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「一生通い放題」エステ脱毛、東京都が入りローン被害を解決、クレジット請求免除で決着、勧誘され契約した若者21人が申し立て、東京都が紛争経緯を公表

「一生通い放題」と説明され契約したが…(写真/イメージマート)
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 2025年9月、東京都が2024年10月に検討を開始していた「エステ脱毛ローン問題」で、紛争解決に至ったことを公表した。

 HIFU(高強度焦点式超音波治療、ハイフ)の無料体験をきっかけに、エステ脱毛の施術を勧められ、「一生無制限」などの言葉に載せられて契約した後に、店舗が閉店し、施術を受けられなくなった人たちが東京都に救済を求めて申立をしていた。

「一生通い放題」と説明、実際は「1年6回」

・トラブルの経緯→無料体験後、「一生通い放題」と説明され契約するも、契約書は「1年・6回」限定。1年後にエステが閉店し、連絡不能に。
・委員会の判断→「一生無制限」は不実告知に当たり、特定商取引法での取消しが可能。さらにクレジット契約書の不備によりクーリング・オフが成立。
・合意内容→代表者不明のためクレジット会社と交渉し、「申立人は返金を求めず、クレジット会社は残債請求を行わない」で合意。

 ヒフコNEWSでも2024年10月に伝えているが、トラブルは次の通り。2024年10月の報告時点より、申立人数が1人減っている。

・申立人→10代~20代の女性 21人
・契約内容→平均契約金額は約58万円の全身脱毛エステ契約
・勧誘経緯→友人の紹介でエステの無料体験に参加後、全身脱毛エステのコースを勧められた
・割引内容→学割で45万円に割引され、ボディとフェイシャルのセルフエステがセットと説明された
・契約時の説明→担当者から「契約書には書いていないが、一生無制限で通える」と説明され、契約を決断
・支払い方法→36回払いの個別クレジット契約を結び、支払総額は平均約57万円
・確認の電話→クレジット会社から契約内容確認の電話があり、「エステ契約で間違いない」と返答
・施術提供の停止→全身脱毛やボディ・フェイシャルエステを10回受けた後、事業者から「施術が提供できなくなった」と連絡
・連絡不通→その後、エステ店と連絡が取れなくなり、消費者センターに相談
・クレジット会社の対応→クレジット会社に請求停止を求めたが、請求は止められないと回答された
・契約解除の要求→「一生通える」という説明と異なるため、契約の解除を求めている

 東京都の報告によると、契約者の多くは友人の紹介でHIFUの無料体験に参加し、再来店時に「一生無制限」「通い放題」と全身脱毛コースを勧められた人たちだった。

 高額だったため一度帰宅を希望したものの、「今日だけ学割で45万円」と迫られ、その場で契約したケースが多かったという。しかし契約書には、「1年間・6回」のみの施術と記載されており、口頭説明との大きな食い違いが発覚。その後、1年ほどでエステ会社が閉店し、連絡が取れなくなった。

 その後、委員会は、勧誘時の「一生無制限」といった説明が「不実告知」に当てはまり、特定商取引法上の取消しが可能であると判断。加えて、クレジット契約書にも役務期間の記載不備があり、クーリング・オフが成立すると整理した。

 エステ会社の代表が所在不明となり、事業者側の協力が得られなかったため、委員会はクレジット会社との間で交渉を進めた。クレジット会社は当初、契約内容に問題はないと主張していたが、若者の生活への影響を考慮し、最終的に「申立人は返金を求めず、クレジット会社は残債を請求しない」という形で合意が成立した。

 また、委員会は、クレジット会社が与信確認の電話で契約期間を具体的に確認していれば、誤認を防ぐ契機になり得たとして、「確認手続きが形骸化していた」と指摘した。

東京都「無料体験」「今日だけ割引」に注意を

・消費者への呼びかけ→無料体験後の勧誘や「一生通い放題」などの文言に安易に応じず、契約は一度持ち帰って検討を。長期契約には倒産リスクを意識し、月額制・都度払いの選択も推奨。
・相談体制→トラブル発生時は消費者ホットライン「188」へ早期相談を呼びかけ。
・現状とリスク→脱毛エステ相談が急増し、特に若年層(29歳以下)が半数超。2025年度は大手エステの破綻も影響し、相談件数は前年同期の2倍超。高額・長期契約には慎重さが求められる。

 東京都は紛争解決を受けて、エステ業界・クレジット会社・行政・消費者それぞれに注意喚起している。

 消費者に対しては、無料体験後の勧誘や「一生通い放題」などの言葉に安易に応じず、契約は持ち帰って検討することや、長期契約には倒産リスクを認識し、月額制や都度払いも検討するように求めている。東京都生活文化局は、「無料体験や特別割引などの誘いには慎重に対応し、その場で契約を決めないように」と呼びかけた。

 トラブルが発生した場合は、消費者ホットライン「188」(局番なし)への早期相談を推奨している。

 都内の消費生活センターでは、脱毛エステに関する相談が急増しており、若者(29歳以下)が半数以上を占める。2025年度は大手エステの破綻も影響し、7月末時点で前年度同期の2倍を超えている。18・19歳の新成人が初めて高額契約を結び、支払いに苦しむケースが特に目立っているという。

 エステ企業の倒産が続いており、エステ契約では長期にわたる高額契約は慎重に考えるのが重要だ。

参考文献

「個別クレジットを利用した全身脱毛エステティック契約に係る紛争」はあっせん解決しました~高額・長期の契約はその場で契約せず、慎重に検討しましょう!~

東京都がエステ脱毛のローンや契約問題に対処、女性22人の申立を受け、専門家委員会で協議開始、10~20代のエステ脱毛の相談急増の解決目指す

【プロフィール】 星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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