健康・医療

《最新研究で判明》ペットボトルからはがれ落ちた“マイクロプラスチック”が飲料に混ざっている可能性 心臓発作や自己免疫疾患など深刻な病を引き起こすリスクも指摘

ペットボトル飲料が危険な理由とは(写真/PIXTA)
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 のどが渇いたと思ったら自動販売機やコンビニなどですぐに買えるペットボトル飲料。たしかに便利であると助かるが、最新研究ではペットボトル飲料における、マイクロプラスチックに関するリスクも指摘されている──。【前後編の前編】

 玄米茶に緑茶にほうじ茶、ジャスミン茶、ルイボスティーなどお茶だけでも何種類もあるペットボトル飲料。いまや私たちの生活に欠かせないものとなったが、その習慣が脳卒中やがん、認知症といった重い病気を近づけているかもしれない。

 海外の最新研究が衝撃の結果を導き出した。有害物質および環境科学分野で権威あるオランダの学術雑誌『ハザーダスマテリアルズ』に掲載された論文によると、「日常的にペットボトル飲料を飲む人は、水道水を飲む人に比べて年間約9万個も多くのマイクロプラスチックを摂取している」ことが明らかになった。

 マイクロプラスチックとは環境中に存在する直径5mm以下の微細なプラスチック粒子のことで、さらに小さくなり1μm(マイクロメートル)以下になるとナノプラスチック(以下、マイクロプラスチックと併せてMNPと総称)と呼ばれる。どんなに劣化して細かくなっても、地球上に残り続けると予想され、世界中で問題になっている。

 しかも、これらが体内に入り込むと心臓発作や脳卒中、子宮内膜症、認知症、自己免疫疾患、がんなど深刻な病を引き起こすリスクが指摘されているのだ。

目に見えないレベルではがれ落ちる

 微細なプラスチックがこれほど多様な症状の原因となるのはなぜか。環境脳神経科学情報センター副代表で、医学博士の木村-黒田純子さんは「原因は大きく2つある」と解説する。

「1つ目は『微粒子による物理的な組織の損傷や免疫反応(炎症反応)』です。最近話題になっているのはMNPが血管壁にたまってプラークを形成し、心筋梗塞や脳梗塞を起こす可能性です」(木村-黒田さん・以下同)

 物理的に血管を傷つけたり、詰まらせたりする原因になるというわけだ。

「2つ目は『MNPから有害化学物質が溶け出す』こと。MNPが含む有害化学物質には、フタル酸エステル類などの内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)のほか難燃剤や紫外線吸収剤、重金属類などが含まれます。これらの物質が体内で溶け、ホルモンバランスを崩したり、細胞を傷つけることが考えられます」

ペットボトル以外にもある「マイクロプラスチック」のリスク
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 問題は冒頭の通り、この危険なMNPが、私たちが日頃よく飲んでいるペットボトル飲料から多く検出されていること。

「日本のペットボトル製品を使った研究報告はまだありませんし、検出されたMNPが飲料由来なのかペットボトル由来なのかは確定できませんが、プラスチックにはもともとMNPを出す性質があります。さらに摩擦や熱などが加わることにより、多くのMNPが飲料中に放出される可能性が高くなると考えられます」

 ペットボトルは安定した容器に見えるが、実は常に微細な崩壊を起こしている。ボトルを握ったり、キャップをひねる摩擦だけでプラスチック片が飲み物に降り注ぐ。科学ジャーナリストの植田武智さんが解説する。

「MNP自体は化学物質ではないので、溶けるというよりはがれるというイメージ。目に見えないレベルでペットボトルが常に劣化して、MNPがはがれ落ちて飲料に混ざるのです」

 別の研究ではMNPが肺を損傷したり、いわゆる腸内フローラを乱す可能性も指摘されている。ヒトの脳内にスプーン1杯分のマイクロプラスチックがたまっていることを示唆するデータもあるなど、影響は小さくない。

キャップを開ける行為は、ペットボトル内のMNPの量を増やす(写真/PIXTA)
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 では「9万個のMNP」とはどれくらいの量か。

「MNPの大きさは1nm(ナノメートル、1μmの1000分の1)〜5mmと幅広い。10μmサイズであれば約0.2mg、100μmサイズとなると約65mg。重量で考えると非常に小さいものです」(木村—黒田さん)

 微量だと思うかもしれないが、安心するのは早計だ。植田さんは「怖いのはより小さいナノプラスチックの存在だ」と話す。

「サイズが大きいものは体内に吸収されず排出されますが、nmのサイズになると体内に吸収される。そうなると体内のさまざまな組織に入りこみ、血液中からも検出されるようになる。もっと小さくなると細胞の膜も通ってしまいます」

 木村—黒田さんも言う。

「脳の血管には有害化学物質を取り込まないようにする『血液脳関門』という構造がありますが、ナノプラスチックの大きさになると血液脳関門を越えるという報告や、それにより神経や行動に影響を与える可能性が議論されている。脳は腎臓や肝臓よりもMNPが蓄積しやすく、認知機能に障害を起こすリスクが指摘されています」

 目に見えないほど小さいからこそ、体の奥深くまで侵入し、排出されずに蓄積していくのだ。

(後編に続く)

女性セブン20251218日号

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