ライフ

夫との会話はかみ合わないのが当たり前。「いいね」「わかる」「そう」で全てうまくいく!

会話している男女
夫との会話がうまくいくカギは「いいね」「わかる」「そう」だという(Ph/AFLO)
写真5枚

夫と話がかみ合わないことってありませんか? ちょっとしたことでも積み重なっていくとイライラしてストレスは溜まっていきます。ベストセラー『夫のトリセツ』(講談社)の著者で脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんによれば、夫との会話はかみ合わなくて当然だといいます。いったいなぜでしょう? その理由と意見が合わない夫との関係を円満にするコツを教えてくれました。

【相談】

夫と話がかみ合わないことが多く困ります。例えば、テレビを見ていても「これってこうだよね」という夫の意見に共感できないことが多く、私が意見を言うと「は? 何を言ってるの?」と言われることがしばしば。そのため、2人でいると会話は盛り上がらないだけでなく、話すこと自体がイライラの原因に。どうしたらよいでしょうか。(54歳・専業主婦)

* * *

夫婦旅の秘訣は沈黙?

あるとき、新幹線に乗ったら、私以外の全員がツアー客で、私は頭を抱えてしまいました。旅に出る人々は饒舌。この旅の往復で、本1冊の校正をしてしまうつもりで、グリーン車を奮発したのに、これでは集中力を持続するのは難しい。せめて、ツアー客の興が乗る前に、出来るところまでやってしまおうと、出発前から原稿を広げました。

ところが新横浜を過ぎても、車内はし~んと静まり返ったまま。不思議に思って顔をあげたら、なんと、すべての座席が60~70代の夫婦で埋まっていたのです。たまに夫が話しかけても、妻がさも興味なさそうに短く切り返すので、話も弾まない。おかげさまで、私の仕事はめちゃくちゃ捗りました。

それにしても、なんて旅上手なご夫婦なのだろうと、私は関心してしまいました。この年になったら、旅先でおしゃべりすればするほど、夫婦はすれ違う。必要最小限の会話で、ひっそり寄り添っていればいいのです。女同士ほど楽しくないけど、1人ほど心細くない。それが熟年夫婦の旅のよさです。

旅を楽しむ老夫婦
旅を楽しむ老夫婦(Ph/AFLO)
写真5枚

同乗した品のいいご夫婦約30組は、くっきりと姿を見せた富士山を「富士はいいねぇ」「ほんとねぇ」とおだやかに楽しみ、私が新幹線を降りる頃、互いに助け合いながら会席弁当の蓋を開けていて、車内にはそれなりに満ち足りた空気が漂っていました。

妻「さっきのあれ、やっぱりお土産に買おうかしら」
夫「あれって、なんだ?」
妻「入り口んとこの、赤いあれに決まってるじゃない」
夫「お前の話は要領を得ないな。さっぱりわからん」
妻「あんなに目立つもの、なんで見てないのよ(あ~、いらいらする。この人、ほんっと、愚図なんだから)」

70代の夫婦旅の達人たちも、おそらく40~50代には、そんな会話を経験してきたはず。同世代の女同士で旅をすると、目に入るものがほとんど一緒だし、気になることもほとんど一緒。なので「さっきのあれだけど…」「あ~あれあれ、私も気になってたの」「もどろうか」「うん」という風に話が弾む。固有名詞などなくても、自在に文脈が紡ぎだせるのです。

「あれ」が通じないし思い出も食い違う

ところが、男女の脳は、とっさに見る場所がズレが。このため、お土産屋でも観光スポットでも、夫はたいてい妻とは違うものに目を留め、気をとられているのです。

だから、「あれ」が通じないし、思い出も微妙に食い違う。共感を欲する女性脳には、かなり苦痛な旅のパートナー。でもね、そういうものだとあきらめてしまえば、意外に夫の視点も面白いのです。

妻は、女同士の旅の弾むような楽しさを夫に求めないこと。「あなたは何が面白かった?」と夫に質問して、夫のものの見方を妻も楽しんでみましょう。

夫は、妻の「あれ」を論理的に追及しないこと。「あれ」がわからなくても、「そうか、気になるのか。じゃぁ、もう一度、戻ろうよ」と言ってやればいいのです。この際、「あれ」がなんだっていいじゃない? サンタクロースであろうと、だるまだろうと、大事なのは、気になって戻りたい妻の気持ちなんだから。

——―という境地にまだいない夫婦は、つい対話を試みて、うっかりムカついてしまうわけ。

惚れ合った夫婦の感性は一致しない

男女は、惚れ合うとき、相手の見た目や声、体臭、触れた感触などから遺伝子情報を取得しています。そうして、生殖相性のいい遺伝子の持ち主に発情するのです。

会話している夫婦
体臭の中に含まれるフェロモンは、免疫のタイプを知らせるという(Ph/AFLO)
写真5枚

特に、体臭の中に含まれるフェロモンは、免疫のタイプを知らせるのだそう。フェロモンの匂いのタイプと、免疫抗体の型をつくり出す遺伝子のタイプが対応しているため。つまり、私たちは、相手の体臭から、「何に強い体の持ち主か」を知るわけ。

そのうえで、男女は、自分とまったく違う免疫システムを持つ異性に発情するように仕組まれています。なぜならば、子孫に、できるだけ豊かな免疫のバリエーションを残したいから。免疫システムが違えば、外界への反応も違ってきます。惚れ合う男女は、だから、けっして感性が一致しません。

どちらかが暑がりなら、どちらかは寒がり。どちらかがせっかちなら、どちらかはおっとり。どちらかが寝つきがよければ、どちらかが悪かったりする。こだわることが違い、我慢できないことが違うのです。だから、テレビを見て、何かの感想を言い合ったとき、共感できないことのほうが多いはず。

夫の意見は「別の意見」を尋ねるつもりで聞く

というわけで、夫婦の会話は、「そうよね」「そうだよね」と盛り上がれるはずがないということを理解しておきましょう。

夫の意見なんて、「別の意見」を尋ねるつもりで聞く。「あなたは、これどう思うの?」→「へぇ、あなたには、そんなふうに見えるんだ。面白いね」くらいの感じでね。

そもそも、夫婦の対話なんて、真剣に反論しても甲斐がない。感性が一致していないので、正解が違うのだから。相手が言ったことに、「それ違うでしょ」と言っても無意味。向こうにとっては、それが正解なわけだから。

だから、相手の言ったことに、「そうなんだ、なるほどね」「きみは、こういうのが嫌なんだね」「そういう見方もあるな」「あなたには、そう見えるの? 深いわね」とか返してあげればいいのです。

ふたりの意見を一致させる気がなければ、相手のものの見方も、意外に刺激になったり、面白かったりします。もしも人の悪口など、不快な発言ならば、「自分の夫から、そういうことばは聞きたくない。あなたのことを、カッコイイと思っていたいから」と告げたらどうですか?