いよいよ「パリオリンピック」の開幕が近づいてきた。32競技329種目が実施される今大会は7月26日に開会式が行われ、最終日の8月11日まで熱戦が続く(パリパラリンピックは8月28日から9月8日まで)。メダル獲得の期待がかかる日本選手団同様、競技のテレビ中継を盛り上げるのが、各局が用意する「テーマソング」だ。ライターの田中稲氏が、歴代オリンピックソングを振り返る。
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7月26日からいよいよパリ五輪が始まる。実は普段あまりスポーツに興味がない私だが、いざ始まったら夢中
世界の超人の身体能力にも驚かされる。1984年のロサンゼルス五輪でカール・ルイスが、100m走で9秒台を出した時の驚きは忘れない。私の50m走の最速記録(10秒)を、彼は倍の距離の100m走で抜いてしまったのだ。本当にビックリしたものである。
今回も、いろんな記録にビックリすることだろう。さらにそこに、拍手や声援、テーマソング、興奮のアナウンスなどが乗り、心やら涙腺やらをドカドカ刺激してくることだろう——。
ということで、今回はオリンピックソングを取り上げたい。みなさんにとってオリンピックのテーマソングナンバー1はどの曲ですか?
名曲が名実況を生むという奇跡
ちなみに、私の知り合い5人という非常に少ない人数でアンケートを取ったところ、圧倒的、全員一致でゆずの『栄光の架橋』であった。
これは2004年のアテネ五輪のNHK公式テーマソング。確かに、私も「もうすぐオリンピックか。♪いく〜つも〜の〜」という具合に、自然と『栄光の架橋』を歌ってしまっている人を数度目撃している。もはや「オリンピック」という言葉と「♪いく〜つも〜の〜」というあのサビの歌い出しは、多くの人の脳内でセットと化していると思われる。
ここまで伝説化した要因は、歌声や楽曲が、オリンピックにバシッとハマっていた。それに加え、体操競技の男子団体で日本が28年ぶりの金メダルを獲得した瞬間の、実況が素晴らしかったことにある。
冨田洋之さんが、鉄棒の演技「コールマン」を決め、フィニッシュに入った際、NHKの刈屋富士雄アナウンサーがこう叫んだのだ。
「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架橋だ!」
うまいっ(涙)。瞬時にこんな神言葉が飛び出すなんて! まさに、名曲が名実況を生むという奇跡。「栄光」という言葉はオリンピックの場合、勝利が決まった時しか使えないので、あまり実況では言えないらしい。金メダル確定ほやほやの瞬間にそれが出せる職人技よ……!
あれから20年経ったが、今でもスポーツ実況屈指の名言として語り継がれている。