
「家中ものがあふれていて、どこから手をつけていいかわからない」──そう悩む人に整理収納アドバイザー・阿部静子さんが推奨するのは、「狭い」「簡単」「達成感」の三拍子揃った「玄関」から始める片づけです。著書『だから、50歳から片づける:「思い出のもの」は捨てなくていい』(CCCメディアハウス)が話題の阿部さんに話を聞きました。
不要な靴を手放すコツ
玄関から片づけを始めるべき理由を阿部さんはこう言います。
「下駄箱は狭い空間なので、片づけ始めるのにぴったりな場所です。目につきやすい玄関ということもあり、あなたが片づけている姿を見た家族が、一緒になって下駄箱の整理を始めるかもしれません。不要な靴を手放すことで弾みをつけ、片づけをすすめていきましょう」(阿部さん・以下同)
では、不要な靴はどう選べばよいでしょうか。

まず3足減らせるはず
「下駄箱から出して1足ずつ手に取って見てみましょう。なかでも真っ先に手放すべきなのは、傷みのある靴。高価であっても、デザインが素敵だったとしても、痛みのある靴は魅力が半減します。直して履きたいと考えているのであれば、1か月以内に修理するなどと期限を決めることにします。
それでも処分に迷う場合は、3年を目安に履いていない靴を手放しましょう。3年履いていなければ、今後も出番はないはずです。この方法により、私の講座の受講生は少なくとも3足は不要な靴を手放します」
本来は、下駄箱から全部の靴を出して選別するのがいいそうですが、ハードルが高く感じられる場合、「1足を手に取って5分かけて見極める」ことを阿部さんは推奨します。1足を手放しただけでも、かなりの達成感が得られて自信につながり、次につながるのがその理由です。
箱から出して下駄箱に
買ったときの靴箱に入れたまま、玄関の下駄箱に収納するのはNG。「靴箱に入れたまま収納すると場所を取るし、何が入っているか分かりにくいため履かなくなる原因に」なると阿部さんは指摘します。
5分で「帰りたくなる玄関」に
また、「『家の顔』である玄関には不要なものを置かないようにしましょう」と阿部さんは言います。

たたきの靴を減らすコツ
「家はホッとできる空間であることが望ましいですが、『帰宅後に散らかった玄関を見て疲れが増す』というかたはとても多いようです。どうすれば、『家に帰りたくなる玄関』になるでしょうか。
それは、たたきにある靴を減らすことです。玄関のたたきに靴がたくさん並んでいるお宅は多く、それだけで散らかっている印象を受けてしまいます。5分あれば、たたきにある靴は減らせます。それだけで見栄えがグンとよくなります」
たたきの靴をどこまで減らすかは、家族の人数によって変わるといいます。
「スペースにもよりますが、たたきに置く靴は、家族の人数+ゴミ出しサンダル1足がちょうどいい数です。履いた靴を下駄箱にすぐ入れるのではなく、『1足下駄箱から出したら1足しまう』を習慣化すれば、できるようになります。
たたきにある靴を下駄箱にしまい切れなければ、その機会に靴を減らしてみてください。たたきひとつで『散らかった家』『片づいた家』と両極端な印象になります」
50代が初めに手放す服の基準
玄関に続いて片づけるものは、一番多い悩みである「クローゼット」「服」です。手持ちの洋服の整理に苦戦している人に、阿部さんはこうアドバイスします。

こんな「傷み」が出たら
「よく見ると毛羽立ちがある、毛玉を取ってもすぐに毛玉ができる、色褪せている、ヨレ、襟や袖口が伸びている服などありませんか。いわば、“賞味期限切れ”の服は手放しましょう。服の傷みはたくさん着た証拠でもあります。
ヨレた服など昔は若さでカバーできたものでも、50代以降に着ると生活感が出て疲れて見えてしまう、と私自身実感しています。傷んだ服を捨てれば外見も整うので、一石二鳥です」
傷んだ服はカットして、掃除用クロスとして使用することができます。リサイクルして使い切り、処分できたら理想的です。
枚数と“賞味期限”
クローゼットが服であふれる前に、下着類などは「枚数」と“賞味期限”を決めておくことを阿部さんは推奨します。
「服や下着の数を決めておくと、衝動買いを防げるメリットもあります。よく『捨てどきがわからない』との声を聞きますが、私は肌着は最低限の枚数しか持たず、『1年』と“賞味期限”を決めて毎年年末に買い替えています」
肌着以外の服でも、“賞味期限”を「1年」「3年」「5年」の中から選んで設定しておくと、手放しやすくなるといいます。
残す服は「3着ずつ」に
外出着などの洋服の片づけは、どのような基準で選別すればいいでしょうか。
「まず、洋服を手放すとき、『着られる服』ではなく『着たい服』を基準に残しましょう。私は、本当に好きな『季節ごとアイテム別3着』に絞るようにした結果、服を選ぶ時間と服代の節約ができました。さらに、クローゼットにも余裕ができ、管理が楽になりました」
さらに阿部さんは、「家で洗える服」だけしか持たないことを決めたそうです。
「スーツもダウンコートも家で洗濯し、常に気持ちよく着られ、さらなる時短、節約、管理いらずを実感しています。靴や服を手放すことで得られるメリットは、想像以上に大きいのです」
◆教えてくれたのは:整理収納アドバイザー、フリーアナウンサー・阿部静子さん

宮城県仙台市生まれ。旅行会社の添乗員、航空会社地上職を経てフリーアナウンサーに。28歳の時にミヤギテレビ『OH!バンデス』初代リポーターになり、結婚・出産を経験しながら16年務めた。49歳で体調不良により休養したのを機に整理収納アドバイザーの資格を取得し、講演・講座を中心に活動を始める。「すぐ片づけたくなる」「ラクにできる」「ハッピーになれる」片づけメソッドが人気で、5年間で6000人以上の指導を行う。今年5月、『だから、50歳から片づける:「思い出のもの」は捨てなくていい』(CCCメディアハウス)を出版。https://ameblo.jp/shizuko-happylife/