自分が何をしているか、口でも伝える
私は、夫と過ごす日は、朝食のときに「今日、私は洗濯しながら、エッセイを2本書いて、そのあと、ビーフシチューの仕込みをして、新聞紙をまとめて……」と自分がやることを細かく伝えます。さらに、各フェーズの終了時にも「今、洗濯が終わった。これからシチュー作るね」と報告。
会社では「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)を徹底して仕込まれます。チームワークにおいて、「他人の所作をあまり見ていない男性脳」たちは、ホウレンソウなしには動けないからです。家においても、男性脳相手にホウレンソウは大切です。報告、連絡をしておくと、「妻の大活躍」を把握しているので、ちょっとした頼み事=「新聞紙がうまくまとめられないんだけど、手伝ってくれない?」にも、快く応えてくれます。
ところが、ホウレンソウなしで突然「新聞紙がうまくまとめられないんだけど、手伝ってくれない?」と頼んでも、「俺だって忙しいんだ」と返されてしまう羽目に。夫には妻の仕事を可視化して総量を理解させておき、ホウレンソウすることで理解度を高めておく。気軽に「お茶淹れて」なんて言われないための、そして、あわよくば手伝ってもらうための大事なコツです。
お互いに声をかけない時間を作る
実は、男性の側からも、「家で仕事をしていると、考え事をしている最中に、ちょっとした用事を頼まれる。仕事に集中できなくてつらい」という訴えを聞くようになりました。在宅勤務が増えた今、男女ともに大切なことは、お互いの空間と時間を確保すること。空間をわけることはもちろんですが、何時から何時は話しかけないと決めておきましょう。そうでないと、お互いのタスクに集中できません。
男性脳は考え事をするときに、空間認知の領域を使います。この領域を使うと、視線が遠くなるので、ぼんやりと宙を眺めることになる。女性からすると、ただぼーっとしているように見えるので、「あなた、宅配便、受け取りに出て」などと気軽に声をかけてしまいますが、思考が途切れて戦略がうまく組み立てられなくなってしまい、酷なのです。
互いに声をかけない時間を作ることは、男性にも女性にも大切なこと。「私もあなたの仕事を邪魔しないから、あなたも邪魔しないでね」と。それでも、声をかけてくる夫なら、夫の仕事中にわざとこき使ってみては? 仕事中に声をかけられるのが、どんなにつらいかよくわかるでしょう。それで怒る夫には、足でもくじいて家事ができないフリをしてみるとか。ときにはそんな戦略も必要かもしれませんね。
◆著者:人工知能研究者、脳科学コメンテイター・黒川伊保子
1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、”世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)『思春期のトリセツ』(小学館)『60歳のトリセツ』(扶桑社)など多数。