
「なんだか寝付きが悪い」「夏バテで食欲がない」「めまいがする」──私たちの健康について、ささいなことから大きな不安まであらゆる相談に応じてくれて、介護や看取りまで面倒を見てくれる。そんな頼もしい人生の伴走者となる「かかりつけ医」と出会えるかどうかは、あなたや家族が安心して老後を暮らせるかどうかを大きく左右する。【全3回の第1回】
「母はどんなことでも、かかりつけの先生に相談していました」。そう振り返るのは、2年前に母を看取ったIさん(58才/女性)だ。
「体調に不安があると、いつも近所の診療所の先生を頼りにしていました。家族には言わないようなちょっとした困りごとまで相談していたようで、離れて暮らす私よりも先生の方が、母のことをよく理解してくれていたと思います」
約10年前にIさんの母がめまいを訴えて受診した際、医師は高血圧など日頃の健康状態を踏まえ、脳出血を早期に発見して、大学病院を受診することができたそうだ。幸い症状は軽く、薬による治療で回復したという。
「足が悪くなって通院が難しくなると、自宅へ診察に来てくれるようになり、最期まで自宅で過ごしたいという母の希望通り、看取りまで支えてもらいました。母も私も安心して暮らせていたのは、先生がいてくれたおかげです」(Iさん)
こうした“生涯のパートナー”ともいえる存在が、かかりつけ医だ。かかりつけ医の登録が義務づけられているイギリスやフランスなどの欧州に比べ、日本ではこれまでそれほど重要視されてこなかったが、2025年に厚労省が「かかりつけ医機能報告制度」をスタート。これに伴い、今年からはかかりつけ医選びに必要な情報を、厚労省が運用する「医療情報ネット(ナビイ)」のホームページで誰でも調べられるようになった。
かかりつけ医の存在が健康寿命延伸、望ましい最期に大きく寄与すると、必要性と需要が高まっているのだ。名古屋学芸大学客員教授で老年科専門医の下方浩史さんが指摘する。
「かかりつけ医は、日常的な体調不良の相談から、高血圧や糖尿病などの慢性疾患、服薬管理から病気の予防まで、何でも相談できる存在です。ただし、自分に合った医師を見つけるのは意外と難しい。健康なうちからじっくり時間をかけて探しておくことが大切です」