人間ドックを受けた1か月後に喉の異変を感じ、6か月後にステージ3の頸部食道がんだと判明した女優の秋野暢子さん(67歳)。明るく快活な言葉から、ポジティブに治療に専念できた理由が伝わってきた。
副作用は少なかった。健康的な体づくりの賜物?
抗がん剤と放射線照射を合わせて行う「化学放射線療法」を選択した秋野さんの治療は、2022年7月12日から始まった。病室に持ち込んだものは、入院用具らしからぬものばかりだった。
「入院といっても手術はしないので、寝たきりになるわけではありません。空き時間に動けるように、ストレッチポールやヨガマットなどを持ち込みました。あとは空気清浄機や、スムージーミキサーなど。足りないものはアマゾンで取り寄せることもありました。ちゃんと病室まで届くんですよ(笑い)」
入院中に取り組んだウォーキング
放射線は週5日、6週間かけて30回照射する。抗がん剤は点滴を月曜~金曜まで24時間入れて、3~4週間あける。これを4クール続けた。
「このサイクルのため、何度か入退院をくりかえすことになります。当時はコロナ禍であまり移動をしたくなかったので、入院していない期間は近所のホテルに泊まっていました。退院している間は、よくウォーキングもしていました」
積極的に運動を取り入れていたのには理由がある。
「私の場合はお薬がよく効いて、副作用もあまりありませんでした。先生も驚くほど、スケジュール通りに治療が行えたんです。それは今まで私が健康に気を配って、運動をして体力つけてきたことが功を奏したのではないか。だから運動は持続してくださいと先生に言われましたので、意識して体を動かしたんです」
呼吸法とお笑いでメンタルを安定
手術で病巣を取り除くのではなく、声帯を残すために化学放射線療法を選んだ秋野さんは、医師に「5年生存率は約30%」だと宣告された。その際、秋野さんはその30%になるはずだと前向きにとらえていた。そんなポジティブさを維持できた要因を振り返る。
「私は呼吸筋のトレーナーなので、毎日のように呼吸筋ストレッチをしていました。呼吸筋研究の第一人者である本間生夫先生に呼吸筋のトレーニング方法を学んだのですが、退院したことを先生に報告したら、“だから、あんまり不安にならなかったんですよ”と言われて、やっぱりそうかと思いました。
もう1つ、バラエティーやお笑い番組をよく見ていたのもよかったんだと思います。泣いて悲しんでいても治るわけではないのですから、だったら楽しく笑っていたほうがいいじゃないですか」
固形物が喉を通らないことも
そうとはいえ、入院中に困難もあった。
「放射線を喉に当てるのですが、それは表面から食道にあるがんにピンポイントで照射しているんですね。初めは痛くも熱くもなかったのですが、数日かけて何度か当てていると、皮膚の表面が黒っぽくなって、喉に剣山が刺さっているような痛みがありました。
その間は固形物が喉を通らなかったので、アイスクリームやスムージーを飲んでやりすごしました。そのうちにペロリと黒い皮膚がめくれて、肌がきれいになりました。まるでピーリングみたい(笑い)」