条件を満たした株式を持っていることで、定期的に株主優待券や、その企業が取り扱う商品の詰め合わせ、ギフト券などがもらえる「株主優待」。株主優待でもらったものだけで生活のほとんどを賄っている人も話題になるなど、株主優待に興味を持っている人も多いのではないだろうか。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、株主優待の賢い選び方と優待のもらい方について基本から詳しく教えてもらった。
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新NISAでもおすすめな株主優待投資
2024年から始まった新NISAでは、年間最大240万円の「成長投資枠」で個別株を買うことができるため、株主優待狙いで長期投資をするならNISA口座での保有がおすすめです。非課税口座ですので、譲渡益だけではなく配当金、分配金が非課税になる点も長期保有に向いていると言えます。
年間に投資できる金額が決まっているNISAは短期間での売買には不向きで、基本的に中長期で株式の保有が必要な株主優待とも相性がよいです。実際に新NISAを踏まえて、長期に株を保有する株主に対して、プラスアルファの優待を行う会社も増えています。
優待は使いやすさで選ぶのがおすすめ
株主優待を選ぶときは、優待品を金額換算した場合の利回りのよさよりも、使いやすさで選ぶのがおすすめです。
例えばイオンモールの株主優待ではイオングループ各店で利用できる「イオンギフトカード」がもらえますが、イオングループのお店が近くにないと使いづらく、使い切る前に使用期限切れとなってしまうことも考えられます。
ギフト券系の株主優待では、優待としてもらったギフト券を企業に返送することで、代わりにお米などの別の優待品を受け取れる場合もあるほか、金券ショップに売って現金化してしまうという方法もありますが、いずれにしてもひと手間かかります。どんな優待品がほしいのかを考えたうえで、活用できる株主優待を選ぶようにしましょう。
優待品だけで投資先を選ばない
一方で、株主優待の品だけで投資先を決めるのもおすすめできません。株は基本的に値上がり益を出してこその投資のため、いくら株主優待が魅力的でも、優待以上に株価が値下がりすれば、その分資産は目減りすることになります。また、業績悪化で株主優待を取りやめてしまったり、優待の内容が悪くなったりすることも考えられます。
自社商品系の優待で品物が微妙だと感じるときは注意
クオカードなどが優待品となっていることもありますが、株主優待は本来、その企業がどんなことをしているかを知ってもらうためのものでもあります。そのため、その企業が販売している商品を優待品としていることも多くあります。
自社商品を優待品にしている場合、金額換算した時の利回りは高くなりやすく、お得に感じやすいですが、商品自体に魅力を感じられないときは、フリマアプリなどで売るのも一案です。1つの商品が魅力的ではなくても、それだけで企業の業績が下がる要因にはなりませんが、応援する気持ちがなくなるような優待品なら、株の利益が出ているうちに売るのも一案でしょう。
優待をもらうなら権利付き最終日に株を持っておくこと
株主優待を実施している企業の株式を購入すれば、必ず株主優待をもらえるというわけではない点に注意が必要です。
株主優待をもらうためには、「権利確定日」に株主名簿に記載される必要があり、権利確定日に株主名簿に記載されるには、「権利付き最終日」と呼ばれる日に株式を保有している必要があります。仮に権利付き最終日の前日までずっと株式を保有していたとしても、権利付き最終日に株式を保有していなければ、優待はもらうことができません。
また、権利確定日に株式を保有していればいいと誤解している人もいますが、優待がもらえるかどうかが決まるのは、権利確定日の3営業日前である「権利付き最終日」です。混同しやすい名称のため、優待狙いの場合は注意しましょう。
優待をもらえる「条件」もチェック
優待をもらうためには、「権利付き最終日」に株式を保有していることに加え、企業ごとに異なる条件を満たしている必要があります。
日本市場の株式売買では単位株と言われる通常100株ごとの取引であり、100株以上保有していれば株主優待をもらえる企業が多いですが、株価が低い企業などでは株主優待をもらえる最小株数を200株以上にしていたり、半年以上株式を保有していること(株式を保有した状態で2回以上権利付き最終日を迎えていること)などを条件にしていたりすることがあります。
保有株数によって優待品が異なる場合もあるので、欲しい優待品がもらえる条件を事前に確認しておきましょう。
株を安く買うなら「権利落ち日」がカギ
権利付き最終日の翌日である「権利落ち日」に株式を購入しても、その時期の優待はもらえませんが、権利落ち日は株価が下落する傾向にあるため、権利落ち日に安く株を買い、次の優待の権利付き最終日まで保有しておくことで、次回以降の優待を狙うという手もあります。
また、安く買って高いときに売るのが株取引で利益を得る基本原則のため、既に保有している株が権利付き最終日前に大幅に値上がりしている場合、優待はあきらめて売却してしまうのもよい判断と言えるでしょう。
◆教えてくれたのは:節約アドバイザー・丸山晴美さん
節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー。22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。https://www.maruyama-harumi.com/
構成/新藤まつり