健康・医療

《記憶には6時間以上の睡眠が必要》精神科医・樺沢紫苑さんが指南する、脳のベストパフォーマンスを引き出す方法「寝る15分前は記憶のゴールデンタイム」

樺沢紫苑さんが考える。脳のベストパフォーマンスを引き出す方法とは?
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最も記憶に適した時間帯はいつでしょう? 答えは夜です。ですが、記憶の定着には睡眠が欠かせず、睡眠を削ってまで勉強するのは逆効果。脳のベストパフォーマンスを引き出す「睡眠」との賢い付き合い方とは? 脳の仕組みを研究した精神科医の樺沢紫苑さんが、「記憶」と「学び」について20年以上の試行錯誤をわかりやすくノウハウとしてまとめた『記憶脳』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。

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夢を見ることで記憶の整理と定着ができる

夜、寝ているときに「夢」を見ます。

なぜ、人間は夢を見るのでしょう?

これにはいろいろな説がありますが、「夢」によって記憶の整理、定着が行われているという説が最有力です。

日中の記憶をしっかりと定着させるには、6時間以上の睡眠が必要です。ハーバード大学のスティックゴールド博士は、新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが不可欠だという研究結果を2000年に発表しています。

睡眠時間を3時間や4時間に削って勉強したり、徹夜で勉強したりしても、記憶は定着しないし、学習効果も得られないということです。

睡眠時間をきちんととると、その分勉強に使える時間が減ってしまい、不安に思うかもしれません。

しかし実は、睡眠を適切にとることによって、効率的に記憶効果、学習効果を得ることができるのです。

徹夜・睡眠不足は脳のパフォーマンスを低下させる

試験前日の夜は、「徹夜で勉強するのが当然!」という人もいるでしょうが、間に「睡眠」をはさんでいないので、試験が終わった途端に、覚えたはずの事柄のほとんどが忘れ去られてしまいます。これでは、いくら頑張って勉強しても、勉強の成果が積み上がりません。

徹夜、睡眠不足は脳のパフォーマンスを低下させる(Ph/photoAC)
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また、徹夜は脳のパフォーマンスも著しく低下させます。

例えば、徹夜が認知能力の低下を引き起こすということは、数々の実験から明らかになっています。

あるいは、徹夜でなくとも、睡眠を少し削るだけでも、脳に対する悪影響は深刻です。国立精神・神経医療研究センターの三島和夫博士の研究によると、6時間睡眠を続けたところ、10日目あたりから、認知能力は継続して24時間睡眠をとらなかったとき(一晩の徹夜)と同程度まで下がりました。

徹夜、あるいは睡眠不足によって記憶力だけが下がるのではなく、ほとんどの脳機能が低下するのです。

脳のパフォーマンスが低下したこのような状況で試験本番にのぞんで、実力が発揮できるはずがありません。何ヶ月もかけて記憶し、長期記憶化できている事柄ですら思い出せなくなってしまいます。

徹夜すると脳細胞が死ぬ!?

「徹夜すると脳細胞が死ぬ」という話をときどき聞きますが、これは本当でしょうか?

ラットを5日間睡眠遮断したところ、脳下垂体の細胞の一部が細胞死を起こした、という研究があります。また別の研究では、96時間の睡眠遮断をしたラットでは、海馬で新しいニューロンの産生がほとんど行われなくなりました。

さらに睡眠不足が続くと、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。コルチゾールの高値が続くと、海馬の神経細胞にダメージを与え、海馬の神経細胞を殺します。

5歳から18歳までの290人を調べた東北大学で行われた研究では、睡眠時間が短い子供は、脳の海馬の体積が小さかったと報告されています。

1回の徹夜でどれだけ脳細胞が死滅するのかは定かではありませんが、継続的な睡眠不足が記憶の定着の主役を演じる海馬に対して、著しい悪影響を及ぼしていることは間違いないようです。

全く眠らない、徹夜というのは論外。6時間を切る睡眠不足程度でも、記憶や認知機能に影響を与えるわけですから、記憶力を高めたければしっかりと眠るというのは、脳にベストパフォーマンスを発揮させるための大原則となります。