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専業主婦から社長になった薄井シンシアさんが語る、3か月で小学生700人の食事マナーを劇的に向上させた方法

分かりやすく覚えやすい言葉で浸透させる

私は言葉で伝える場合も、子供が理解しやすく覚えやすい言葉を選ぶようにしました。例えば、その食堂では先生方が「ヘルシーに食べよう」と口々に呼びかけていました。栄養バランスの取れた食事をしようという意味ですが、それを子供が理解して実践するのは難しいですよね。

薄井シンシア
相手が分かりやすく覚えやすい言葉で浸透させることが大事とのこと
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私はこれを「毎日レインボー食べよう!」と言い換えました。「食べる物がカラフルであればあるほど、その食事は栄養バランスがよくなる」とものの本で読んだので、それをさらに分かりやすく、短い言葉にしてみたのです。自分が取ってきた料理の栄養バランスがいいかどうかは、子供には分からないかもしれませんが、自分のお皿の上が色とりどりかどうかは子供でも確認できます。

覚えやすいスローガンだったので、子供たちも口にするようになりました。自宅での夕食のときにも「今日もレインボー食べなくちゃ」などと言って意識する子も出てきて、わが子の変化に驚いた親御さんが私に会いに来てくれたこともあります。実はそうやって訪ねてくれたうちの一人が、のちに日本の大手ホテルで総支配人になり、私を起用したいと言ってくれました。意外なところで人の縁はつながりますね。

「あなた」「そこ」ではなく名前で呼ぶ効果

上に書いたようなことを全部やっても、やんちゃざかりの子供は人が食べているすぐ隣で飛び跳ねるとか、マナー違反をします。そういうとき、「そこ、暴れない!」と言っても効果はありません。でも「マイケル、やめなさい!」と名指しで言うと止まります。まず、来て日が浅い食堂のおばさんに名前を呼ばれてやんちゃ坊主もびっくりです。それに、名前を呼ばれると、自分が大人からちゃんと見てもらっているんだと思えて、自然に態度が改まる子供は多いんですよ。

薄井シンシア
子供は名前で呼ばれることで、自分が大人からちゃんと見てもらっているんだと思うのだそう
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私は子供のこの習性を知っていたので、カフェテリアに通ってくる700人の小学生の顔と名前を全員分、写真付きの書類を使って覚えました。当然、覚えるのに時間や労力はかかります。ですが、注意したときの響き方がまるで違うので、効率的な食堂運営につながったと思っています。

こんなふうに3か月、カフェテリアの現場に立って子供たちと触れ合う仕事をしていました。すると、学校側から今度は中学・高校のカフェテリアも任せたいとオファーが。業務範囲も子供たちとのコミュニケーションだけでなく、メニューの選定やスタッフの指導・監督なども含めたプロデュース、マネジメントに広げて依頼したいということでした。私が思ったより早く、本格的なキャリア再開のタイミングが訪れたのです。次回は、このプロデュース業に携わった頃のエピソードを紹介します。

◆LOF Hotel Management 日本法人社長・薄井シンシアさん

薄井シンシア
LOF Hotel Management 日本法人社長・薄井シンシアさん
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1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う学校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラ社に入社し、オリンピックホスピタリティー担当就任するも五輪延期により失職。2021年5月から現職。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/藤岡雅樹 構成/赤坂麻実、編集部

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