
屋外の外壁などには、高圧の水で汚れを洗い落とす高圧洗浄機が人気ですが、屋内の汚れ落としには、スチームクリーナーが効果的だとか。両者の機能はどう違うのでしょうか? スチームクリーナーは屋内のどこに使えて、どれほど汚れが落ちるのでしょうか? 家電ライターの田中真紀子さんに聞きました。
スチームクリーナーと高圧洗浄機はどう使い分ける?
まず、スチームクリーナーとはどういうもので、高圧洗浄機とはどう違うのか、解説してもらいました。

「高圧洗浄機との違いが分かりにくい人も多いと思いますが、実際は仕組みがまったく異なります。高圧洗浄機は、水圧の高い水を噴射し、その勢いで汚れを落とすもので、表面についた泥汚れや軽いぬめりを落とすことができます。外壁やテラスの床など、主に屋外で使うことを想定して作られています。
対して、スチームクリーナーは、高温のスチームを噴射して、油汚れやカビなどを落とすことができます。使い方としては、スチームアイロンのように本体内部に給水し、水を温めて高温のスチーム(蒸気)を発生します。このスチームの力で汚れを浮かせて取り除くのです」(田中さん・以下同)
両者では掃除する対象が異なるため、できれば両方持っているほうが活用できる範囲は広がるといいます。
「いずれも、初心者向けモデルからコンパクトタイプ、高機能モデルまで幅広く用意されています。重きを置く方は高機能モデルを選ぶなど、バランスよく選ぶといいかもしれません」
洗浄力と除菌力を優先するならボイラー式、手軽に使いたいならパネル式を
スチームクリーナーの中には、「ボイラー式」と「パネル式」、主に2つの加熱方式があります。
「スチーム温度が高いのが『ボイラー式』。タンク内に圧力をかけてお湯を沸かして熱湯にするため、100℃の高温かつ高圧なスチームを噴出でき、高い洗浄効果が得られるほか、除菌効果も期待できます。
ただし、ヒートアップ時間といわれる立ち上がり時間が長く、内部が高圧になるため温度が下がるまでタンクが開けられず、途中で給水ができません。また、洗浄効果の高いボイラー式は本体が重くなる傾向にあり、取り回しにくいのも難点。さらに熱いスチームが出るため、触れないように注意が必要です。
一方の『パネル式』は、熱したパネルに水を通した瞬間に熱湯を作るため、ボイラー式に比べて温度が低めですが、お湯を沸かすわけではないので立ち上がりが早く、途中で給水も可能。コンパクトで価格もリーズナブルなものが多いです」
共通して、洗剤なしで汚れが落とせる点が安心だそう。例えば洗剤を洗い落とす作業がしづらい浴室の天井や奥まった場所をきれいにするには最適です。
スチームクリーナーが屋内で使える範囲は広い
では、スチームクリーナーはどんな場所に使えるのでしょうか。
床の清掃や除菌に
「スチームクリーナーにはいろいろなアタッチメントがあり、掃除場所によって付け替えることができます」と、田中さん。
まず便利なのは、床の清掃や除菌。
「フロアノズルにクロスを取り付け、高温のスチームを噴出しながらフロアワイパーのように床を掃除していくだけです。スチームなので瞬間的に乾き、床が濡れることはありません。ただし、コーティングしていない無垢フローリング、シートフローリング、ワックスの密着不良や経年劣化などがあるフローリングなど、床材によっては使う頻度に注意が必要なものも。事前に確認しましょう」
キッチンまわりの油汚れに
次は、キッチンまわり。

「ハンディ仕様にすることで、キッチンまわりの油汚れを浮かせて落とすこともできます。換気扇まわりや壁、IHクッキングヒーターなどに便利です」
浴室のカビや菌の除去にも
「ボイラー式の場合、100℃の高温で除菌できることから、浴室のカビや菌も落とすことができます。ただし、根を張ったカビは簡単に落ちませんので、カビが生えにくい状況を作る目的で定期的に使うことをおすすめします。そのほか水栓まわりの水垢も、こびりつく前ならスチームでサッと落とすことができます」
カーペットやソファなどの布製品に

「そのほか衣類や布製品の除菌にも使えるため、カーペットやソファ、車やチャイルドシートなどのシート類に使うのもいいでしょう」
それでは、田中さんにおすすめのスチームクリーナーを2点、挙げてもらいましょう。どちらも洗浄・除菌力が高いモデルです。
【1】ケルヒャー『スチームクリーナー SC 3 EasyFix』

高い洗浄・除菌力に加え、手早く使えるのがこちら。
ヒートアップ時間はわずか35秒で、手軽に使える

「加熱方式に従来のボイラー式とは異なる『フローヒーター式』を採用することで、通常180秒から360秒かかっていたヒートアップ時間を35秒と大幅に短縮。内部ヒーターの温度を最高180℃まで上げることで、100℃の高温スチームを噴出することができます。
途中で水足しも可能。それでいて除菌力はボイラー式同様に高く、ウイルスは99.99%除去、一般家庭のバクテリアやカビも99.99%除去が可能(第三者機関調べ。一定の使用条件による)。フローリング用やカーペット用・窓用・スポット用のノズルが付属され、家中の掃除に使えます。一回の給水による連続運転時間は約30分もあるため、集中して掃除したい大掃除でも活躍するでしょう」

場所に応じてアタッチメントを付け替えれば、スチームアイロンのように、本体に給水するだけですぐに使える手軽さも魅力です。
【2】アイリスオーヤマ『スチームクリーナーハンディタイプ STM-305R-C』

スチームクリーナーの洗浄力を手軽に取り入れたいならこちらのハンディタイプを。
1.7kgの軽量&コンパクトなハンディタイプで各所を手軽に掃除できる

重量約1.7kgと、軽量かつコンパクト。片手で持ち運びながらキッチンなどの細かい部分を手軽に掃除する便利アイテムとして、おすすめです。ボイラー式なのでスチーム温度は約100℃の高温をキープ。蓄積した鍋の焦げつきを落とす真鍮ブラシや、先端が曲がってトイレのフチ裏に届きやすいL字型のアングルノズルなど、ポイント掃除に使いやすいアタッチメントが8種類もあり、充実しています。
連続使用時間は12分。充電をこまめにしながら日常的に気になった箇所にササッと使いたい」
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実際記者も、フローヒーター式のスチームクリーナーを浴室掃除で使ったところ、それまで塩素系漂白剤や酸素系漂白剤など、強力な漂白剤を使って落としていた “ピンクカビ”(実際は「ロドトルラと呼ばれる酵母菌」)が100℃の高温を当てただけであっという間に落ちました。
もちろん、台所の蛇口まわりのぬめりもきれいに。ただし、浴室に古くからある黒カビは除去しきれかったので、酸素系漂白剤などと併用しつつ、必要に応じて日常的にカビや菌の発生・繁殖予防として使う方法がよさそうです。
◆教えてくれたのは:家電ライター・田中真紀子さん

白物家電や美容家電を中心に家電に詳しいライター。雑誌やウェブなど多数のメディアで、新製品などをレビューしている。https://makiko-beautifullife.com
取材・文/桜田容子
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