
2023年10月8日に74才でこの世を去った谷村新司さんについて、3回忌を前にして複雑な声が上がっている。仲の良かった友人でもお墓の場所がわからないばかりか、実の姉も谷村さんのお墓や遺骨について、「何も知らされていない」と語り、困惑しているのだ。ひた隠しにされた国民的歌手の“現在”をたどる。【前後編の後編】
谷村さんの人生を語る上で、5才年下の妻・A子さんの存在は欠かせない。
「谷村さんがA子さんと出会ったのは、まだアリスがヒット曲に恵まれていない1975年頃。谷村さんの一目惚れで、出会って1週間後の初めてのデートのときにプロポーズし、それから2年半後に神戸の教会で結婚式を挙げました。結婚翌年には長男、1980年には長女に恵まれました。さらに、A子さんは子育ての傍ら、谷村さんの個人事務所の社長として、長い間彼を支えてきたんです」(芸能関係者)
妻であり母であると同時に、A子さんは名プロデューサーでもあった。
「妻だから社長を務めているというわけではなく、A子さんはビジネス感覚も持ち合わせていました。音楽関係者やメディアの人間との交渉の場に、自ら出ていくこともあったといいます」(前出・芸能関係者)
時には谷村さんの“ブレーキ役”として機能した。2004年、コンサートツアーを行うなど精力的に活動していた谷村さんは、帯状疱疹を発症。酷使してきた体が、55才で悲鳴をあげた。
「そのとき、A子さんは事務所の社長として、妻として休養することを提案したそうです。コンサートのため1年の半分を地方で過ごしていた谷村さんは、何もすることがなくなり最初は戸惑ったそうです。しかし、家族とゆっくり過ごす時間に喜びを見出すようになりました」(前出・芸能関係者)
公私にわたり谷村さんを支えたA子さんは、谷村さん亡き後も「功績」を守り続けている。今年4月には個人事務所の体制変更が行われ、長年の取締役が辞任したが、彼女は事務所社長として残り、谷村さんの音楽的遺産の管理や版権の取り扱いを担っている。
「谷村さんの“現在”がここまで秘密にされているのには、A子さんの意向が大きいようです。その背景には、複雑な家族事情が影響しているのだと思います」(音楽関係者)
前述したように、谷村さんには2人の子供がいる。
「谷村さんは娘さんを溺愛していました。会話がなくても心が通じ合うんだと、自慢げに話していたほどでした。娘さんは谷村さんと同じ音楽の道に進み、イベントに揃って登壇したりテレビ出演したこともありました。ただ、いつしか細かなことを谷村さんに干渉されるのを嫌がるようになり、娘さんが結婚してからは実家によりつかず、音信不通状態だったこともあったそうです。芸能界からもすでに離れています」(前出・音楽関係者)

一方の長男も、谷村さんの事務所に所属するアートディレクターとしてCDジャケットのデザインを手掛けたりしていた。2010年に結婚した長男に初孫が誕生すると、谷村さんは?を緩めていた。
「ところが、息子さんは2017年に警察が介入するトラブルを引き起こし、事務所から名を消しました。以降、谷村さん夫妻と絶縁状態だったといわれています。
それまで息子さんは、家賃月100万円のタワーマンションで暮らしていたそうですが、心機一転を図って転居。それでもほどなくして離婚しました。その後引っ越しを繰り返し、現在は都内の家賃数万円のアパートで暮らしているそうですが、関係者で連絡を取れる人はほとんどいません。谷村さんの葬儀にも、呼ばれることはありませんでした。
A子さんは、実の息子でも関係修復が不可能になるくらいわだかまりを抱えてしまうこともあるということを実感しているようです」(前出・音楽関係者)
谷村さんが他界し、A子さんはすべてをひとりで背負わざるを得なくなった。
「多数の名曲の音楽著作権を管理しているということは、大きなお金も動きます。夫の遺産を守るためにどんどん他者と距離を置いているようにも見えます。お墓や遺骨、三回忌法要について親族にも伝えないという対応は極端にもみえますが、A子さんにとっても、やむにやまれぬことなのかもしれません」(前出・別の音楽関係者)
「広くお知らせはしません」
A子さんの意向によってごく一部の関係者以外にはひた隠しにされている谷村さんの墓は、関東近郊のある寺にあるという。
「墓石が並ぶ一般的な霊園ではなく、一般の人が自由に足を踏み入れることはできない、特別な納骨堂のような場所だと聞いたことがあります。おそらく、場所を知っているのは、ほんの数人。10人もいないんじゃないかな」(谷村さんの知人)
A子さんは前述したような理由で、谷村さんの“眠る場所”として、ここを選んだのだろう。9月中旬、A子さんに話を聞いた。
─—お墓や遺骨について関係者や親族に知らせていない?
「そうですね……いまの段階ではしてないです」
─—それは生前の谷村さんの遺志?
「いや、特にそういうわけではないです」
──三回忌法要は?
「これからですが、広くお知らせはしません」
言葉の端々から、A子さんの複雑な気持ちが伝わってくる。三回忌という節目を迎えるいま、谷村さんの音楽を、A子さんは変わらず守り続けようとしている。
※女性セブン2025年10月9日号