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笑福亭鶴瓶、アンミカに語る盟友・中村勘三郎さんとの秘話「ぼくの挑戦を認めてくれたのが心強かった」

笑福亭鶴瓶&アンミカ
笑福亭鶴瓶さん&アンミカさん(撮影/田中智久)
写真3枚

モデル・俳優のアンミカさんが「ずっと会いたかった人」をゲストに招き、軽やかに奥深く人生を語らう注目連載「アンミカのカラフル幸福論」。第10回のゲストとなる落語家・笑福亭鶴瓶さんです。前編では、鶴瓶さんの温かな心の原点には、人との縁を大事にするご両親の存在があることをうかがいました。後編では、鶴瓶さんの盟友秘話、落語にかける思い、そして胸がきゅんとする奥さまとのなれそめまで、心がホッとするお話が満載です!

ぼくの挑戦を勘三郎が認めてくれたのが心強かった

アンミカ:前編では、『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)を中心に、一般のかたとの交流をうかがいましたが、芸能界の交友関係も幅広い鶴瓶さん。印象的なつきあいを挙げるとすれば、どなたが思い浮かびますか。

鶴瓶:勘三郎(故・十八代目中村勘三郎さん)ですね。あの人は素晴らしい人やったと思う。言われへん思い出ばっかりやけど(笑い)。

アンミカ:深い間柄だけに…。

鶴瓶:華麗なる家柄に生まれ育っても、無垢な人いうか、まっすぐな人間力ある人で、ほんますごかったですね。

自分の話になりますけど、ぼくは50代に入ってから、真面目に落語をやりだしたんですよ。そしたら勘三郎に「あなたはそのままでいいんだよ。日常を話しているいまがいちばんいい。なんで落語をするんだよ!」って怒られたことがありました。彼は、ぼくのフリートークのファンだったみたいで。アンミカと一緒で、『パペポ』(『鶴瓶上岡のパペポTV』/読売テレビ)を気に入ってくれていた。

アンミカ:そのままの鶴瓶さんのおしゃべりを愛していらしたんですね。

鶴瓶:勘三郎にそう言われて、「やかましいわアホ!」ってぼくは返したんやけど(笑い)。でもね、あるとき落語の会にフラッと勘三郎が足を運んでくれたんですよ。それで見た後に、ぼくに一言「やっぱりいいよ、あんた」って言ってくれて。あれが自信になったね。あんなすごい人にさ、いいよって言われるって。

笑福亭鶴瓶さん
笑福亭鶴瓶さん(撮影/田中智久)
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アンミカ:友であり、尊敬し合う理解者であり、いい関係ですね。

鶴瓶:そういう言葉があったからこそ、『パペポ』でしていたような実話を落語の手法で聴かせる『青木先生』『ALWAYS~お母ちゃんの笑顔~』なんかの私落語ができたんです。ぼくが挑戦していることを、勘三郎が認めてくれたのが心強かった。

真面目にコツコツと。映像の演技と落語の違い

鶴瓶:あとは(やしき)たかじんともよく飲んだね。京都の深夜放送で出会った後、彼は大阪で売れるべくして売れて。全国の番組を一緒にやろうと約束してたのに、早いこと死によったよね。

アンミカ:私もたかじんさんが大好きで、番組にもやっと呼んでいただけるようになって、ここからご一緒させていただけたら…というタイミングでお亡くなりになられて…。だから、たかじんさんのお話をたくさん聞かせていただきたいです。

鶴瓶:こっちも言われへんことばっかり(笑い)。まだどっちも飯を食われへん駆け出しの時代、朝まで飲んだ帰りに腹が減ってたんやけど、当時は朝方に開いてる店がなくて。でもパッと見たらドーナツ屋の外にあったゴミ箱にドーナツが大量に廃棄されてあったんですよ。当時のぼくと同じような鳥の巣みたいな髪をした路上生活者のおっちゃんが、それを拾っててん。

アンミカ:先客がいらっしゃった。

鶴瓶:そうそう。それで、たかじんと2人で「ちょっとちょうだい」と言って一緒に食べようとしたら、そのおっちゃんがクルッと振り返って、「兄ちゃん、素人が手出すと腹壊すで」って。それ聞いて2人でゲラゲラ笑ってたな。そんな感じでよう朝まで飲んでた。

アンミカ:いまの時代では考えられないエピソード! たかじんさんみたいに豪快というか、むちゃくちゃする人が少なくなった気がしています。

鶴瓶:そういう意味じゃ、ウチの師匠の(六代目笑福亭)松鶴はむちゃくちゃな人やったで。

アンミカ:鶴瓶さんは師匠のお墓参りを毎月欠かさないそうで。

鶴瓶:生きていれば恩返しできるけど、亡くなっているでしょう。だから師匠に会うために墓参りをしているんです。それぐらいしかできないからなあ。

アンミカ:親でも年1回になりがちのところ、月1回ですものね。鶴瓶さんが義理堅いというのもあるでしょうし、それほど師匠に深く恩義を感じていらっしゃるから。

鶴瓶:この世界へ入れてくれた人やから。上方落語界の四天王と言われた松鶴がいて、いまのぼくがあるんやから。だから家内と一緒に行くんですよ。そうすると、心がスッとするんです。

アンミカ:手を合わせて心の中で師匠といろんなお話をされたり。

鶴瓶:落語の話はします。江戸落語は全国に広がっていますが、上方は規模がまだ小さい。多くの人に上方の落語も知ってほしいし、愛してもらいたい。

松鶴、(三代目桂)米朝、(三代目桂)春団治、(五代目桂)文枝。この四天王は、重責を果たしはって亡くなられた。ぼくらも生きてる限り、上方落語のために、とにかくやらんと。だからこそ墓前に立つと、まだまだ頑張らないとな、という気持ちになりますね。

アンミカ:鶴瓶さんがたくさんテレビに出られていることで、上方落語の認知度向上にもつながっていると思います。映像のお芝居にも早くから取り組まれてきましたよね。

鶴瓶:映像の演技は望んでというよりも、縁がつながっていってね。

アンミカ:主演された映画『ディア・ドクター』(2009年)はいまでも考えさせられる深いテーマです。

鶴瓶:監督の西川(美和)さんが主役を誰にしようか考えていたときに、是枝(裕和)さんがぼくと(立川)志の輔さんと(春風亭)昇太さんでやった街歩きの番組を偶然見て、「この人どう?」とすすめてくれたそうです。

アンミカ:その鶴の一声で決まったとは! 西川さんが「鶴瓶さんはせりふ覚えが6割くらいで現場に入られるんだけど、それが味になる素敵な役者さん」と話されていたんだとか。

鶴瓶:ホンマはきっちり覚えないとあかんねんけど…。西川さんもそうやし、『おとうと』(2010年)の監督の山田洋次さんも、きっちりしてはるのかなと思ったらそうでもない。ぼくが演技していると、カメラの近くで「ハッハー」と笑うねん。その声、映像に入るやろ! ってくらいの声で。

アンミカ:明るい現場!

鶴瓶:だからってわけじゃないけど、あんまり考えないようにしていてて。使おうと思って声かけてくれたんだから、無理に変えすぎずにこのままでええかって。

アンミカ:落語と映像での演技では、大きな違いはありますか?

鶴瓶:落語はきっちり覚えないとお客さんに聴かせられないですね。それでいて、主役も端役もひとりでやるから、同じ演目でも、落語家によって「ここ」っていう盛り上げ方も違うからね。

アンミカ:だからこそ、オリジナリティーを出すために、ものすごく稽古を積まれるんですね。

鶴瓶:自分のスイッチを見つけるまで、なんぼでも落語の稽古をします。映像のお芝居は相手との対話だから、その場その場で呼吸を合わせて生まれてくるものを大事にしたい。落語はビッチリ稽古をして真面目にコツコツやね。

アンミカ:こんなに忙しいのに、いつ稽古をしているんですか。

鶴瓶:稽古場で稽古もするし、タクシーの中はいい稽古場ですね。小さい声でやるんですけどね。「らくだ」なんて演目は柄が悪いんですよ。だいぶ汚い関西弁も出てくる。それで目的地着いたら、運転手さんに「怖かったです…」って言われる始末や。

アンミカ:誰かと電話でずっと揉めてるのかと思いますもんね。

鶴瓶:そう。だからちゃんと「稽古しますね」って言うようにしてるのよ。でも運転手も忘れるんだろうね。乗車中に「旦那、旦那」って言うと「なんです?」って。どの世界にタクシーの運転手を旦那って呼ぶやつがおんねん!

アンミカ:あははは。でも移動時間も無駄にしない鶴瓶さん、ほんとにパワフルです。

いまでも鮮明に語れる、妻との青春の日々

アンミカ:さきほど師匠のお墓参りで奥さまのお話がちらっと出ましたけど、なれそめをうかがってもいいですか。

鶴瓶:ぼくは大阪の浪速高校というやんちゃな男子校出身で、“いちびり”なやつやったんです。

アンミカ:関西でいう、お調子者タイプですね。

アンミカさん
アンミカさん(撮影/田中智久)
写真3枚

鶴瓶:そうや。ほんで大学受験したとき、試験前に食堂へ集められたんですよ。で、自分でもなんであんなことしたかわからんけど、急に立って「ここへ集まってくれたのはほかでもない!」と叫んだ。

アンミカ:ほかの受験生は驚いて、鶴瓶さんへ視線が集まりますよね。

鶴瓶:みんながバッと見たと思って、演説を続けるわけ。「ここにはいろんな人がいる。こんなして、はしゃいでいるおれみたいなアホなやつがおる。そしてカレーを食べている人がおる」と、グッて目の前にいた女性の頭をつかんだんです。そしたらその子が「てへっ」なんて、おどけてぺろっと舌を出したんです。

アンミカ:なんて、おちゃめな。

鶴瓶:かわいらしいなとポッとしてね。もう二度と会わんと思ったのに、大学に入学した後にキャンパスで見かけて。絶対に落語研究会へ入れようと声をかけた流れで、つきあうことになったんですわ。それがうちのヨメです。

アンミカ:すごい! 初カノですか?

鶴瓶:そうやねん。下宿に帰るたんびに「キスしたか?」と同級生に聞かれるんやけど、男子校出身やったから手も握った経験がないし、わからない。でもどっかでキスせなあかんと思うやんか。雨の日に並んで歩いていたら、彼女の傘が風にあおられて、顔がぼくの目の前に来たんよね。頭の中で「いまや!」言うて唇を近づけたら、「うわーっ!」って後ろに逃げられてしまった。

アンミカ:それはしゅんとしちゃいます…。

鶴瓶:ほんでわれに返って。「ごめんなさい、許してください、変なことしました」と歩きながらずっと謝った。

アンミカ:金婚式を迎えられてもこうして鮮明に記憶に残っているなんて、ロマンチックです。

鶴瓶:謝ってばっかや。初めての旅行で奈良の旅館に行ったときも、雨の日に失敗した記憶があったから口にキスはやめた方がいいと思って、勢いよくアゴにキスしたら、加減が強すぎたんか彼女のアゴが黒ずんでしまって。謝りながら大阪に帰りました。彼女は実家の四国に戻る予定があったから、大阪で別れるはずやったんだけど離れられなくて、神戸まで送って。それでも離れたくなくて、岡山まで行って。それで、とにかく四国まで船で渡って向こうの実家の前まで行って、で、気づいたときには10日間泊まってた。

アンミカ:愛が強すぎる!(笑い)いまでもずっと奥さまを愛してらっしゃるのが、おふたりと食事をさせていただくときも伝わってきます。

鶴瓶:大好きやし、あの人がおったからここまで来られた。

アンミカ:原動力みたいな。

鶴瓶:本当にそうです。もっとこいつのことを幸せにしたろ、っていうのが、いまも昔も仕事を続けるいちばんの理由です。ツレには感謝しかないです。

アンミカ:もう最高です。言葉にしてもらえるのが、どれだけ励みになるか。

鶴瓶:アンミカんところのテディも言葉にするタイプでしょ。

アンミカ:アメリカ人なので、めっちゃ言葉にしてくれます。

鶴瓶:言葉に出すのは大事やね。

アンミカ:テディが鶴瓶さん夫妻とゴルフに行きたいって言っていたので、それも言葉にしておきます!

鶴瓶:それはいつでも行こや!

笑福亭鶴瓶さんのHLLSPD

鶴瓶さんに、Happy、Lucky、Love、Smile、Peace、Dreamについて答えてもらいました。今回はSmile、Peace、Dreamについて直撃!

Smile:あなたを笑顔にする宝物は?

奥さん。

Peace:心が穏やかになる趣味や場所は?

ゴルフ。

Dream:子供の頃の夢は?

母親を喜ばせたくて外交官と嘘をついてました。

◆モデル・俳優・アンミカ

アン ミカ/1972年生まれ。1993年パリコレ初参加。モデル業以外にもテレビ・ラジオMC、俳優、歌手、テレビCM出演と多彩に活躍。「日本化粧品検定1級」など20個以上の資格を生かし、化粧品、洋服、ジュエリーなどをプロデュース。

◆落語家・笑福亭鶴瓶

しょうふくてい つるべ/1951年生まれ。大学を中退し、六代目笑福亭松鶴に弟子入り。関西で活動後、東京に進出。数多くのバラエティー番組で活躍するほか、俳優としても人気を博す。タレント活動と並行して、自身の独演会や「鶴瓶噺」など幅広く活動中。

 構成:渡部美也 衣装:ブラウス/MANGO スカート/Lauren Ralph Lauren ピアス /en VOGUE(アンミカさん)

※女性セブン2026年4月9日号

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