
まだなお続く新型コロナウイルスの感染対策。その一つとして欠かせないのが、部屋の掃除と換気です。正しい掃除と換気の方法を、『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)の著書がある松本忠男さんに聞きます。
35年間総合病院の清掃作業や衛生管理に携わってきた経験に基づき、健康を考えた掃除法を同書にまとめた松本さん。「間違った方法で掃除を続けると、掃除の効果が半減するばかりか、ダニ、カビなどの有害物質をまき散らし、健康を害してしまうリスクがある」と警鐘を鳴らします。実は、多くの人がやりがちな、掃除中に窓を開けて換気をする行為もその一つ。なぜいけないのでしょうか? 正しいやり方とともに、教えてもらいました。
換気の新常識【1】掃除のあとに行う
掃除を始める前から終えるまでの間、窓を開けて換気をしている人は多いでしょう。ですが、松本さんは、「換気は掃除後に行うべき」と断言します。なぜでしょうか?

「まず、ホコリがいっぱい溜まった部屋に風を入れることで、部屋のあちこちに溜まっていたホコリやカビが、風に乗って飛散されます。その行き先は、ベッドの上や食事をするダイニングテーブルなど、清潔であるべき場所、モノにまで…。しかもそのホコリは目に見えにくいので、そのまま放置されるケースもあります。これでは、かえって不衛生です。
したがって、窓を開けて部屋の空気を入れ換えるなら、掃除前ではなく、ホコリを一掃させたあとの掃除後に行う。これが、掃除の大原則です」(松本さん・以下同)
部屋にホコリやカビを溜め込まないのがポイント
今は、コロナの感染対策で日に何度も窓を開けて空気を入れ換えている家庭も多いでしょう。マメに窓開け換気をするなら、日頃から部屋にホコリやカビを溜め込まないよう、コマメな掃除をしておくことが大切です。
換気の新常識【2】風の入口は狭く、風の出口は広く
換気は、ただ窓を開ければいいわけではありません。窓の開け方こそ、重要だと言います。
「換気をする時は、2か所以上の窓を開けて、風の入口と出口を作ってあげましょう。その日に風が流れる方向を確認し、風が入ってくる方の入口側は狭く、出て行く方の窓は広めに開けるのがポイントです。入口が狭ければ狭いほど風(新鮮な空気)がビューッと室内に入り込み、出口が広ければ広いほど風(室内に滞留していた汚染物質を含む空気)がバーッと出ていってくれます」
入口側はカーテンを閉めて異物をガード
この時、入口側にレースのカーテンがあれば、閉めたままでもOK。

「レースのカーテンを閉めたままにしておくことで、花粉やゴミなどの異物がカーテンにくっついて、部屋に入り込むのを防いでくれます。ただし、その花粉などは改めて洗濯や掃除機などで取り除いてあげましょう」
では、出口側のレースのカーテンは?
「風下はホコリなどの汚染物質が出ていく場所。出口のカーテンは全開にして出口をふさがないようにしましょう。風下は、人やペットも離れていた方が健康のためです」
ただ、マンション住まいで対角線上に2か所、窓がない家もあるでしょう。その場合は、キッチンの換気扇をオンにすることで出口を設けるのも一つの方法です。
換気の新常識【3】空気清浄機を置いても換気は必須
花粉やPM2.5などの対策に空気清浄機を稼働させている人もいるでしょう。中には365日24時間つけっぱなしの人もいるかもしれません。では、空気清浄機を稼働させていれば、換気は不要? 答えは「NO」です。

「空気清浄機は、あくまでも室内の空気を清浄にするためのもの。それも完全ではありませんし、ましてや部屋の空気を入れ換えるものでもありません」
最新エアコンでも窓を開けての換気を!
エアコンも同様。最新のハイモデルの中には、給気(エアコンに空気を入れる)と排気(エアコンから空気を排出する)をしてくれるエアコンも登場していますが、それでも窓を開けての換気は必要だとされています。
ウイルスやカビなどは目に見えず、空気清浄機が本当に除去してくれているか、まだ空気中を漂っているかは、我々は確かめることができません。だからこそ、家電製品に頼りっぱなしにならず、毎日コマメに換気をして空気を循環させたいものです。
◆教えてくれたのは:松本忠男さん

プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング代表取締役社長。東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職。現場の清掃管理者経験を含め33年間、病院清掃に従事。トータル700人以上の清掃スタッフを育ててきた経験から、掃除のコツやノウハウを、医療、介護施設、清掃会社、家庭などに伝授している。著書に、『病院清掃35年のプロが教える 最新科学でわかった病気にならない掃除術』(幻冬舎)などがある。