
美容医療の返金や解約をめぐるトラブルは珍しくない。
今回、糸リフトの施術をめぐり、即日契約で即日施術後に返金トラブルが起き、その詳細が公表された。
「1本約1万4000円」の広告よりも高額の契約に
・広告内容→「小顔リフト1本約1万4000円」と表示されていたが、実際には高額なコース提案が行われた。
・契約内容→モニター価格で約70万円、ローン手数料込みで約95万円の契約。84回払い。
・説明不足→院長から施術や麻酔に関する説明がないまま、約15分の施術を受けた。
国民生活センターは、消費者トラブルについて、裁判ではなく話し合いで解決を図る「ADR(裁判外紛争解決手続)」を運用し、参考となる事例を定期的に公表している。
今回公表されたのは、SNS広告をきっかけに来院した申請者(以下、Aさん)が、当日に高額な契約となったとして、返金を求めて争いになったケースだ。
国民生活センターによれば、Aさんは2024年6月、クリニック(以下、B医院とする)がSNSで掲げた「小顔リフト1本約1万4000円」という広告を見て、支払える範囲と考え無料カウンセリングを予約した。
Aさんがメッセージアプリで公式アカウントを登録すると、初回限定のクーポンが届き、診断結果などに基づき糸リフトと脂肪溶解注射を勧められた。
その後のカウンセリングで、Aさんが「ダウンタイムが短い施術がよい」と伝えると、B医院からは糸リフトの提案が続き、コースとして200万円、180万円、90万円といった提案があった。
Aさんは糸リフトだけを希望し、約90万円のコースがモニター価格で約70万円になるという話になった。
それは84回払いの内容で、Aさんがタブレットで申し込み内容を確認した際、信販会社ローンの手数料が約25万円かかる内容と判明。信販会社からの電話でも「手数料込みで約95万円」などの確認があった。
結果的に施術室で院長に初めて会い、院長からは施術や麻酔、痛みなどの説明を受けることなく、約15分の施術を受けた。
帰宅後に痛みや違和感が出て、翌日にクーリング・オフを申し出たものの、クリニックからは「脂肪溶解注射はクーリング・オフの対象になるが、糸リフトは施術後はクーリング・オフできない」と説明されたとしている。
その後、7月に消費生活センターに相談したが解決できず、契約をなかったことにして請求を止めたいとして、国民生活センターのADRを利用することになった。
「3分の1支払い」で決着
・即日高額契約→熟慮の機会が十分でない契約は問題になり得る。
・説明と同意→同意の様子は確認されたが、必要性の説明は慎重さが求められる。
・妥当性の判断→効果が約1年の施術に長期分割払いは適切か検討が必要。
B医院は、和解手続に協力する姿勢を示しつつ、Aさんの請求(契約をなかったことにして請求を止める)を認めない立場を取った。
Aさんは「希望していない施術を勧められた」「説明が不足していた」「効果に納得していない」といった趣旨を述べ、B医院は「入退室までの映像が残っている」「説明はしている」「糸は合計18本で、施術は10~15分程度」などと説明した。
仲介委員が、医院が保有していた映像で確認したところ、威圧的対応や強要はなく、Aさんが自ら選択して契約、施術を受けたことも見受けられた。仲介委員は「説明に同意している様子は見られる一方で、判例では必要性・緊急性のない施術については熟慮の機会を与える必要があるとされている」と示した上で、「本件のような即日の高額契約には問題がある」と指摘した。減額の方向で調整を進めた。
最終的に、施術代金の3分の1をAさんが一括で支払い、Aさんと信販会社の信販契約は合意解除する内容で和解が成立した。
糸リフトの有効期間は1年程度になり、その効果に対して、7年の分割払いが妥当かという点は考慮する必要がある。即日契約で、即日施術は、ガイドラインで避けるように求められるようになっているが、納得して施術を受けるようにするのは重要だろう。
参考文献
国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和7年度第3回)
契約後即日施術のキャンセル料トラブル、解約料100%取り下げで和解、厚生労働省も注意喚起する典型的な問題事例、国民生活センターが経緯を公表
糸リフトや注入後に違和感、美容施術の返金トラブルを国民生活センターが公表、220万円契約の即日施術で症状が発生、裁判所での民事調停に委ねる形に
【プロフィール】 星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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