
ファッション業界で、ホエール・テール(whale tail)が20年ぶりに復権している。ローライズのウェストラインから覗かせたTバックの一部がまるで水面から跳ね上げられた鯨の尾鰭(おびれ)に見えることからその名が付けられた、2000年台前半に流行したあの着こなしのことである。
「ホエール・テールは、1990年中頃からグッチのデザイナーだったトム・フォードらによって、ハイファッションの分野で試験的に導入されていましたが、クリスティーナ・アギレラや、ブリトニー・スピアーズ、パリス・ヒルトンといった当時の注目セレブらが取り入れたことで世界に広まり、Y2Kファッションを特徴づける着こなしとなりました」(ファッションライター)
Y2Kファッションとは、2000年頃に流行したファッションのこと。具体的にはトップスでいえば「クロップド丈(おへそが見えるほど短い)のトップス」やボトムスでは「おしりが見えそうなほどのローライズジーンズ」、足元は「厚底ブーツ」といったスタイルで、日本のギャル文化が世界に影響を与えたとも言われている。
「そのY2Kファッションは当時から『下品』という批判は根強かったものの、それを乗り越える“取り入れやすさ”“真似のしやすさ”がトレンドの原動力だった。実際、ホーエル・テールのような“見せTバック”は海外だけでなく日本でも一部のギャルの間で流行っていましたからね。しかし、その後のITバブル崩壊や中東情勢の悪化などといった暗い世相を反映するかのように、ファッション業界もコンサバ化し始めると、一気に過去のものとなりました」(前出のファッションライター)
そんな、一時は廃れた「見せTバック」を取り入れるセレブリティが、ここ最近、急増しているというのだ。
米モデルでジャスティン・ビーバーの妻、ヘイリー・ビーバーもそのひとり。昨年11月、GQ主催の「メン・オブ・ザ・イヤー」の式典に出席した彼女は、背中が大きく開いたグッチのガウンから、GストリングのT字を覗かせ、周囲の目線を釘付けにした。
同じく米モデルのベラ・ハディドも最近、マスカレードマスクを付け黒のバックレスドレスで身を包んだ妖艶なショットをインスタグラムに公開。苗木が葉を広げているように切り抜かれた臀部からは、Tバックがあらわとなっている。
また、ディズニーチャンネル出身の歌手、サブリナ・カーペンターも、昨年3月にインスタにアップしたイタリアでのバケーションショットのなかで、クロップドドレスとラップスカートに挟まれた素肌部分に、黄色いTバックの一部を露出させている。
他にも、インフルエンサーで実業家のカイリージェンナーや英歌手のデュア・リパなど、多くの女性著名人が“鯨のしっぽ”を惜しげもなく披露している。
ただ、彼女たちのホエール・テールは、20年前のそれとは微妙に異なっているという。前出のファッションライターが指摘する。
「『Tバックやひもパンをあえて見せる』という点では同じですが、Y2Kファッションではデニムなどのガーリーで活動的な着こなしに取り入れるのが主流だったのに対し、今のホエール・テールはドレスなど大人の装いに取り入れられることが多い。また、Y2Kは偶然性を演出した『チラ見せ』で、あざとさがありましたが、今は計算されたスタイリングで意図を隠さない見せ方となっています。つまり、Tバックの見えている部分もしっかりとファッション性を持たせたスタイルです。近年でも、セレブリティがY2Kファッションへのオマージュとして取り入れるケースはありましたが、ここ最近は、完全に再定義されたホエール・テールがトレンドとなってきています。
もちろんこのトレンドは日本のファッション界も注視していて、近年、Y2Kファッションを好むZ世代のインスタグラマーらが、自身のスタイリングに上手に取り入れています」
世界的インフレに戦争と、今なお決して明るくない世相に、生まれ変わったホエール・テールが鯨のような活力を与えるか。