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中高年の娘と高齢の母、年をとるほど揉め事が増えるのはなぜ? いさかいを避けるには「責任・感情・時間・空間」の境界線を意識すること

向き合う人
年齢とともに変化していく母娘の距離の悩みに専門家がアドバイス(写真/Photo AC)
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小さな頃は頼りになると安心した母の姿が、年を重ねるとともに変化していく…。このままではお互い疲弊するばかりと、老いた母との関係性に悩む人は多い。穏やかで良好な関係性になれないものか。その対策を専門家に聞きました。

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年をとるほど、母と娘の「揉め事」が増えるのはなぜだろうか。メンタルケア・コンサルタント・大美賀直子さんが解説する。

「母親世代は、だんだん『死』を身近に感じ始める年頃。脳や体の衰えも加わり、今後への不安をいっそう募らせながら暮らしています。一方の娘世代も、子供の進路や自分たちの老後、更年期などに直面する時期。それぞれが問題を抱え、『私の方が大変だ』と感じています。この年代の母娘の間で、いざこざが起きない方が珍しいくらいです」

諍いを避ける方法は、「戦わず、受け止める」に尽きるという。

「会話はキャッチボールといわれるように、相手からの球を受け、相手が取りやすい球を投げることで会話は続きますよね。

でも、母親との会話はどうでしょう? キャッチボールではなく、本気の試合になっていませんか? 相手を負かそうと剛速球を投げれば、相手も『負けるもんか』と思うでしょう。『老化という自然現象』で頑なになっているところに『あなたの正論』を投げつけても、より頑なになるだけ。なので、母親が言うことに同意できてもできなくても『なるほど、そう思うのね』と、ただ受け止め、聞き流すのです」(大美賀さん・以下同)

これは、義母と嫁の関係でも同様だ。そして、先にも紹介したが、日常ではお互いの「境界線」を意識することが、肝要になってくる。

「特に大事なのが『責任・感情・時間・空間』の境界線です。干渉しすぎるなど、相手の『責任』の境界線に介入するのはNGです。母親がそうしてきたら、その都度冷静に『私の責任でやるから大丈夫よ』と言い続けましょう」

「お母さんの感情に寄り添ってあげなきゃ」と無理に共感するのも、感情の境界線を越えた行為。「受け止める」だけでいいという。

「同居する母娘は、めいめいに過ごす『空間』と『時間』を確保することがとても大事。
境界線を引くといっても、突き放すわけではありません。お互いが消耗しない距離感を持って接することで、もっと冷静に相手の話を聞けたり、お互いを大切に思えたりするのです」

自分が嫌だと思う母の姿は、将来の自分かもしれない。「他人(母)は変えられないが、自分(娘)は変われる」を肝に銘じ、キャッチボールを心がけてみませんか。

◆教えてくれたのは:メンタルケア・コンサルタント・大美賀直子さん

公認心理師。情報サイト「All About」にてストレスのガイドを務める。最新刊『仕事の壁はすべて「心理学」が解決してくれる』(青春出版社)では監修を担当。https://www.mentalcare555.com/

※女性セブン2025年11月6日号