秋も深まり、日増しに肌寒さを感じるようになりました。すでに暖房器具を使い始めている人、買い替えや追加購入を検討している人もいるのではないでしょうか。実は暖房器具にもエアコンからファンヒーター、昔ながらのこたつまで多岐にわたり、それぞれ得意不得意があります。何をどう使うとより“快適に”暖まるのか、家電ライターの田中真紀子さんに教えてもらいました。
空気を乾燥させるが、部屋全体を素早く暖められる「対流式」
まず暖房器具を選ぶ前に、2つの暖め方があることを知ってほしい、と田中さん。
「暖房器具は、暖め方の方式によって『対流式』と『輻射式』に大別されます。対流式とは、内部で温めた空気を風で送り出すもので、対流を起こしながら部屋全体を暖めるタイプ。家電でいうとエアコンやファンヒーターが該当し、素早く暖まるメリットがある一方で、風によって乾燥したり、ホコリが舞い上がるなどのデメリットがあります」(田中さん・以下同)
「輻射式」は近くにいる人を芯から温めるが、空間全体を暖めるのは苦手
他方、「輻射式」とは、電気ストーブやオイルヒーターなど、赤外線が発する輻射熱が人や壁、床などの物体を温めるタイプ。
「こちらは風を起こしません。特に遠赤外線ヒーターなどヒーター管が赤くなるタイプは、近くにいる人を芯から温めてくれますが、空間全体を暖めるのは苦手。オイルヒーターやオイルレスヒーターは床や壁を温めることで、部屋全体をじんわり暖めることができます」
場所によって暖房器具の使い分けを
田中さんは、「対流式」と「輻射式」をうまく組み合わせることをおすすめしています。
「暖房を効率よく行うには、『対流式』と『輻射式』を組み合わせるのがベター。例えば部屋全体をエアコン(対流式)で暖めつつ、人が集まるソファの近くに遠赤外線ヒーター(輻射式)を置くと、ぽかぽか心地よく過ごせます。また寝室にオイルヒーター(輻射式)を使いたい場合は、立ち上がりが遅い弱点をカバーするため、寝るまではファンヒーター(対流式)でサポートする、といった使い方がおすすめです。
暖房器具によって得意不得意分野は異なります。どの部屋でどう使うかを想定したうえで、選ぶとよいでしょう」
場所や目的に応じて、次のような選び方もあります。
エアコン:省エネ性が高いエアコンは、広い部屋でサーキュレーターと併用
「リビングなどの広い部屋全体を暖め続けたいなら、省エネ性が高いエアコンがベスト。暖気は上に溜まりやすいため、吹き出し口は下に向けて使いましょう。さらにサーキュレーターを使って上に溜まった空気を循環させることができれば、より快適かつ省エネになります」
ファンヒーター:すぐに暖まりたいときはファンヒーターを
「エアコンは立ち上がりに時間がかかるのに対し、ファンヒーターは速暖性が高いため、すぐに暖まりたいときに便利。ただし消費電力が高く電気代がかかるため、朝晩しか使わない寝室や就学している子供部屋などに使うのがおすすめ。加湿機能付きが選べるのも、ファンヒーターならでは」
遠赤外線ヒーター:デスクワークや台所作業で体が冷えるときは遠赤外線ヒーター
「エアコン暖房はつけているけれど、寒さが気になるというときは、人を直接温めてくれる遠赤外線ヒーターがお役立ち。体の芯からじんわり温めてくれます。キッチンに立っているとき、デスクワークをしているときなど、そのときいる場所に移動させて使うといいでしょう」
電気毛布・電気カーペット・こたつ:1人で過ごすときは電気毛布やこたつが経済的
「意外と電気代が安いのが、電気毛布や電気カーペット、こたつです。機種やサイズ、室温により大きく異なりますが、エアコン暖房を1時間使用した場合の電気代が約20円だとしたら、ファンヒーターは約30円、電気毛布やこたつは約10円というのが目安です。自宅で1人で過ごすときは電気毛布にくるまったり、こたつを併用してエアコンの設定温度を下げるという方法もありです」
なお、電気代の目安を知りたいときは、手持ちの家電の取扱説明書、あるいはHPの商品紹介ページをチェック。製品によっては「1時間あたりの電気代の目安」が書かれています。記載がなければ、消費電力を見てみましょう。「消費電力(kW)×31円(※)=1時間あたりの電気代」の計算式に当てはめれば電気代の目安が分かります。
※公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が2022年7月に定めた目安単価
上記を踏まえた、田中さんイチオシの暖房器具はこちらの3つ。