとしました」
失明につながる病気は早期発見と早期治療が欠かせないと、経堂こうづき眼科・経堂白内障手術クリニック院長の上月直之さんが言う。
「失明の原因でもっとも多い緑内障は、視神経が傷んでしまう病気なので、早期に治療しなければ治すことが難しいのです。目に異変を感じたら、ためらわずに眼科を受診するべきです」
緑内障は40才以上の約20人に1人が発症するとされる。また、糖尿病が原因で網膜の血管が傷つき、視力が低下していく糖尿病網膜症も失明の原因として挙げられることが多い。
「これらの病気はゆるやかに進行するため、自覚症状が出にくい。それは、目は片方の視野が欠けるともう片方で補おうとするためで、緑内障の場合は急に目の調子が悪くなることがあまりありません。そのため、眼科で検査してはじめて緑内障と判明することが多いのです」(上月さん)
失明のサインは体のあちこちから
気をつけたいのは、発症後、数時間以内に治療すべき病気があることだ。二本松眼科病院副院長で眼科専門医の平松類さんは、以下に挙げる異変が見られたら、一刻も早く眼科を受診してほしいと説く。
「何の前触れもなく、片目が見えなくなってしまうことがあります。疲れているのかなと思って、気にとめずに寝てしまう人がいますが、これは網膜動脈閉塞症という目の血管が詰まってしまう病気のサイン。発症から6~8時間以内に治療をしなければ、失明してしまう可能性が高まります」
50〜60代の女性に多く、注意すべきは急性緑内障発作のサインだ。
「眼球の圧力が急激に上昇する病気で、目の痛みや頭痛が起こったのち、吐き気、嘔吐などの症状が現れ、さらには目がかすんで見えるようになります。この病気は体のあちこちで異変が生じるため、目の不調と気づきにくい。目の奥が痛むので頭痛の一種と思って脳外科を受診したり、嘔吐後に胃の調子が悪いと勘違いして胃腸科に行きがちです。そうこうしているうちに、手遅れになることもあります」(平松さん)
女性は男性と比べて眼球が小さく、目に栄養を送る房水の流れが滞りやすいためだという。平松さんは「あたたかい涙」が流れたら危険だと続ける。
「眼球破裂を発症している可能性があります。眼球が破裂すると眼球内の内容物が流れ出てしまい、これは体温に近い温度です。目に強い衝撃が加わったり、異物が入ることで起こりますが、6時間以内に対処しなければ失明の恐れがあります」
目の前に蚊が飛んでいるような黒い点が見えることから命名された「飛蚊症」にも警戒したい。上月さんがこう指摘する。
「飛蚊症は加齢とともに悪化することが多いのですが、問題なのは、目の内側にある網膜が剝がれてしまう網膜剝離だったケースです。網膜剝離が起きると、視野が欠けるなどの違和感が出た後、だんだん見えづらくなってきます。
それでも生活はできますから、仕事が忙しくて病院に行く時間がないといって、放置する人が少なからずいます。しかし、発症から時間が経てば、手術をしても視力が戻らないことがあるのです」
飛蚊症も“年をとればよくあること”だと放置してはいけないのだ。

失明を予防するためには、原因となる病気の予防が重要だ。上月さんは、生活習慣病につながる生活の改善からはじめてほしいと提案する。
「糖尿病網膜症はその名のとおり、糖尿病の予防が必須で、適切な食事と運動が必要です。また、網膜動脈閉塞症は、高血圧などが原因で血管が詰まってしまう病気ですから、塩分やコレステロール、脂質の摂りすぎを防ぐことが大事です。
生活習慣病を意識して生活すれば心身が健康になるだけでなく、目の健康にも効果が大きいといえます」
大きないびきは緑内障リスクに
緑内障は運動や睡眠を改善することで、発症のリスクを軽減できるという。
「週に3回、30分の運動を繰り返せば、緑内障を予防できるとする研究があります。ジムなどでルームランナーで走るよりも、屋外を散歩する方が効果的。散歩中はなるべく遠くを見る習慣をつけて、目を鍛えるトレーニングを行うとよいでしょう。
また、睡眠時無呼吸症候群を患い、大きないびきをかくかたは緑内障になりやすいといわれます。ダメージを受けた視神経は、睡眠中に修復されていきます。ところが、息が止まっている間、体内に供給される酸素が少なくなると、回復が遅れてしまうのです。1日あたりの睡眠は6~9時間ほど確保し、目を休めるようにすべきですね」(平松さん・以下同)
酷暑の季節、水分の摂取の仕方にも注意すべき点があるという。
「水やジュースを一気飲みすると急激に眼圧が上がってしまい、中高年の女性は急性緑内障発作を引き起こすリスクが高まると考えられています。水分を一度に大量に摂ることは控え、コップ1杯程度の水を何回かに分けて飲むようにしてください」
異変に気づきにくい緑内障や糖尿病網膜症を早期発見するには、眼科で定期検診を受けるのが近道。上月さんが言う。
「医療技術の進化はめざましく、目の病気の多くが簡単な検査で発見できます。特に緑内障は初期に自覚症状が出ないため、40才を超えたら眼科のかかりつけ医を持っておき、定期的に検診を受けるのがよいと思います」
人は83%の情報を視覚から得るという。かくも重要でかけがえのない目は、ささいなサインを見逃さないことで守れることを肝に銘じておきたい。
※女性セブン2025年7月17日号