ビタミンCが少ない人は脳の老化に関わる変化も? 神経細胞が集まる灰白質が少ない可能性 記憶や注意に関わる脳ネットワークにも影響か 弘前大学など2044人を解析

食事から摂る栄養は、年齢を重ねた脳の健康に関係するのか。
日本の高齢者2044人を調べた研究で、血液中のビタミンC濃度が低い人では、神経細胞が集まる灰白質の量が少なく、記憶や注意などに関わる脳ネットワークのつながりも弱い傾向が示された。ビタミンCが脳の老化を防ぐと証明したわけではないが、食事から脳の健康を支える可能性を考える上で注目される。
弘前大学の研究グループが、2026年6月に報告した。
血液中のビタミンCと脳のMRIを比較
・血中ビタミンCを測定→食事推定ではなく、実際の血液中ビタミンC濃度と脳MRIを比較した。
・2044人の高齢者を解析→65歳以上の日本人を対象に、灰白質や白質、脳ネットワークとの関係を調べた。
・認知に関わるネットワークに注目→記憶や思考に関係するデフォルトモードネットワークも評価された。
ビタミンCは、果物や野菜などから摂る栄養素である。体内で作ることができないため、食事から摂る必要がある。これまでにも、ビタミンCを多く摂る人では、認知機能の低下が少ない可能性があるとする研究が報告されてきた。
一方で、食事内容から推定したビタミンCの量ではなく、実際に血液中のビタミンC濃度を測り、脳の構造や脳内ネットワークとの関係を調べた研究は限られていた。
今回の研究では、65歳以上の日本人2044人を対象に、血液中のビタミンC濃度と脳のMRI画像を比較した。参加者の年齢の中央値は69歳で、女性が61.1%だった。
MRIでは、脳の灰白質と白質の量が調べられた。灰白質は、神経細胞が多く集まる部分で、記憶や判断、感情、注意など、さまざまな脳の働きに関係する。白質は、脳の各部位をつなぐ神経の通り道に当たる。
さらに研究グループは、脳の中で記憶や思考に関わる「デフォルトモードネットワーク」にも注目した。これは、過去の出来事を思い出したり、自分自身について考えたりするときに働く脳のつながりで、認知機能と深く関係するとされる。
解析では、年齢、性別、教育歴、認知機能検査の結果、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、飲酒、身体活動など、脳の状態に影響し得る要因も考慮された。
ビタミンCが少ない人で脳のつながりも弱い傾向
・灰白質が少ない傾向→ビタミンC濃度が低い人では、神経細胞が集まる灰白質の量が少なかった。
・脳のつながりも弱い傾向→記憶や認知に関わる脳ネットワークの結びつきも弱い可能性が示された。
・因果関係は未確定→ビタミンCが脳を守ると証明したものではなく、今後の検証が必要。
解析の結果、血液中のビタミンC濃度が低い人では、灰白質の量が少ない傾向が見られた。頭の大きさの違いを考慮しても、この関連は統計的に意味のあるものだった。
さらに、ビタミンC濃度は、記憶や思考を支えるデフォルトモードネットワークのつながりとも関係していた。特に、記憶や認知機能に関わる脳の領域を含むネットワークで、ビタミンC濃度が低い人ほどつながりが弱い傾向が示された。
論文では、血液中のビタミンC濃度が、脳の灰白質の量や、脳内ネットワークの保たれ方と関係している可能性があると説明している。
ただし、この研究は観察研究に当たる。ビタミンCが少ないために脳の変化が起きたのか、それとも生活習慣や体の状態の違いが、ビタミンC濃度と脳の状態の両方に表れているのかは分からない。ビタミンCの測定も1回のみで、長期的な変化までは追えていない。
研究グループも、今回の結果は「ビタミンCが脳を守る」と証明するものではなく、あくまで関連を示すものだと慎重に位置づけている。参加者は日本の高齢者に限られるため、他の国や世代にも同じように当てはまるかは、今後の検討が必要となる。
それでも、血液中のビタミンCという身近な栄養指標が、脳の構造やネットワークの状態と関連していた点は注目される。ビタミンCは抗酸化作用を持ち、神経の働きにも関わるとされる。果物、ベリー類、トマト、じゃがいも、緑の葉物野菜などから日常的に摂ることができる栄養素だ。
栄養状態と老化の関係を考える上で、今回の結果は一つの手掛かりになりそうだ。
参考文献
Haruka Nagaya, Keita Watanabe, Tomohiro Shintaku, Miho Sasaki, Jusei Kudo, Sera Kasai, Yuka Ishimoto, Kana Saito, Shuichi Matsuhashi, Taiki Koshiishi, Mizuki Imura, Amo Ozawa, Saaya Mori, Daisuke Watanabe, Shin Shukunobe, Tatsuro Sasaki, Soichiro Tatsuo, Shinya Kakehata, Tatsuya Mikami, Daichi Kokubu, Yusuke Ushida, Shingo Kakeda. Plasma vitamin C levels are associated with brain structural networks on MRI: A large cohort study. PLOS One. 2026;21(6). doi: 10.1371/journal.pone.0348504
【プロフィール】 星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。