《80代で失敗しないために》70代でやっておくべきこと・お金編 残高を1年前と比較する「預金簿」で見える化し、老後資産の不安を解消 遺言書を作ることで心の整理を

人生100年時代のいま、70〜80代は人生後半戦の真っただ中。なかでも大きなターニングポイントとなるのが「80才」だ。“80才の壁”を乗り越えて健康で自分らしい老後を手に入れるためには、気力も体力もある70代の過ごし方が重要だ。そこで、80代を失敗しないために、70代でやっておくべきことを紹介。今回はお金編をレポートする。【全3回の第2回】
大事なのは、“持っているお金”と“減るお金”を知ること
お金の使い方にも「80才の壁」は存在する。高齢者専門の精神科医である和田秀樹さんは、こう話す。
「80才を超えると体が弱り、旅行やグルメなどにお金を使いたくても使えなくなる『消費の壁』がやってきます。老後のためにと節約してきたのに、いざ使いたいときに使えなくては意味がない。70代のうちにやりたいことにお金を使うべきです」
とはいえ、老後資金が不安という人は多いはず。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは「大事なのは、“持っているお金”と“減るお金”を知ること」と話す。
「老後が不安になるのは、貯金がいくら減っていくのかを把握していないからです。1年に一度、預金口座の残高を書き留める『貯金簿R』を作ってそれを1年前と比較すれば、年間の赤字額を把握できる。手持ちの老後資金がいつ尽きるかを試算できて、80才以降の生活設計を立てやすくなります。年金生活の夫婦なら、夫の死後にもらえる年金額を具体的に知っておくことも重要です。できれば年金事務所で確認しておきましょう」

95才までに老後資金が底をつきそうなら支出を見直す、手頃な物件に引っ越すなど現実的な対策を講じよう。それでも不安が募るなら、収入を増やすこともひとつの策。70代は働いてお金を得る最後のチャンスだ。
「自宅近くの飲食店や高齢者施設などで働く70代はたくさんいます。体の負担にならない程度で月に2万〜4万円でも稼げると心の余裕になる。シルバー人材センターに登録すれば仕事を斡旋してもらえることもあるので一度相談してみるといいですね」(畠中さん)
保険や株は手じまいすることも検討
ただし、老後を助ける金融資産には落とし穴もある。最近施設に入居した80才の父を持つ、Bさん(55才)が語る。
「父は昔から株式投資に積極的で、『おれの老後のお金は心配いらない』が口癖でした。ところが、認知症を患い状況が一変。認知機能の低下を理由に証券口座が凍結され、株を売買できなくなったのです。現金が不足し、父が以前から望んでいた高齢者施設への入居は叶いませんでした」
空前の投資ブームのなか、認知症のため株を現金化できず困っている人からの相談は多いと畠中さんは話す。
「資産が多くても認知症発症後は運用資金が多いことが理由で、希望する施設に入れないケースがあります。こうした事態を避けるためにも、75才頃から保有株の一部を売り、定期預金や普通預金など必要なときに使える形で確保しておくことが大切です。本人の代わりに家族などが引き出せる『代理人キャッシュカード』を作っておくと、さらに安心です」
75才を機に保険も見直そう。終活アドバイザーの松尾拓也さんが語る。
「相続税の控除を受けられるというメリットはありますが、死亡保障という観点では子供が独立すれば不要となることが多い。高額療養費制度で医療費も抑えられるので、生活費の負担になる保険は見直しを検討すべきです。解約返戻(へんれい)金がいくらか、特約は何かといった条件を確認することが第一歩です」
“遺言書はまだ早い”と思っても書けば心の整理ができる
資産の見直しに加えて、万が一の備えも進めたい。
「任意後見契約や遺言書は判断能力がしっかりしているうちに準備しないと認められません。
夫がいるから大丈夫と思っていても、突然の病気や介護などで共倒れになってしまう夫婦は多い。手遅れになる前に準備することが望ましい」(松尾さん)
“遺言書はまだ早い”と思うかもしれないが、一度書いてみると心の整理ができる。畠中さんがすすめるのは、自筆の遺言を法務局で保管する「自筆証書遺言書保管制度」の利用だ。
「公証人と証人が立ち会って作成する公正証書遺言より作成が手軽で検認も不要。1通3900円で法務局に預かってもらえます。考えが変わったら何度でも撤回して書き直せることもメリットです」(畠中さん)
(第3回に続く)
※女性セブン2026年10月29日・11月5日号