自身もダイエットに悩み、続けられるダイエットを考案した結果、2か月で6kgの減量に成功した医師の齋藤真理子さん。『「内臓脂肪がなかなか減らない!という人でも 勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』(アスコム)を上梓した齋藤さんが、ダイエットの強い味方だと話すMCTオイルについて、詳しく教えてもらった。
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内臓脂肪をエネルギーに変える機能を呼び覚ますMCTオイル
かつて肉食が中心だった頃の人間は「脂質代謝」で体のエネルギーを生み出していた。しかし、主食を炭水化物中心とする現代人の体は「糖質代謝」がメインで、内臓脂肪など体についた脂肪が代謝されにくい状態になっている。
その内臓脂肪をエネルギーに変える機能を呼び覚まし、内臓脂肪が増えるリスクを減らすカギとなるのがMCTオイルだ。
脂肪から生み出されるエネルギーはケトン体といい、ケトン体はエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を生み出し、基礎代謝をあげたり、免疫機能を高めたりするミトコンドリアを活性化する。一方でミトコンドリアは、ストレスや食品添加物によって体内に発生する活性酸素によって日々ダメージを受け、損傷が生じたミトコンドリアは体外へ排出され、機能が低下してしまう。
「ケトン体は、ミトコンドリアの強壮剤といってもいい存在で、ケトン体が増えると、ミトコンドリアが復活し、ATPエネルギーを大量に作り始めるのです」(齋藤さん・以下同)
MCTオイルとは中鎖脂肪酸のこと
ココナッツオイルなどに含まれる「中鎖脂肪酸」を純度100%にしたのが、MCTオイル。脂肪燃焼、免疫力アップ、抗菌作用、認知症やアレルギー症状の改善、美肌・美髪といった健康や美容にうれしい効果が期待できる。
「MCTオイルが食卓に並んだのは、まだ歴史が浅いですが、50年以上、医療や介護、スポーツなどの現場では使われてきたものなのです」
ケトン体を作り出し、体脂肪が燃える体に
MCTオイルは分子構造が小さく体内で素早く消化され、ケトン体を作りやすくすることができる。さらに、脂質代謝の機能を呼び覚ますため、体内の脂肪でケトン体を作り出すようになるという。
MCTオイルとサラダ油を2週間、1日あたり小さじ1杯を毎日摂取し、体内のケトン体がどれだけ増えたのかを調べた研究では、サラダ油を摂取した人はケトン体濃度51.2μmol/立方リットルから12週後に63μmol/立方リットルだったのに対し、MCTオイルを摂取した人は35.6μmol/立方リットルからのスタートで12週後に110.6μmol/立方リットルまで増えたという結果が出ている。
「ケトン体によってミトコンドリアが活性化することによって、基礎代謝が上がっていくのです。脂肪が減って基礎代謝があがる。このダブルの効果によって、体は勝手に脂肪が燃える体へと変身していきます」
MCTオイルの取り入れ方
齋藤さんによると、MCTオイルは1日小さじ1/2程度からはじめて、1週間ずつ体調をみながら小さじ1/2を2回、3回と増やしていくのが目安の量だ。内臓脂肪を燃やす効果を高める場合、小さじ1/2量を1日3回摂れるようになるといいという。
「MCTオイルは腸内環境にもダイレクトに働きかけます。そのため、BMIが高めで、今まで糖質を多く摂ってきたかたや脂質のエネルギー代謝がしにくい体質のかたは、お腹が少々ゆるくなることもあるので要注意です」
また、たくさんとればそれだけ効果が出るというわけではない。脂質なので1gあたり9kcalあり、大量に摂れば、それだけ摂取カロリーも増えてしまう。
「たとえ少量でも、摂ったあと、体がポカポカしてきて、代謝が上がっているのを実感できると思います」
MCTオイルはかけるだけでOK
MCTオイルの取り入れ方で一番簡単なのは、かける方法。MCTオイルは無味無臭なので、どんな料理にも合う。
「オイルというと、スープやサラダ、パスタという洋風なものに合うというイメージがあるかもしれませんが、お味噌汁やご飯などにも非常によく合います。コーヒーや紅茶などのドリンク、ヨーグルトや果物などのデザートにかけても違和感なく摂れるはずです」
ただし、うどん、そばなどの麺類はMCTオイルがつゆやスープに溶け出してしまうため、おすすめできない。その場合は料理に直接かけるのではなく、麺をしばらくすすったのちに、れんげやスプーンにMCTオイルを入れて飲むようにしよう。
「オイルをかけると脂っこくてしつこくなるのではないかと思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、非常にさっぱりとしていてキレのいいコクなので、老若男女楽しめると思います」
MCTオイルを摂る時間は朝・昼がベスト
慣れたら毎食MCTオイルを摂取してほしいという齋藤さん。特に、エネルギーを多く消費する朝と昼には忘れずに摂ってほしいという。
「MCTオイルを摂取することで、脂肪燃焼回路で生まれたエネルギーが有効活用できるので、パフォーマンスもぐっと上がることでしょう」
また、MCTオイル効果が期待できるのは、体内で消化されてしまうまでの3〜10時間までといわれているため、こまめに摂ったほうが効果が長続きするという。
「やり方は、1日3回の食事に『間食』をはさみ、MCTオイルをかけるだけ。例えばコーヒーや豆乳といったドリンクを飲むときや、小腹が空いたときのナッツ、ヨーグルトなど低糖質のおやつにもこまめにちょいちょいかけちゃいましょう」
また、日中にMCTオイルを摂り忘れてしまったときは、空腹でなければ夜に摂っても大丈夫。ただし、寝る直前は胃もたれの原因になったり、オイルのエネルギーを消化しきれず、体脂肪に置き換わってしまう可能性もある。そこで、齋藤さんは「できれば睡眠1〜3時間前までに摂る」ことを守ってほしいという。
「MCTオイルは摂取してから3時間が効果のピーク。入眠するなら、そのタイミングを心がければケトン体が脂肪燃焼の働きを発揮でき、体脂肪の減少にも効果を発揮します。さらに心身の疲労感をやわらげぐっすり眠れて目覚めがよくなった、という声も多く寄せられています」
MCTオイルを使うときの注意点
MCTオイルは発煙点が低いため、炒めたりする加熱調理に使うと煙が出てしまう。火にかけるような調理法は避け、温かい飲み物や料理に追加するかたちで取り入れよう。
「ただし、炊飯やケーキなどの生地に練り込んで使用することはできます」
また、カップラーメンやコーヒーなど、容器やふたがポリスチレン製のものにかけると、ひびが入ったり、割れたりすることがあるので、注意しよう。
◆教えてくれたのは:医師・齋藤真理子さん
さいとう・まりこ。医療法人社団山本メディカルセンター理事長。医学博士、日本整形外科学科専門医。分子栄養学認定医。昭和大学医学部大学院卒業。2010年に山本メディカルセンターに入職し、皮膚科・形成外科を立ち上げる。その後、2016年に山本メディカルセンター2代目院長に就任する。テレビに多数出演するほか、分子栄養学の観点からカフェレストランのメニューの考案も行う。https://www.tansanmagic-jp.com/adviser/marikosaito.html