
これから先の人生を考えると不安に、ちょっとした他人からの指摘で落ち込む、後ろ向きなことばかり考えてしまいクヨクヨしてしまう—体の健康を保つことと同じくらい、メンタルが健やかであり続けることは難しい。だが、ポジティブな精神を手に入れることは免疫力を高め、健康長寿に直結する。
妻のポジティブさで難病を克服
ポジティブメンタルはなぜ人間の心と体に好影響を与えるのか。脳科学者でT&Rセルフイメージデザイン合同会社代表取締役の西剛志さんが指摘する。
「ポジティブな感情を持つと、体内の重要な免疫細胞である『NK(ナチュラルキラー)細胞』の活性が高まることがさまざまな論文で紹介されています。この作用により体内の免疫力が強化されて心身が健やかになり、健康長寿につながると考えられます。逆に物事をネガティブにとらえる人ほどNK細胞の活性が低く幸福度が低い傾向にあります。実際に水が半分入ったコップを見て“半分しかない”と認識する人は、NK細胞の活性が低いことがわかっています」(西さん・以下同)
寒い時期から暖かい時期に移るいまは、ポジティブメンタルが効果を発揮する絶好機だという。
「寒暖の狭間となる4〜5月は交感神経と副交感神経の調節が難しく、自律神経の乱れによって感情が落ち込んでやる気を失いやすい。こうしたマイナスの状態にあるときにプラスの感情に触れると“打ち消し効果”によって感情の落ち込みが相殺されます。具体的には、音楽やお笑い番組、面白い動画などに接すると打ち消し効果が働きやすい」

そう語る西さん自身、若い頃はいまほどポジティブではなく、特に対人関係に自信がなかった。だが、他者との出会いが自分の性格を変えたと振り返る。
「人間の脳には、目に映った映像を自分の体感として再現するミラーニューロンという神経細胞があります。まさに“鏡”のような働きをする細胞で、たとえば目の前にいる人が泣いていると、ミラーニューロンが働いて悲しくないのに涙が出てしまう。こうした作用のため、つきあいが深い人の性格ほど“うつる”ことがしばしば生じます」
西さんの場合、妻の性格に影響を受けたという。
「妻は非常に前向きな人間で、私が難病を患った際も動じることなくポジティブでした。そのうち私まで、だんだん病気は錯覚ではないかと疑うようになるほどで(苦笑)。結果的に病を克服して自分も前向きな性格になれたので、妻には感謝しています」
脳の認知を前向きにする「成功日記」
成功体験を重ねることもポジティブメンタルを手に入れる方法のひとつ。
「私は人前で話すのが苦手で講演依頼をすべて断っていましたが、あるとき一度だけ“最初で最後”と思ってやってみたら意外にも評判がよかった。その講演の映像を恐る恐る確認すると、自分でもイケてると思えたほどで、内側から見た自分と外側から見た自分の違いに気づきました。その後、少しずつ人前で話せるようになり、どんな小さなことでもいいので成功体験を積み重ねると自分を変えられることを実感しました」
このように成功体験を高めるため、西さんがすすめるのが「成功日記」。これは、夜寝る前に「今日は早く起きた」「ランチがおいしかった」などと、その日うまくいったことを5つ選んでメモするやり方だ。
「SNSで100の『いいね!』がついてもたった1つの辛辣なコメントに引きずられるように、人間はマイナスとプラスが同時期に生じるとマイナス面にフォーカスしやすい。ところが『成功日記』を続けるとプラス面を振り返る習慣がついて、意外と自分は成功しているなという気づきを得ることができます。それによって脳の認知が前向きになります」
さらに前述した「打ち消し効果」も生じ、マイナスの感情が相殺されて脳がポジティブに傾いていく。
「『成功日記』の習慣を続けると次第に自己肯定感が高まり、ポジティブメンタルを手に入れやすくなります。大人だけでなく子供にもおすすめです」
ぜひ今日から実践して前向きな心を身につけよう。
【プロフィール】
西剛志(にし・たけゆき)/東京工業大学大学院生命情報専攻修了。2002年に博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。
※女性セブン2026年5月7・14日号