健康・医療

《「がんで死にたい」と考える医師たちの見解》余命宣告から短くても数か月、長ければ数年の“死に向かう期間”がもたらす「後悔のない最期」

家族や友人と過ごし、後悔のない最期に

 死ぬ前には、できるだけ長く家族や友人など大切な人たちと一緒の時間を過ごしたい。誰もが願うことだが、ほかの病気に比べて、がん患者がその希望を叶えているというデータもある。

 国立がん研究センター「遺族調査報告書 2023年度調査」によると、死の1か月前に「ご家族やご友人と十分に時間を過ごせた」と回答したがん患者の遺族は約半数だった。その割合は心疾患や認知症などほかの病気と比較するともっとも高い。

 がんで余命を宣告され、残された時間でやりたいことを全うした患者を何人も診てきたというのは、東京大学医学部附属病院の放射線治療部門で特任教授を務める中川恵一さんだ。

乳がんの5年生存率派92.3%と高く、早期発見、早期治療で寛解するケースも多い(写真/PIXTA)
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「時間が限られているし、死んだらお金は持っていけないからと、治療ではなく自分のやりたいことのために時間を使ったかたは何人もいらっしゃいました。独身のかたはいままで飲めなかった高いワインを飲んで、高級ホテルに泊まったり、ご家族がいる場合は一緒に過ごす時間を増やすなど、それぞれが思い思いに後悔のないよう過ごしていた印象です。

 治療よりも自分の時間を大切にするケースは、特に乳がんの患者さんに多い傾向があります。まだ40〜50代と若いのに死を迎えることになり、まだまだやりたいことがあるのに……という思いが強いのかもしれません。それができるのも心の整理をする時間があるからこそだと思います」

 早期緩和ケア大津秀一クリニック院長の大津秀一さんは、治療と同時に生活を充実させようと生きた患者が、亡くなる瞬間に口にした感謝の言葉が忘れられないという。

通院で抗がん剤治療を受けながら就労する人も(写真/PIXTA)
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「肺がんを患っていた60代女性が、治療を諦めて、苦痛を緩和させながらやりたいことをやり切ると決心した姿が印象に残っています。そのかたはがんだとわかった時点で先を見据えて準備をし始めていました。

 最期に苦痛が強いときには意識を低下させて、緩和させてほしいと希望。終末期になり症状としては決して楽な状態ではなかったと思いますが、それまでに家族で過ごす時間を増やして、いろいろな場所へ旅行もできた。

 最期を迎えるときには、ご自身でわかっていたようで『先生、本当にありがとうございました。もう最期だと思うので鎮静薬をお願いします』とはっきりおっしゃって、亡くなっていきました。余命と経過をしっかり理解して準備をして、残された時間を望んだとおりに亡くなっていった。こういう例を見ると、がんで死にたいという気持ちもわかると思いました」

日本人の死因1位はがん
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(後編に続く)

※女性セブン2026年6月18日号

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