健康・医療

《目の不調や病気を早期発見!》世界中から患者の絶えない眼科医が解説する、カレンダーを使った方法など5つのセルフチェック法

人生100年時代を迎えていても、「目の寿命」ははるかに短く60〜70年ほど(Ph/photoAC)
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日本は世界最長寿の国となり、人生100年時代を迎えています。ところが「目の寿命」ははるかに短く60〜70年ほど。十分な準備をしておかないと人生の後半に目の病気や視力障害で生活に支障をきたしてしまうかもしれません。世界中から治療を求めて患者の絶えない眼科専門医・深作秀春さんが世界基準の目の守り方を記した『100年視力』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。【前後編の後編】→【前編】はコチラ

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目の不調、少しでも早く、適切な医療を!

深作眼科には世界中から患者さんが訪れます。病気が進行し、ほかの医療機関では治療を断られた人や、何らかの施術や治療を受けたものの、不適切で症状が悪化していたり、別のトラブルが併発したりしているケースも少なくありません。

そのような患者さんの目を診ると、「なぜここまで」と口惜しい思いにかられます。

とにかく視力をまもるためにできる限りのことをするのが常ですが、やはり初診の状態が悪ければ、成果に限界があるのです。

視力を失っていた患者さんの多くは、いくばくかの改善でも、とても喜んでくれますが、私は口惜しい。現代は多くの目の病気が治せる時代。もう少し早く診察できていたら……。

ですから私は何より「早期に適切な医療を受ける」大切さをお伝えしています。目の不調や病気を早期発見する5つのチェックポイントをご紹介しましょう。

1. カレンダーで「両眼視野チェック」

「見る」というのは目と脳の連携作業です。私たちの脳はとても優秀。ときに、目には見えていないのに、過去の学習や、片方の目だけでとらえた情報で、あたかも両眼で見えているように画像を組み立ててしまうことがあります。

カレンダーでできる「両眼視野チェック」 『100年視力』(サンマーク出版)より
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女性はアイメイクのときに片目をつぶって見る習慣がある人が多いので、片方の目の視力が極端に変わるなどした場合、比較的すぐ気がつきますが、男性の場合は、片目で見る機会などほとんどないのです。それで、片方が網膜剥離や緑内障で失明寸前の状態になっていても、左右の見え方の違いに気づかない人もいます。

やり方は簡単ですから、目のトラブルがなにもない人は1か月に1度程度、習慣的にやってみましょう。もし見えづらさを感じたときにも、まずこれをやってみて、その結果を、診察を受ける眼科で伝えてください。

このチェック法では「両眼ともしっかり見えているか」「適切な視野が保てているか」がわかります。

【1】カレンダーから30センチ程度の距離で、片目ずつ、カレンダーの中心の日付を見ます(これは眼科で視野検査を行う精密機械と同じ距離です)。そのまま、1日から31日まで数字を声に出して読みます。

【2】読めない数字の部分は視野欠損があります。

【3】最終日まで見たら、反対の目でもやってみます。両眼ともすべての日付が読め、見え方に差がなければ問題はありません。

※カレンダーがない場合は大きな紙にマジックで数字を書いたものを使いましょう。

2. 「見えづらい」の言語化リスト

普段、患者さんが訴える「見えづらい」という言葉には、広い範囲の意味が含まれると思って診察をしています。このリストで紹介するようなポイントを具体的に主治医に伝えていただけば、診察の助けになります。

「見えづらい」の言語化リスト 『100年視力』(サンマーク出版)より
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とはいえ、うまく伝えられなくても大丈夫。主治医に「うまく説明できない」と伝え、主治医から要点を尋ねてもらって、できる限り答えれば良いのです。

患者さんのお話だけで診断をすることはありません。目の中を見て、必要な検査結果を見て、医師は総合的に判断します。ですから、いつもとは違って「見えづらい」と感じたら、ためらわずに診察を受けましょう。自己診断がもっとも危険です。

たとえば、日差しや夜間の街灯、車のヘッドライト、テレビ画面などがまぶしいと感じることが増えたならば、白内障の初期症状かもしれません。

白内障は確かに年配の人に多い病気ですが、年齢だけで起こるわけではなく、水晶体の濁りが原因ですから、若い人にも起こり得る病気です。

◼️「見えづらい」の言語化リスト

【1】見えづらいのは両眼? それともどちらか一方の目?

【2】自分の感覚でよいので「どう見えづらいのか」言葉にする

【3】ものが二重に見える? ものがにじんで見える?

【4】光が放射線状に見える?

【5】暗い場所で見えにくくなった?

【6】淡い色が見えづらい

【7】 黒と濃紺、紫、濃緑の色の見分けがつかない

【8】全体的に地味な色に見える

【9】虫がチラチラ飛ぶように見える

【10】光が飛んでいるように見える(「光視症」の疑い)

【11】いつから見えづらいか

【12】1日中見えづらいか、特定の時間帯か、いつ気づいたか

【13】目にダメージを与える行為があったか?(スキー場で強い紫外線を浴びた/何かがぶつかった/海外へ旅行した)

3. こんな違和感に注意!

具体的に見えづらさなどがあるわけではないけれど、違和感があるとき、それを見て見ぬふりをしてはいけません。目がゴロゴロする。目やにが出て、すっきりしない。目が開かない。目の違和感にはいろいろな症状と表現があります。

こんな違和感に注意! 『100年視力』(サンマーク出版)より
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「ゴロゴロ」はドライアイ、「目やに」は結膜炎、「目が開かない」は眼瞼下垂の訴えとして多いと言えますが、原因の病気はこれらに限りません。

目の症状の背景には、異物混入など、思いも寄らない原因があることもあります。

「どうもすっきりしない」と目の違和感を訴える患者さんのまぶたを裏返すと、結膜の奥に、ソフトコンタクトレンズが折れて入っていたことがありました。これは摘出して治りましたが、コンタクトレンズは目を障害する異物。扱いには注意が必要です。目の痛みを訴えて受診した別の患者さんは、まぶたの裏に粒状の異物が付いていました。聞くとスクラブ入り洗顔料を使っていたそうです。この小粒子でも大変痛いものです。

目の違和感は、数日続くようなら、眼科で原因を調べてそれに応じた治療を受ける必要があります。市販の目薬を常用し、長く様子を見続けるのはやめておきましょう。

ちなみに、目薬は下まぶたのみをあっかんべーするようにして、下まぶたに1滴入れば十分です。

きちんとさせなかったのではと、何度もさす必要はありません。1滴で十分効能が出るようになっています。

◼️こんな違和感に注意!

【1】目がゴロゴロする

【2】目やにがでる

【3】目が開かない

【4】夕方になるといつも目が痛い

4. 複合画像で「視力チェック」

楽しく視力がチェックできる方法も1つ、ご紹介しておきましょう。

以下の画像を、できるだけ腕を遠くに伸ばして見ましょう。目からなるべく距離をとるのです。そのとき何が見えますか? また、画像を近づけると、何が見えますか?

「視力チェック」できる複合画像の一例 『100年視力』(サンマーク出版)より
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この画像は、細い線ではっきり描いた自転車と、濃淡でぼかして描いたオートバイを組み合わせています。総合的に言えば、焦点を合わせることに問題がなく、網膜が情報をこまかくとらえ、脳にも問題がなければ自転車が見えます。焦点や網膜、脳など何らかの異常があるとオートバイに見えてしまいます。

・目から離して「自転車」が見える
→遠くがよく見える

・目から離して「オートバイ」が見える
→近視で遠くが見えない可能性大

・目に近づけて「自転車」が見える
→近視の可能性大

・目から離して「自転車」が見えていたのに、近づけると「オートバイ」が見える
→老眼の可能性大

5. 視覚の中心!「網膜トラブルチェック」

さらに、見るはたらきの中心になる網膜の黄斑部に問題がないか、簡単にチェックする方法もあります。

30センチほど格子模様から離れ、片方の目で、格子模様「アムスラーチャート」の中心の黒点を見てみましょう。中心の黒点はしっかり見えますか? 中心を見たまま、目は動かさずに線の全体を見ます。

網膜トラブルチェックができる格子模様「アムスラーチャート」 『100年視力』(サンマーク出版)より
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線のゆがみや、部分的に暗いところがないか、左右の見え方に違いはないか、隅も鮮明か、チェックをします。線がゆがんでいたり、見えない場所があれば、図の中にその見え方の異常を鉛筆で記録してください。片方ずつ、両眼チェックしてください。

見慣れたものを見てチェックをしても、脳が画像を補ってしまうため、異常に気づきにくいのです。ご紹介する「問題のある見え方」に1つでも当てはまったら、すぐに眼科を受診してください。ほかにも左右差など、気がかりな点があった場合も受診しましょう。

◆教えてくれたのは:眼科専門医・深作秀春さん

深作秀春さん
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神奈川県横浜市生まれ。眼科専門医、深作眼科院長。米・独で研鑽を積み、白内障や緑内障などの近代的手術法を次々と開発。米国眼科学会理事を務め、眼科殿堂選考委員、学術賞審査委員などを歴任。それまで不可能とされた眼病の新しい治療法の開発や、多くの革新的眼科手術法の開発により、国際眼科学会最高賞を20回受賞。2017年には、世界最高の眼科外科医に贈られる「クリチンガー・アワード」の、欧米以外の医師では初めての受賞者となった。現在は世界最高のスーパードクターとして25万件の手術実績を有し、日本中だけでなく世界中から患者が治療を求めて来院する。他方でプロ芸術家でもあり、多摩美術大学大学院を修了し、日本美術家連合会員という画家としての一面もある。

『100年視力』(サンマーク出版)

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