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「在宅勤務でも夫との会話は増えず。このまま一生一緒にいると思うとゾッとする」55歳妻の悩みに脳科学のプロが示した解決策 

会話している男女
夫婦の会話を増やす方法は?(Ph/AFLO)
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夫婦の間にたちはだかる高くて厚い「壁」――。特にコロナ禍によってさまざまな“夫婦の壁”が浮き彫りになったといいます。そのひとつが「夫婦の会話」による夫婦のトラブル。夫との会話が少ないことに寂しさを感じる妻もいるようです。新刊『夫婦の壁』で、「壁」の実態とそれを乗り越える方法について解説している、脳科学コメンテイター・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんが、夫婦の会話を増やすコツを解説。同書の中から一部抜粋して紹介します。

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【相談】在宅勤務で過ごす時間が増えても会話は増えず……夫婦の会話を復活させるには?

「もともと夫婦の会話は少なく業務連絡程度でしたが、コロナ禍以前は夫の帰宅時間が遅かったこともあり、あまり気にしていませんでした。しかし、夫が在宅勤務になって一緒にいる時間が増えたのにもかかわらず、会話はまったく増えません。このまま一生一緒に過ごすことを考えたらゾッとします。結婚して25年以上経つので、お互いに新鮮さはありませんが、夫婦の会話やコミュニケーションを復活させるにはどうしたらよいでしょうか」(55歳・専業主婦)

【回答】夫婦円満の鍵は、沈黙

夫婦は、会話しないほうが平和なんです(微笑)。だって、互いの脳が、基本「反対側」を選ぶようになっているので、「しみじみとした共感」なんて、ほとんど起こりえないからです。というのも、夫婦は、互いの生存可能性を上げるために、とっさに、相手と違う行動を選択する傾向が強いからです。

たとえば、大きな音が「バン!」と鳴ったら、どちらかが走り出し、どちらかがしゃがみ込む、のように。ふたりだけの関係性で言えば、「どうして、今、それをする」となってストレスなわけですが、システムとして見れば、そのほうが有利。行動のバリエーションが豊富なほど、この男女とその子孫が生き残る可能性は高いから。

会話においてもそう。どちらかが共感型を選択すれば、どちらかが問題解決型を選択する傾向高し。共感してほしくて投げかけたことばに、「それっていつ?」「どうして、そんなことしたんだ?」なんて問い詰められて、あげく「きみも悪いよ」なんて言われたりして。

これ、男女が逆転してもそうなるんです。珍しく夫が共感型を選んだら、いつもは共感型の妻がクールな問題解決型になったりして。妻も夫も、なかなか相手のことばに、「そうそう、わかる。ほんっと、あなたの言う通り」なんて言えない。また、ふたりの意見が一緒だったときも、「ほうら、私(俺)の言ったとおり」とダメ押しする感じになりがち。脳がとっさに反対の答を選ぼうとしている以上、夫婦の間に満ち足りた会話なんて、なかなかありえないわけです。それがわかっているから、多くの夫婦は、やがて対話をしなくなっていくのでしょうね。

「三角形」で会話を増やす

夫婦で対話をしたいのであれば、真っ向から向き合わないで、第三の対象について話すこと。「三角形」を作ることです。たとえば、ペットを飼う、一緒に植物を育てる、食べ歩き、山歩き……どんなことでもいいと思います。共通の趣味がないと、用事を頼んだり、都合を聞いたり、愚痴を言ったり、真っ向から向き合う話題ばかりになり、ギスギスしてきます。

ふたりで心惹かれているものがあれば、「今日、タマがね」とか「庭のバラがそろそろ咲きそうだよ」とか、互いを主語にしない会話が展開できて、意見の衝突が避けられます。夫婦が互いに向き合うのではなく、対象(目標)に向かって一丸となる。そういう意味では、病気やトラブルなどでも功を奏することがあります。逆境のときは、夫婦って、案外絆が強いんですよね。とはいえ、意図的に対象を作るのなら、せっかくだから、嬉しいことや楽しいことを共有しましょうよ。野菜や花を育てる、日本中の城を見に行く、お遍路巡りをするなど、継続してシリーズ化できるものが、特におススメ。「これまでの成果」を思い出し合い、「これからどうするか」の希望を言い合えるので、単発イベントより話題が増えるからです。

男性脳は目標があると活性化するので、単純に旅行をするよりも「日本中の城を見に行く」という大目標があるほうが取り組みやすいものですし。ぜひ、夫婦で共有できることを探してください。

仲の良い夫婦
会話が少ない夫婦は円満?(Ph/GettyImages)
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夫婦円満の本当のコツは「沈黙」

あるいは、「夫と対話がないのがさみしい」なんて言わずに、ことば少ない夫婦生活を、のんびり楽しんじゃってもいいのでは? 以前、夫婦円満のコツは、黙っていることなんだなぁと実感した出来事がありました。

ある日、新幹線に乗ったら、ツアー客ばかりの車両で、これはしまった、と思ったことがありました。きっと、おしゃべりがうるさくて、仕事もできないと。そうしたら、いつまでも静かなので、顔を上げてよくよく観察したら、参加者は70代くらいの上品なご夫婦ばかり。東京から名古屋までの間に、どの夫婦ともほとんど会話はありません。それでも、お弁当が配られると、阿吽の呼吸で、夫が開けた蓋を妻が受け取って袋に入れたり、富士山が見えれば、「見てごらん」「きれいね」とささやき合ったり。夫婦円満旅のコツは、まさに沈黙なんだなと、教えてもらった瞬間でした。ですから、夫婦の会話がないことをそんなに悲しむ必要もないと思います。

そもそも男性は沈黙することで生存の可能性を高めてきた歴史があるため、黙っているほうが脳の快感度が高い生き物。だから、沈黙が心地いい相手ほど離れたくないというのが男性の気持ちなのです。反対に、何万年も群れの中で子育てをしてきた女性は、共感し合えない人と共にいることに強いストレスを感じるので、女性脳のためにはおしゃべりは大切なことです。男と女、始終一緒にいるのには、本当に適さない組み合わせなんですね。

男の話も、案外長い?

実は時々、女性からこう質問されます。「男性上司の話が長く、止め処がない。止め方を教えてください」。女性の話は、共感が目的なので、共感すれば着地できます。だから、上司の体験談に共感してしまう女性が多いのですが、これが仇になります。男性の話は、うっかり共感したら、延々と長くなってしまうことが。男性脳が欲しいのは、共感ではなく、「勝利」や「成果」だからです。うっかり「わかります〜」と共感してしまうと、「いやいや、きみにわかっているわけないよ、僕のほうがすごいんだから」と感じて、どんどん話が長くなります。

男性の体験談には、「さしすせそ」を駆使すると効果的です。「さすがです」「知らなかった」「すごいわ」「世界一(展開例:こんなこと思いつくのは◯◯さんだけ)」「そうなんですね!」をうまく使うと、男性上司の話は確実に短くなりますよ。たとえ「大変だったんだよ」という愚痴でも、「それをやり遂げたのは、さすがですね。すごい」と受けます。男性の話には、愚痴のようでも、ちゃんと感心ポイントがあります。心を澄ませてちゃんと聞けば、演技なんかしなくても、これらのセリフが出てくるはず。夫の話が長いと感じたときも、ぜひ試してみてください。

◆著者:人工知能研究者、脳科学コメンテイター・黒川伊保子

人工知能研究者、脳科学コメンテイター・黒川伊保子
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1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、”世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)『思春期のトリセツ』(小学館)『60歳のトリセツ』(扶桑社)など多数。

黒川伊保子さんの最新著『夫婦の壁』

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